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2-11『邂逅』

 この爆発の威力的にはエクスプロージョンではなく、エクスプロード級の物ではあるが、こっちに爆風が軽く届くほどには近くで爆発したということだ。

 冒険者でも居るのだろうか? いや、居てもおかしくは無いか。ここは城下町の近くだからな。


「爆発?」


「冒険者でも居るのでしょうか? 少し見に行きますか?」


「そうだね。確認しに行こうか。魔王領に冒険者が居るとしたら見過ごせないしね」


 俺も見に行くことには賛成ではあるが、凄まじく嫌な予感がする。

 こういう時の嫌な予感というものは当たるものなので、正直言うと行きたくはない。マナとヴァルモダを引き連れてこれはスルーして帰りたいものだが、そういうわけにもいかないのだろう。


 ため息をつきたくなるが、ぐっとこらえてマナとヴァルモダの後に続いて漠発源へと向かう。

 そして様子を伺うために茂みに隠れるが、そこで見えた光景に俺は思わず頭を抱えてしまった。


「どうですかボクの芸術は!」


「うーん、なんて言ったら良いんですかね」


「メル、君は爆発にとらわれすぎだと思う」


「な、なんで引き気味なんですかお二人とも!」


 勇者ユイとそのメンバーであるルリハ。それと俺がまだ見たことない緑色の少女の三人組だった。

 つまり、この爆発を引き起こしたのは勇者パーティーなのだ。


 どうしてこうなった。

 俺はまだ勇者パーティーとマナを引き合わせるつもりはなく、その前に俺が壁となって立ちふさがるというプランだったのに、そのプランが一気に崩壊した。


 状況から考えてあの緑色の少女の実力テストをしに来たということだろう。俺をテストしたあのEランクダンジョンは崩壊してしまったし、ほかの場所でテストをする必要があるというのは理解できるが、なんでよりにもよってここなんだよ。


「冒険者のパーティーのようですね。どうしましょうか」


 どうやらヴァルモダは相手が勇者パーティーだということは気づいていないらしい。

 だとしたらまだ冒険者を追い返すだけで済む可能性がある。さすがに勇者パーティーだったら見逃せないからな。


「いや、あの金髪の冒険者が持っている剣、あれは神剣『リリウム』」


「ま、まさか。あの冒険者はっ!」


「そう、間違いなく勇者パーティー」


「なら、今ここで倒さなければいけませんね」


 はい終了。俺の望みはここで儚く散りましたとさ。


 そう言えばマナは二千年前にマナは先代勇者と戦ったって言っていたな。そりゃー神剣のことも知っているよな。

 面倒な事態になったな。


「そうだ、エシュド。魔王軍最初の任務を与える。勇者パーティーを倒す案は無い?」


 あ、ここで俺に託してくるのか。

 ならまだ活路はある。俺はまだ魔王軍に入ったばかりだから作戦が失敗してしまったとしても許される可能性は高い。


 だからここで俺が戦い、そしてバレない程度にわざと勇者パーティーを逃がせばここでマナとユイたちの激突を避けることはできる。

 うん、我ながら完璧な作戦だ。


「魔王様、いい案があります」


「おぉ、じゃあ言ってみて」


「色仕掛け、とかはどうでしょうか?」


 俺の脳もダメみたいだ。


 理性によって何とか今考えていた案を伝えようと抑えていたが、それでも理性が本能に勝つことはできず、欲望のままにそんな言葉を口にしてしまっていた。

 ただ、一度はいてしまった言葉を飲み込むことはできない。このまま突き進むしかないのだ。


 これは決して俺の意思ではない。

 仕方がないことなのだ。


「色仕掛けか……うーん、確かにエシュドなら行けるかもしれないけど。顔は整っているし、結構人間に近い見た目をしているから、その角を隠す術さえあればなんとかなる、かも?」


 マナがかなり真剣に考えだしてしまった。

 ヴァルモダも顔は悪くないんだけど、彼は純魔族っていう見た目をしているから、どう繕っても人間には見えなさそうなんだよな。


 ただ、そうではないんだよ。俺が言いたいのはそうではないんだよ。

 俺が自分で色仕掛けをするところを想像したら吐き気を催すから絶対にやりたくない。

 つまり、俺が言いたいのは――


「いえ、魔王様が色仕掛けをするんです」


「なるほど、ね。私自ら色仕掛けか………………君、私をバカにしてない? やつは女だぞ?」


「だからこそです!」


「何が!?」


 ずいっと身を乗り出す俺に若干引くマナ。でも俺は止めるつもりはない。


「相手が女性だからこそ、こちらも女性をぶつける。常識ですよ!」


「どこの世界の常識よ! 世紀末でも女性には男性をぶつけるわよ!」


「いえ、魔王様ならいけます! 絶対に俺が成功に導いて見せます!」


「怖い、お前のその意味わからん謎な熱意が怖いんだけど!?」


 まるでやばい奴でも見るかのような目を向けてくるマナ。そして、ついでにヴァルモダも『こいつ頭大丈夫か?』とでも言いたげな目を向けてきた。

 お前にそんな目を向けられる筋合いはないぞと声を大にして言いたい。


「エシュド、そんなに色仕掛けがしたいなら、君が行ってきてよ」


「魔王様、ここは俺が戦います。魔王様の出る幕ではありません」


「あ、自分が色仕掛けすることになったら即座に作戦を変更した」


 だって俺は色仕掛けなんかしたくないからな。俺が自分で色仕掛けをすることになるくらいだったら戦った方がいい。

 俺はただ、マナがユイに色仕掛けを仕掛けている様子を後ろから眺めていたかっただけだからな。それが出来ないんなら俺が戦うのが最適解だ。


「はぁ……」


 思わずため息をついてしまう。

 本来はこんなところで戦うつもりはなかったんだけど、仕方がない。適度にボコして逃がすとしよう。


 まぁ、ユイたちとは近いうちに一回戦うつもりだったから、それが早まったというだけの話だ。特に問題はない。


「勇者パーティーがこんなところで何をやってるんだ」

カルマはヴァルモダやメルバードのことを言えないくらいには狂人です。

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