2-1『魔王領の侵入者』
2章です
ユイたちのやり取りを最後まで見ることが出来なくて名残惜しかったものの、やっぱり一人で森に帰ってきたのは理由がある。
それは自由に行動しやすいからだ。
森には人目がないから魔王領へ足を運んでもバレにくい。最高に悪事を働きやすい環境なんですよ〜、へっへっへっ。
そんなわけで今俺は魔王領へやってきています。
とはいえ、適当に歩いている訳ではなく、ちゃんと目的地に向かって行っている。
以前、マナの姿を見た時に魔力の質も覚えることが出来たからそれを元に辿っているという訳だ。
俺の眼は相手の魔力を視認することが出来、集中したらどれだけ離れていようと壁の向こう側だろうと、その魔力が透けて見えるようになる。
俺が直ぐに捕まえることが出来ると言うのはこういう事だ。
俺の眼に見つかったやつは逃げることは出来ない。
「グギャ?」
「ケキャキャ」
「フギャラ」
やはり魔王領と言うだけあって魔物はいっぱい居る。
人間とは少し住環境が違うみたいだけど、普通に生活しているような光景だ。まぁ、向こうもいつも生きるために俺たち人間を襲ってきているんだもんな。
生きている以上、生活があるのは不思議なことでは無い。
さて『どうしてこんなに魔王領を堂々と歩いているのに襲われないんだ、てめぇ』と思う人も居るかもしれない。
答えは単純、今俺は魔族に偽装しているからだ。
黒いタキシードに内赤・外黒のマントを羽織り、頭には角のカチューシャをつけている。
魔力の質は魔道具で誤魔化しているため、これで俺も魔物から見たら魔族っていうわけだ。
ちなみにこの姿の時の名前もちゃんとある、エシュド。修行のために旅をしている最中、魔王様の事を聞いて魔王軍に志願しに来たという設定だ。
実力に関してはSランクでマナより少し弱い程度に留めておく。魔王軍は力こそ正義のような環境だから実力テストをされた時にはこの力を見せつけて魔王軍入りを目指すという訳だ。
完璧。我ながら完璧過ぎる変装と作戦。
魔王軍に入るのは難しいだろうが、俺はその難題を難なくクリアしてみせる!
☆☆☆☆☆
しばらく歩いただろうか。かなり人気も少なくなって木々が枯れているおどろおどろしい光景になってきた。
ここら辺に溢れているのは瘴気だな。俺には影響が無いけど、瘴気が濃いということは感じるため、Sランク相当のダンジョンがここら辺に乱立しているんだろう。
そして遠くに見える城、あれを見て思わず「マジか〜」という声をもらしてしまう。
多分あれは魔王城だろう。今の今まで見つかってなかったものだが、今俺はあっさりとそれを見つけてしまった。
いや、マナを追っていたら見つけるかもしれないなとは思ってたけど、今まで誰も見つけられなかったことを考えたらなにか特殊な方法で隠されているのかと思っていたが、普通に鎮座していた。
しかも周りに何も無く凄まじく目立つような場所にあったんだけど。
そしてそんな魔王城の庭に、
「ふんふふんふふーん」
「あ」
「大きくなれよ〜ベル」
マナが居た。
魔王城で威厳タップリに玉座に座っているのかと思ってたんだけど、なんか鼻歌を歌いながら黒い薔薇の様な花に水をあげていた。しかもなんか名前をつけてる。
なんか凄く機嫌が良さそうで微笑ましい光景なんだけどさ、あれが人間を侵略する魔の王の姿かね。
心做しか背中に生えている大きな羽もパタパタと楽しげに動いている。
あれ、一応人間に特殊危険モンスターとして指名手配されている悪の親玉的な立ち位置なんだよな。
まぁ、あそこに居るなら魔王城内を探す手間が省けた。
「すみません」
「うっひゃー!」
「へ?」
ドガーン!!
声をかけた途端、マナは背後から声をかけられてびっくりしたのか魔弾を飛ばしてきた。
それに直撃してしまった俺は背後にある枯れ木にまでぶっ飛ばされ、そのまま地面に座り込む。
痛いなぁ……さすが魔王と言ったところか。
前に捕縛した時はマナの攻撃を受けずに捕縛したから攻撃は食らったこと無かったんだよな。
「びっ、びっくりした……気配を殺して背後に回り込んで何するつもりよ!」
「いえ、何もするつもりは無いですが」
「そ、そもそもなんでここに居るのよ! ここは普通結界で守られているから私と幹部たちしか入れないはずなんだけど!?」
なるほど、ようやく理解した。
今まで誰も見つけられなかったのは結界で守られていたせいだったのか。
でも、俺は眼を使ってマナの姿を常に捉え、迷うことなく強引に結界内部へ侵入したのか。
それなら突然俺が背後に現れたらびっくりするのは当然と言える。
「すみません。危害を加えるつもりは無かったんですが」
「いやいや、それで結界を突破出来たら大問題だよ!?」
「いやぁ……気づいた時にはここに居たんで、分かりません」
「えぇぇ」
俺の言葉に顔を青くするマナ。
まぁ、結界に不良があるとかになったら一大事件だからな。
ごめん、結界があるなんて知らなかったんだ。
理由はとりあえず言えないため、心の中で謝っておく。
「はぁ……結界については後で見ておくよ。それで、私になんの用なのさ」
「はい! マナ魔王様!」
「お、おう……」
立ち上がってグイッと身を乗り出す俺の勢いに圧されるマナだが、気にせずに続ける。
「俺を魔王軍に入れてください!」




