4-69『一件落着』
こうしてハイド・バッカス、ガラド・ダルドラーン、テライ・ベストノイの三体は無事に討伐され、戦いの幕が閉じられた。
だが、この戦いによる被害はとても大きく、街は半壊。一つの街に三体もの魔人が同時に出没し、Sランク冒険者が多数死亡するという世界的に衝撃的な事件となった。
魔人が出没したらSランク冒険者は簡単に殺されてしまうということを改めて世界中の人々は思い知らされた。
ただ、幸いにも、三体もの魔人が出没した割には被害をここまでに抑えることが出来た。
実際に戦いを見ていなかった人々は、ゼルドガル・バッドレイが居たからだと考える人も多い。それほどにゼルドガルの管轄の人々にとってはゼルドガルという存在が大きいのだ。
だが、これは全員が死力を尽くして戦った結果だ。誰か一人でも欠けていたらこの結果にはならなかっただろう。
街の被害はこの程度に抑えることが出来た。
でも、街にとってはこれ以上ない位に大きな被害というものが存在していた。
この街の冒険者はSランクも多く、我が強い冒険者というものがとても多い。それらを全てまとめ上げていたオーズ・ウケイランドが瀕死の状態だということだ。
ゼルドガルの手によってすぐに診療所へ運び込まれたらしいが、診療所に着いたとたんにオーズは気を失ってしまったらしい。
それから一夜が経過した今も眠り続けている。
そして今俺は診療所にルリハのお見舞いに来ていた。
「ごめん、ハルト。買い物に着き合わせた挙句、こんな大変な事件に巻き込んじゃって」
「ん? いや、気にしてない。元々お前ら勇者パーティーは巻き込まれ体質だからな。どこかへ行くってなったら間違いなく何かが起こるだろうなと覚悟していた」
「お前らって……あなたも勇者パーティーの一員じゃないの」
俺の入院は見送った。
魔力回路にちょっとダメージが残ってしまったが、この程度なら自然治癒で治るし、他の怪我も『治癒』で何とかなるレベルだったから、俺が大けがをしていると、ここに無理やり連れてきたルリハがいらぬ責任を感じてしまいそうだと思ったから、入院はしない方法を選んだ。
ルリハもそこまで大きな怪我はしていなかったが、あれほどの攻撃の嵐の中に居たのだから、一応検査入院といった感じだ。
だから、俺とルリハはもうしばらく王都に帰ることが出来ない予定だ。
それに、ルリハが回復したとしてももうしばらく滞在する予定だ。なにせ、攻撃をもろに受けてしまったハクのことが心配だからだ。
医師の話によると、奇跡的に致命傷は避けていたらしく、治癒魔法である程度は処置が可能なレベルの傷らしいが、それでも心配なものは心配である。
「私、杖を買うのはすぐに済んで、時間が余ったから家でハクと遊んでいたのよ。そしたらものすごい音が聞こえて、二人で様子を見に行ったら、魔人が居たの。こうなるんだったら、ハクを連れて行くんじゃなかった」
「まぁ、確かにそうなんだけど、これに関しては全て結果論じゃないか?」
「結果論?」
「あぁ、そうだ。確かに結果だけ見れば、ルリハはハクちゃんをあの場に連れてこなければハクちゃんはあの怪我を負わなくて済んだのかもしれない。だけど、そんなこと見てみないことには分からないものだから。ルリハのその行動は完全に間違いだとは断言できないんだ」
「……」
まぁ、これに関しては気持ちの整理をつけるというのは難しいだろうな。俺が何を言っても、ルリハは責任を感じてしまう子だから、ハクを連れて行かなければと思い続けてしまうだろう。
でも、俺はルリハがこの後悔から立ち上がることが出来る人だと信じている。
だから、今は見守っておこう。
「ハルト、私はもっと強くなるよ。もっと強くなって、大切な人が絶対に傷つかないように、そしてどんどん強くなっていくユイの隣を歩いていけるように、もっともっと強くなってみせるよ。だから、ハルト、私の活躍も見ていなさい」
ほら、やっぱり明るい笑顔を見せることが出来るようになった。
今回の戦いを反省し、ルリハはこれから宣言通りにもっともっと強くなっていけるだろう。今回手に入れた切り札だって、まだ発現したばかりなんだから、成長の余地はいくらでも存在している。
ルリハはただ勇者を支えるだけの存在じゃない。勇者の隣に立って一緒に戦うことが出来る存在になる。
これからのルリハの成長が楽しみだ。
そして、俺ももっと成長しなければいけない。
どういうことか、最近は魔人が俺たちの周りに出没しすぎだ。
となると、またいつ魔人と遭遇してしまうか分からない。その時に、毎回前回や今回の様にボロボロになって戦っていたら身が持たない。だから、もっと俺も強くならなければ。
じゃないと、守りたいものもまた失ってしまうことになる。
俺はもう失うのはこりごりだから。
「ルリハ、一緒に強くなっていこう。ユイの成長速度に負けないくらいに、魔人位、片手間でひねりつぶすことが出来るほどに!」
「ははは、それは大変そうね……でも、私も気持ちはそれくらいのつもりよ」
「そのためには魔力回路をしっかりと回復させろよ」
「う、分かったわ」
やっぱりと言うか、今回の戦いで魔力回路がまた傷ついてしまっていたらしい。
幸いにも致命的なほどでは無かったらしいが、もともと状態が悪かったのが更に悪化してしまったような状態だから、今度こそ絶対安静で魔法は絶対に使ってはいけないということだ。
確かに切り札を使えばルリハは魔力を消費せずに火属性魔法を使うことが出来るようになるが、切り札を使用するときに魔力回路に大きな負荷がかかってしまうから、切り札も絶対に使うなって医師に言われてしまった。
当然のことだ。
これ以上ルリハが無茶をしないことを切に願う。




