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4-64『ハイド・バッカス2』

 俺は冒険者だった。

 男女二人ずつ、合計四人でのパーティーを組んでいた。


 あの頃の俺たちは一気にパーティーとして名を上げてちょっと調子に乗っていた部分もある。

 だって、冒険者学園にも通わずEランクで始めた俺たちが半年でBランクにまで上り詰めたのだ。

 ちょっとは調子に乗っても許してほしいというものだ。


 ここまで来るには本当に大変な道のりだったけど、充実した毎日だった。仲間と戦って、ダンジョン探索をして、俺の人生において、これほど頑張って充実していた日々というのは後にも先にも無いだろうというくらいだった。

 俺はこのパーティーが大好きだった。


 信頼できる仲間、心強くサポートしてくれる。

 みんなが一人のために、一人がみんなのためにを実行できる素晴らしいパーティーだと思ってた。このパーティーならどこまででも行ける気がする、そう思うほどだった。


「ハイド君、そろそろ集合時間だよ?」


「ん? あぁ、今行くよ、ユナ」


 いい感じの木陰で昼寝をしていた俺はユナの手を取り、立ち上がる。

 この子は俺のパーティーメンバーのユナ。俺の幼馴染であり、今は一緒に行動している間に俺たちは恋仲となっていた。だから、俺のことをよく世話焼いてくれて、集合時間前にはこうして呼びに来てくれる。

 俺がいつもこういう場所で昼寝をしているというのを長年の経験で彼女は知っているのだ。


「ハイド君はいつも通りだね。私なんて初めてBランクダンジョンに行くから緊張してあまり眠れなかったくらいなのに」


「そうか? 俺はむしろワクワクしてるけどな。これから俺たちのパーティーはどれほどの成長を遂げるんだろうって。俺たちならどこまでいけるんだろうって」


「ポジティブなのは本当に羨ましいよ。私も見習わないとなぁ」


「ユナはそのままでいい。今のままの方がユナらしい」


「そう、なのかなぁ?」


 いつも通り他愛のない会話をして、いつも通りの戦い方でダンジョンを踏破する。ただ、それだけのはずだった。

 俺たちは驕っていたんだ。


 確かに俺たちはBランク冒険者になった。だが、Bランク冒険者になれたらBランクダンジョンの探索が簡単にできるというわけじゃない。このランクのダンジョン、このランクの魔物ならば倒すことが出来る実力があるというだけ。

 油断をするとすぐに足元をすくわれる。


 だから、この結果も自業自得なのだろう。


「なんだよこれ、なんだよこれぇぇぇぇっ!」


 俺たちのリーダー、アズマが叫んだ。

 今、俺たちの目の前にはBランクの魔物、ヘヴィスネークが居る。ここまでの道中でBランクの魔物とは何度か戦ってきたが、そこまで苦戦するという印象は受けなかった。

 なにせ、俺たちのチームワークはこの半年で完璧に形成されているもので、安定感抜群。誰も俺たちのチームワークを崩すことが出来る相手は居ないと思っていた。


 だが、俺たちのチームワークは完璧すぎるがゆえに一つでもほころびが生まれてしまうと、それが全て崩れてしまう。


 ヘヴィースネークは鉄の鎧のような固く分厚い皮に覆われた蛇型の魔物。巨大な体躯のわりに、体はものすごく柔軟で、自分よりずっと小さい穴にでも潜り込むことが可能となっている。

 だからだろう。

 俺たちが潜っている洞窟型のダンジョン、その壁の小さな穴の中に潜り込み、冒険者がのこのこと歩いてくるところを狙っていた。


 俺たちは気が付かなかった。

 いや、俺たちがちゃんとしていたら気が付くことも可能だったのかもしれない。だけど、俺たちはちゃんとしていなかった。

 強くなった気がしていた。今まで同様、Bランクダンジョンなんて余裕で突破できるものとばかり考えていた。


 甘かった。

 不意打ちを受け、何とか反撃をしたが、一度崩された陣形は容易に戻すことが出来ず、武器は破壊され、鎧もボロボロ、到底戦えるような状態じゃなかった。

 このまま戦えば俺たちは間違いなくあのヘヴィースネークに殺されてしまうことだろう。だから、俺たちは逃げ出した。


 これまで上手く行っていたという自信なんて粉々に砕かれてしまった。

 俺たちが上手く行っていたというのはたまたまで、それが何度も続いていただけ。俺たちは思ったほど強くなっていなかった。そのことを思い知らされた俺たちはプライドも何もかもかなぐり捨て、とにかく生きるために逃げた。

 あの図体の割にはヘヴィースネークはかなり素早い。だから、追いつかれないように必死に走った。


 走って、走って、走り続けて……。

 そして――


「はぁ……はぁ……追っては……来てないか」


「ね、ねぇハイド。ユナとアズマは?」


 俺のパーティーメンバーの一人、メイが聞いてきた。

 そこで俺は気が付いた。周囲を見渡し、メイが言ったユナとアズマの二人の姿を探してもどこにも見当たらない。

 つまり、俺たちは無我夢中に走っている間にはぐれてしまったということなのだろう。


 俺たちの売りはチームワークだというのに、はぐれてしまったらチームワークもくそもない。今この状況で魔物と遭遇したら一巻の終わりだ。

 なんとしてもいち早くユナたちと合流しなければ。

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