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4-62『ルリハの世界』

「ぐっ」


 ハイドが爆発に巻き込まれて少し怯んだように見えた。

 そうだ、ハイドは手で触れた魔法を消すことが出来る。だけど、魔法じゃない爆風なんかは防ぐことが出来ないんだ。

 だから、『紅蓮廻炎』直撃よりもルリハは手前に落として爆発を当てた方が効くと考えて手前に落としたんだ。

 この短時間でそこまで考えられるほどにハイドを観察していたということか。やっぱり、ルリハは勇者パーティーに必要な存在だな。こんなところで死なせるわけにはいかない。


「間違いなくさっきまでよりも威力が上がってるな」


「もちろんよ。だって、この状態の私は自分の魔力回路を使っていない。だから、出力をセーブする必要が無い。自分の魔力回路の心配をせずに自由に魔法を使えるなんて最高ね! 『ファイアボール』」


「ちっ」


 周囲の炎を集め、それを『ファイアボール』として何度も飛ばすルリハに舌打ちを鳴らして魔法の爆風が直撃しないように攻撃を回避し始めた。

 さっきまでのハイドだったらあんな魔法は無視をして俺に突っ込んできていただろう。だが、あの様子を見るにハイドはついにルリハのことを自分に脅威を洩ら足すことが出来る強敵と判断したらしい。


 今この状態なら魔力回路を使わずにルリハは魔法を使うことが出来る。だとしたらもうルリハの魔力回路の心配をする必要は無いだろう。

 確かにルリハは魔法を自由に使えるようになったし、威力も限界を超えて放つことが出来るようになったけど、でもハイドを倒す決定打にはなり得ない。まだ足りない。

 だからその足りない部分は俺が補うっ!


「『豪拳(インパクト)』」


「カルマ・エルドライトぉぉぉぉっ!」


 ルリハの魔法を回避し、バックステップをしたタイミングを見計らってパンチを繰り出すと、ちゃんと俺の事も見ていたようで、俺の拳を手で受け止めてくる。

 また魔力を奪われ始めたため、すぐにハイドの手を振り払って回し蹴りを放つ。


「『暴風蹴り(ハリケーンショット)』」


 その蹴りは軽く体を動かすことによって回避されてしまったが、回し蹴りを放ちながら体で隠して構えていた魔法を解き放つ。


「『エクスプロージョン』」


「な、お前!」


 俺が『エクスプロージョン』を放ったのはもちろん地面に対してだ。

 ハイドに直撃したらまず間違いなくかき消されてしまうだろうから。だから、ルリハに見習って真下に『エクスプロージョン』を放つと、足元で大爆発が巻き起こった。

 これならハイドはかき消すことは出来ない。問題点としては俺も一緒に爆発を受けてしまうということだが、問題ない。これも俺の作戦の内だ。


 俺の切り札(カード)である『業』は他者からの攻撃はもちろん、自分の攻撃を自分で受けたとしてもダメージをストックすることが出来る。

 大前提として俺が耐えきれるかどうかというのが問題なんだが、俺の魔法だ。自分の限界に合わせて威力を調整することが出来る。ただ、俺の魔法の出力調整は微妙なところだから、ちゃんと俺が自分で耐えきることが出来る威力で留めることが出来るか分からなかったんだが、なんとか自爆するという未来だけは防げたようだ。


「お前、馬鹿だろっ」


 さすがの魔人と言ったところだ。基礎防御力が人間よりも高いということなのだろう。

 俺は今の爆発によって皮膚が焼かれてしまったというのにハイドはまだまだ普通に動けそうな様子。でも、至近距離で『エクスプロージョン』を受けてしまって無傷というわけにはいかなかったようで、フラッとよろめいた。

 そこにルリハの魔法が轟く。


「『紅蓮廻炎』」


 よろめいたハイドへ一直線に向かう紅蓮の火矢はよろめいて防御が出来なくなってしまっているハイドの肉体を穿った。


「あがああああああああああああああ」


 初めて出たハイドの悲鳴。

 初めてちゃんとハイドにダメージを与えることが出来た。ルリハの魔法の威力がハイドの防御力を貫き、ハイドの肉体に届いた。


 見るとハイドは間違いなくさっきよりも動きが鈍っているように感じる。

 確かにルリハの魔法の爆発や、俺の『エクスプロージョン』を受けてしまったというのはあるだろうけど、それにしたって魔人のハイドが弱りすぎじゃないか?

 足取りもおぼつかなくなっていて、俺たちの攻撃をちゃんと回避できなくなっている様子。じゃなければ、俺の『エクスプロージョン』であそこまでのダメージは受けなかっただろうし、それに伴ってルリハの攻撃を受けることもなかっただろう。


「はぁ……はぁ……」


 もしかして、これもルリハの切り札(カード)の効力なのか?

 俺にとってはめちゃくちゃ暑いというだけなんだけど、敵に対しては体力を奪うという隠し効果もあるのか? だとしたら、ルリハの切り札(カード)はとんでもなく強い性能ということになる。

 賢者にもこれほどに強い切り札(カード)を持っている人はそうはいない。


 俺はルリハの方へと視線を向ける。だが、ルリハはハイドのことを怪訝そうに見ているだけだった。

 ルリハは間違いなくハイドがさっきまでよりも弱体化しているということは察しているだろう。そして、自分の切り札(カード)の効果なんだとしたらすぐに気が付くはず。

 なのに、ルリハが困惑している……どういうことだ?


 その時、ハイドは膝から崩れ落ちるようにして倒れ込んでしまった。


「ぐ、ぐぐぐ……まだ、だ、動け」


 いや、違う。

 これは俺の切り札(カード)『業』の効果だ。

 どうして魔人であるはずのハイドに発動したのかは分からないけど、これは相手の罪の重さによって相手を弱体化するという効果。だが、この罪の重さというのは相手の罪の意識に依存するところがある。

 罪を犯しているという意識が少しでもあれば、この効果は発動するのだが、基本的に魔人になったらその期間が長ければ長いほど魔族に思考が近づいていって罪悪感というものが無くなって、俺の切り札(カード)が効果を示さなくなってしまう。


 つまり、ハイドには――罪の意識がある?

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