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4-58『ルリハ・ベータテッド4』

 それから私とユイは何となく仲良くなった。

 別に私から積極的に話しかけに行ったわけじゃないけど、魔法の使い方を教えた翌日からまるで懐いた子犬の様に私の後ろを尻尾を振ってついてきた。

 私がお昼を食べるために中庭に行った時も、トイレに行く時も、それから魔法の選択授業の時にもついてきてたからさすがに教師に怒られてしょんぼりしながら連れていかれてった。

 授業は私とユイは別の選択授業を取っているのだから当然の結果である。


 しかし、それでもユイの付きまといは収まらず、逆にエスカレートしたため、私は折れてユイと話すようになった。


 関わって見てわかったのだけど、この子は他に類を見ないレベルのポンコツである。

 剣の才は凄まじいのに、何もないところで躓いてみたり、剣を教室に忘れたり、二人でお昼食べようというときに弁当を持ってくるのを忘れたことに気が付いたりと、本当にこの子は一人で生きていけるのかというレベルでポンコツだ。

 正直、私が見ていてやらないとという庇護欲のようなものもあると思う。いわば介護に近い気がするけど。


「やばい、剣教室に忘れてきた!」


「はい、剣。今度から忘れないように」


「ルリハちゃん、ありがとう!」


 この子はどうやって生きていくつもりなのだろうか。

 もしかすると私はこの子と関わってしまったばかりに一生この子の介護をしなければいけない運命に陥ってしまったのだろうか。


 でも、悪い気はさせないという所がこの子のすごいところだ。

 何せ、すごくいい子なのだ。感受性豊かで人のことを気遣うことが出来るし、そのせいで本人以上に落ち込んでしまうときはあるけど、人の心情をよく理解できる子だと思う。

 だから見ていてあげたくなるんだ、どうしても支えてあげたくなるんだ。


 ユイと関わり始めて一か月で私の中にそんな思いが芽生えていた。

 だから私はこれからもよろしくという意味を込めてユイと同じ呼び方を実践してみた。


「あ、えと……ユイちゃん」


「え、どうしたの急に! どこか、まさかお腹でも痛いの!?」


「いい……もうちゃん付けはしないから」


「あ、ごめんって!」


 私にちゃん付けは似合わなかったらしい。

 自分でもわかっていたけど、それを実感した。ちょっとだけ心に傷が出来たような気がする、こんなんだったら最初から歩み寄ろうなんて思って慣れないちゃん付けなんてするんじゃなかった。


 冒険者学園には一年生の終わり頃からダンジョン探索実習というものが存在している。

 近くに存在しているEランクダンジョンに潜ってダンジョン探索を体験するというもの。そしてこの実習で好成績を残すと仮ランクというものが上がっていき、この仮ランクが冒険者になった時に自分のランクとなるという制度が存在している。

 そして、この探索実習ではパーティーを組むことを許されているのだけど、なんというか流れでいつも通りにユイと一緒に探索することになった。


「そう言えば、ユイの剣術をちゃんと見るのは初めてかも」


「あ、確かに。私は魔法の授業の時にルリハちゃんの魔法を見てるけど、ルリハちゃんは剣術の授業は取ってないもんね」


「うん」


 最後に見たのは夜に一緒に訓練をした時以来という感じだ。

 私はユイの『迅』でしかユイの剣術を知らない。だけど、そんな私にすら噂が届いてくるほどの腕前なのだから、心配することはないだろう。


 実際、ユイの剣の腕前は良く知らない私の目から見てもすごいものがあって、近接戦では絶対にユイに敵わないなと思ってしまった。

 そして、私が剣術と魔法を合わせる方法を教えてからユイはひそかに練習をしていたようで、剣術の中に魔法を混ぜ込むということが非常に上手くなっていた。

 ユイのメインは剣術だから、魔法は補助程度で決定打を持つようなものではないのだけど、随分と魔法の腕っていうのが上がっているように見える。


「ふぅ……お疲れ~」


「ほとんどユイが一人で戦ってたから私は全然疲れてないのだけど」


「え、そうなの? 夢中で気が付かなかったなぁ」


 正直これだとパーティーを組んでいる意味がないような気がする。

 私ももっと力を付けてユイの仕事を奪ってでもユイの負担を小さくしてあげられるようにならなければならない。それがユイという人物とパーティーを組んだ私の使命だ。


 私の得意な魔法は火属性魔法。

 特に、『ファイアボール』のような火を射出するような魔法が得意で、殆どこの魔法で戦っているという所があった。だけど、さすがに初級魔法だけで戦い続けるというのは無理があるし、いつか絶対に限界が来るって思った。

 私の魔力を込めれば威力は上がるけど、それでも初級魔法に過ぎない。だから、私はもっと強い魔法を習得するために魔導書を読み漁った。

 全てはユイと一緒に戦えるように、ユイが安心して後ろを任せることが出来るような魔法使いになるために。


 そうして私が習得した魔法が――


「『紅蓮廻炎』」


 炎の矢が魔物に命中し、爆発を引き起こす。

 威力は今まで私が使っていたメインウェポンの『ファイアボール』とは比にならない。圧倒的威力を見せた。

 その光景にさすがのユイも目を真ん丸に見開いて固まってしまったし、さすがに私も全力で『紅蓮廻炎』を使ったらこれほどの威力になるとは思ってなかったため、冷や汗だった。


「すごい!」


「ユイ?」


「すごいよ、こんな魔法、クラスの人たちじゃ絶対に使えないと思うよ! やっぱりルリハちゃんはすごい!」


 私としては予想外の展開だったのだけど、ユイに褒めてもらえたのだから、私は大満足だった。

 いつの間にか私はユイをどうすれば喜ばせることが出来るのか、そればかりを考えるようになっていた。

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