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4-53『テライ・ベストノイ2』

 ニルが行方不明になった?

 昨日、一緒に遊んで、あんなに元気そうにしていたニルが、その家族も含めて姿を消してしまった。

 その事実がどうにも信じられないものだった。


 昨日、あれほど元気そうにしていたニルが死ぬわけがない。

 そう思って私は慌てて屋敷を飛び出し、ニルの家に向かった。


 私は絶望した。

 なにせ、昨日までニルの家があった場所は更地になっており、まるで何事もなかったかのような土地へと変貌を遂げていたのだ。

 思わず私は膝から崩れ落ちてしまった。


 どうしてこんな事になった。

 ニルは優しくて、初めて出会った私ともあんなに仲良くしてくれて、世間知らずな私にも色々と教えてくれて……。

 こんな仕打ちは酷いよ……。


「おや、テライお嬢様。こんなところで何をして居られるのですか?」


 背後から声が聞こえてきてビクリと肩を震わせた。

 そこに居たのはなんと、私に魔法を教えてくれている先生、その人だった。

 そこで気がついた。今日は魔法の勉強に先生が屋敷に来てくれる日だったということ。そして、ここが先生がいつも通って屋敷に通ってくれている道なんだということ。


「せ、先生……っ」


「どうしてこんなところに?」


「そ、れはぁ……」


 私は外出を許可されていない。それなのに外に出ているというやましさから本当のことは言えない。

 だから口ごもることしか私には出来なかった。


「まぁ、良いよ。ここにテライお嬢様が居たということはお父上には内緒にしておきます」


「ほ、本当ですか!」


「はい、約束です」


 なんとなく分かっていた。

 どうしてこんなことになってしまったのか、どうしてニルがこんな仕打ちを受けなければいけなくなってしまったのか。

 私と、関わってしまったせいだ。


 その事に確信を持ったのはメイドたちの会話を盗み聞きしたときのことだった。


 どうやら私が追い返した男の子たちは親を連れて私の家に直談判に来ていたらしい。

 それで私のお父様とお母様も私が外に出てニルと遊んでいたということを知ったようだ。ここまで条件が揃えばいくら世間知らずのお嬢様である私でも真相が容易く想像付く。


 世間体を何よりも気にするお父様とお母様だ。私に友達が出来るなど許せるはずもない。


「お父様、お母様、お話があります」


「なんだ、今は忙しいんだ。後にしてくれないか」


「ニルのお家、消したのお父様ですよね」


 お父様なら世間体のためならばそのくらいのことは簡単にやってしまえる。

 一番権力、力を渡しちゃいけない人だった。


「テライ、お前に友達は必要ない。お前はただただ何も考えること無く、この屋敷に居れば良い」


 私の言葉を肯定はしなかった。

 だけど、お父様のこの言葉、これが全ての答えだと、私に教えてくれた。間違いなくニルの家を消したのはお父様だと理解した。


 まさか私がこれほどまでに成長しているとはお父様は思わなかったのだろう。

 だって、お父様とお母様は一度だって私が魔法のお稽古をしている時に様子を見に来たことはなかったんだから。

 だから私は二人に気が付かれない内に、油断している内に背後から――


「『風刃(エアスラッシュ)』」


 風の刃で喉を切り裂き、四肢を切り裂き、胸を抉った。

 悲鳴を上げる暇なんて与えなかった。お父様とお母様は何に攻撃されたのかも分からないまま、悲鳴を上げることすら叶わず私に殺されたのだ。


 私の『テライの世界』さえあれば人を殺すことなんて簡単だった。

 相手の動きは全て手に取るように分かるから回避は容易だし、逆に攻撃を当てるのは簡単。

 お父様とお母様を私が殺したことに勘づいたメイドたちが私に襲いかかってきたけど、その全てを返り討ちにしてみせた。


 これが私にとってのニルへの弔いだった。


「テライ……これは」


「せ、先生。聞いてください! ニルを、ニルをお父様が殺したんです! 私の友達を殺したんです! だから私はニルの代わりに仕返しを」


 先生はいつも厳しいけど優しく魔法を教えてくれていた。

 あの日だって、本当にお父様に内緒にしてくれた。だから、今回も私の味方になってくれるんじゃないかって、そう思っていたんだ。


「人を殺したらダメでしょ」


「え?」


「どんな理由があっても人を殺したらダメ。友達を殺されたなんて、理由にはならないよ」


 なに、イッテルノ?


「まず手を出す前に君は話し合うべきだった。どうして殺したのか、どうしたらよかったのか」


 もう、そんな段階にはなかった。

 お父様は私の話なんか聞かないし、実際お父様はニルを、その家族までも亡き者にしてしまった。もう、話し合える段階なんて疾うの昔に過ぎてしまっていたんだ。

 それなのに、先生は何を言っているんだ?


「一緒に自首しに行こう? そして、いっぱい反省するんだ」


 私は何も悪いことはしてない。

 悪いのはニルを殺したお父様で、私は悪を捌いただけ、断罪しただけ。だと言うのに、なんで私が責められなくちゃいけないの?


 理不尽だ。そう感じたとき、私の身体は勝手に動いていて、気がついたら先生の首と胴は泣き別れになっていた。

 どうやらいつの間にか私は先生をも超える実力を手に入れていたらしい。


 私の世界の人たちは誰も私に味方をしてくれない。

 私の話を聞こうともしてくれない。私の話を親身になって奇行ともしない人が話し合いだって? 巫山戯ないでほしい。

 ただただ、最初から私が悪いと決めつけているだけでしょ。


 先生を超えた私は旅に出ることにした。

 もうそろそろこの家で大量殺人が発生していると事件になる気もしたからさっさとこの家から離れることにしたのだ。

 それからは色々なところを見回った。


 だけど、世間知らずなお嬢様である私に生活能力なんてあるはずもなく、毎日毎日野宿生活を送ることしか出来なかった。


 どんどんと体力が削られていき、ついに私は森の中で一歩も動けなくなってしまった。


 全然気が付かなかったけど、成長してどんどんと『テライの世界』の効果が強まる度に、私の身体への負担が大きくなっていった。

 常に負担がかかっている状態ではこんな生活を送っていたら動けなくなるのも当然。

 ついに身体に限界が来たらしい。


 私はこのまま死ぬのだろうか。そんな事を思っていたその時、一人の男が姿を表した。


「君、いい目をしている。人間を恨んでいる人、特有の目だ。どうだ? 魔人となって共に人間たちを殲滅しないか?」


 ハイド・バッカスとその男は名乗った。

 私はどうせ生きることに飽きていたし、人間という生き物を信用できなくなっていたから、即決して私は魔人となった。

 このまま死ぬ運命だったのだ。これが罠だったとしても何も変わらないと思った。


 そうして私は魔人となった。

 魔人となってから頭の中で声が響く。


 憎い――憎い――憎いと。


 人間に対しての憎悪が魔人になってからより強くなった気がする。


 驚くことに、魔人となってから『テライの世界』の負担というものを感じなくなったような気がする。

 体力も回復し、私は再び動ける体となった。

 どうやら魔力回路に縛られなくなったため、魔力回路へかかる負担を感じなくなったということみたい。


 こうして私の第二の人生が始まった。


☆☆☆☆☆


(そんな、私はこんなあっさりを負けてしまうの? 折角魔人になって力を手に入れたというのに、こんなにあっさりと終わってしまうの? いやだ、それだけは嫌だ! 絶対に認めない、こんなところで終わるなんて絶対に認めない! 折角掴み取った第二の人生、こんなところで終わらせるもんですか!)


 すでにテライは首が斬られ、魔人でも死んでしまうほどの致命傷を受けてしまっている。

 だが、それでもテライは気力だけで動き、今にもまるでガルガの様な進化を遂げようとしていた。そして、後は覚悟さえあればテライは究極生命体に進化できる。

 その覚悟を示すため、テライは発動する。


「『狂化(ドロップアウト)』」


 魔人だけが使うことの出来る最後の手段。

 自我を失う代わりにとてつもない力を手に入れることができるという究極奥義。


 どんどんとテライの力が強まり、テライの首の断面が塞がって新たな肉体を形成しようとする。それはガルガ同様、魔人とも違う究極の生命体へと進化しようとしていると言う証だった。

 その状態になってしまえば、テライを殺すことが出来るのは魂をも斬ることが出来る勇者の剣、聖剣『リリウム』のみ。


 この場にいる人たちじゃ対処はできない。


「殺す、絶対に殺す。ころ――」


 しかし、次の瞬間にはテライの頭はバラバラに切り裂かれ、粉々の肉片となって地面に転がり落ちた。

 そこでついにテライの憎しみの声は止まり、肉体の再生も中止された。

 完全にテライの肉体が停止したのだ。


「殺す殺すうるせぇんだよ。恨み吐く前に手ぇ出せ」


 進化するかと思われたテライだが、進化すること無く、ただただゼルドガルに切り裂かれ、ただの肉片となって命を落とした。

 あまりにも呆気ない魔人戦の幕引きだった。


「ぐっ」


「おい、オーズ。無茶するな。直ぐに診療所行くぞ」


「だ、だが、ゼル君。どうやらこの街にはまだ魔人が居るみたいなんだ。片方にはベータテッド夫妻を向かわせたが、もう一方には――」


「あぁ、あれなら心配しなくても良い。あいつなら絶対になんとかするだろう。それよりもまずテメェの治療だ。うだうだ言ってねぇで行くぞ」


「ちょ、ゼル君!?」


 オーズを抱えて走り出すゼルドガル。

 もう二箇所にも魔人が出没していることには気づいており、誰が対処に参加しているのかも把握しているが、その上で問題ないという判断を下し、自身はオーズを診療所に連れていくということに決めたのだった。

 あまりにも呆気ないテライ戦でしたね。


 そう、ゼルドガルはあまりにも強すぎるんです。


 あれほどカルマたちが苦戦するような魔人を瞬殺してしまう。なんだこのチートは。


 これなら焦ってしまうオーズの心情も分からないでもないのではないでしょうか?


 さて、次回からは最終戦、ハイド戦です。


 ガラドとテライの二人を魔人にしたハイドの目的は如何に?

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