4-48『オーズ・ウケイランド2』
オーズは賢者により一層近づくため、まだ冒険者ギルドが無かったオルターンに冒険者ギルドを設立した。
その街は強者揃いで、誰もが自分が一番だと信じてやまない。そして自分より弱い相手の言うことは聞きたくないと言う捻くれ者が集まっている場所でもあった。
今まで冒険者ギルドが無かった理由というのはギルドを設立したとしても直ぐに街から追い出されるためである。
この街に滞在している冒険者たちよりも弱い人物ではギルドマスターは務まらない。
実力をつけ、功績を上げるにはここが一番ちょうどいいと考えたオーズはこの街の噂を聞いた瞬間、迷わずこの街にギルドを立ち上げるということを決意した。
「おいおいおい、俺たちの断りもなしに冒険者ギルドを作ったってやつはお前かぁ?」
「あぁ、そうだよ。僕はオーズ・ウケイランドっていうんだ。よろしくね」
まずは印象を良くするために和やかな口調で挨拶をする。
だが、その次の瞬間、オーズの身体は宙を舞い、窓を突き破ってギルドの外にぶっ飛ばされていた。
冒険者に殴り飛ばされてしまったのだ。
油断禁物。オーズもこうなってしまうことは想定できていたというのに、回避はできなかった。
目では拳が迫ってきているのは見えていたのにオーズの身体が反応しなかった。
「これに懲りたらもうギルドを作るなんて言う馬鹿な真似はするんじゃねぇ」
地面に倒れながら冒険者の捨て台詞を聞き、オーズは決意する。
絶対にこの街の冒険者たちに認めてもらい、冒険者ギルドを作ってみせると。今まではゼルドガルに頼りまくっていたが、この一件だけは絶対に自分の手で為し遂げてみせると。
それからは毎日冒険者ギルドを設立しようと挑戦する日々が始まった。
「お前、懲りずにノコノコと戻ってきやがって! またぶっ飛ばしてやるよ!」
「はっはっは、昨日の僕と今日の僕、同じだと思ってもらったら困るよ。なにせ今日はこの服の下に防具を来ているんだからねぇっ――」
だが、オーズの肉体は言い終わると同時に宙を舞い、窓の外に殴り飛ばされてしまった。
防具は殴られた衝撃で木っ端微塵。全く役には立たなかった。
「昨日のお前と今日のお前、何が違うって? 言ってみろ! 二度とギルドなんて作るんじゃねぇ!」
地面に倒れるオーズだが、その決意は決して揺るがない。
次の日も、またその次の日も、決して折れることはなく、挑戦し続ける。
「今日の僕は一味違うよ! なんたって、そこに罠を設置したからね! 僕に近づこうとしたら君の足は無くなると思ったほうが良いよ!」
「んなもん、発動する前に駆け抜ければいいだけの話だろうがぁっ!」
「うがぁっ」
色々な策を講じ、何度でも何度でも挑戦する。
冒険者が自分のことを認めてくれるようになるまで絶対に諦めない。オーズと言う男は一度決心したことは絶対に変えず、何があってもやり遂げようとする、努力の化身だった。
何度やられても、何度ボコボコにされても諦めない。
そうしている内に一年が経過した。
「やぁやぁ、冒険者君。僕がこの街に来てから今日で一年さ。一周年だよ、目出度いね! ということで、ここは一つ、僕にギルドマスターを任せてみるというのはどうだろうか?」
「どうだろうか? じゃねぇ、いい加減に故郷に帰ってマンマのミルクでも啜ってなぁっ!」
オーズは察した。
今日もいつも通りに殴り飛ばされて終わりなんだろうなぁと。そして明日からもまた殴り飛ばされる日々が始まるんだろうなぁと。
この一年、毎日殴り飛ばされていたら殴られることに慣れて痛いとか、嫌だとかは何も思わなくなっており、ただただ、明日はどんな作戦で行こうかと考えるようになっていた。
殴られることを覚悟し、オーズは目を閉じた。
その時だった。
ほんの少し、ほんの少しだけ脳内にビジョンが浮かび上がってきた。それは自分が殴り飛ばされるという姿――
「あがぁっ!」
予定調和だった。
予想通り、殴り飛ばされて地面に突き刺さるオーズ。
「いい加減に帰りやがれ!」
土を投げつけられるオーズだが、そんなことはもはやどうでも良くなっていた。
オーズは最後、目を閉じた時に見えたビジョンが気になりすぎて冒険者の言葉や土を投げられたことなど気にすることはできなくなっていた。
走馬灯のようなものなのか? そうも思ったものの、今自分が殴り飛ばされた時の構図はビジョンで見たものと全く同じで、気持ち悪い感覚に陥った。
オーズは勘づいた。
きっとこれは自分の能力、ほんの少し先の未来を見ることが出来ると言うものなのだろうと。
「よし、これがあれば次こそは――」
しかし、現実はそんなに甘くない。
ほんの少し未来を見ることが出来たところで、出来ることなんてあるはずがないのだ。
「ぐええぇぇ……」
いつもと同じく地面に突き刺さるオーズ。
今日も同じく未来を見ることに成功したオーズだったが、そんなほんの少しの時間で動くことが出来るはずもなく、そのまま殴り飛ばされてしまったのだ。
でも、昨日よりも時間が長くなっていることに気がついていた。
「オレのこの能力は成長している。後十回も挑めば……ぐふふ」
地面に突き刺さりながら笑う彼は何よりも不気味だった。




