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4-42『ガラド・ダルドラーン1』

「才能なんてくそくらえ!」


 俺、ガラド・ダルドラーンは一人、路地裏の石ころを蹴り飛ばしながらそう叫んだ。

 今日もダメだった。全然ダメだった。


 冒険者学園を何とかギリギリで卒業してから五年。俺はなんとか細々とソロの冒険者を続けていた。

 別に好きでソロをやっているわけじゃない。俺をパーティーに入れてくれる人が居ないのだ。


 俺は頑張ってる、頑張ってるんだ。だが、実力が追い付いてこない。

 お試しでパーティーに入っても俺は何の爪痕も残せず、あまつさえパーティーをピンチに陥れてしまうことがあった。俺は雷魔法が得意で、魔法を使えばかなりの高威力で魔法を使える。

 魔法さえ使うことが出来れば、それを当てることさえできれば俺は敵なしなんだ。


 だが、俺には冒険者の才能というものが無かった。


 幼い頃、魔法を訓練し始めてすぐに気が付いた。

 俺は通常よりも魔力のガス欠が圧倒的に早い。具体的に言うと、十歳くらいであれば初級魔法は十発以上使ってもそこまで魔力の消耗はしないだろうが、俺の場合、三発も使えばもうガス欠でぶっ倒れる。

 ほかの奴らよりも俺の魔力量っていうものが少ないんだと、その時思った。


 それが違うと判明したのは冒険者学園に通い始めて少し経過したころ。それぞれの現魔力量を計るという授業内で、俺の魔力量はむしろ通常よりも少し多いのだということが判明した。

 だからこそ、高威力の魔法を使ったり、みんなが初級魔法で悪戦苦闘しているころ、魔力量に物を言わせて中級や上級の魔法だって使ったら倒れるけど発動することが出来たのだ。


 母さんは俺が何かおかしいんじゃないかと考えて診療所に連れて行った。結果――


「息子さんの魔力回路、ここの部分が上手く繋がっていないようです」


「え? それってどういうことですか?」


「おそらく生まれつきのものですね。生活する上では問題ないでしょう。これによって健康上悪影響が出るというものでもありません。ただ、魔法を使った時に魔力の制御が上手く出来ず、通常よりも多く魔力を使ってしまうことになります。この繋がっていない部分から余計に魔力が漏れ出てしまうんですね。なので、冒険者としてやっていくには向いていないかと……」


「そんな……何とかならないんですか!?」


「お母さんも知っているかと思いますが、壊れてしまった魔力回路を治す術は現代医学にはありません。全て自然の治癒力に任せるものとなります。そのため、生まれつき魔力回路が繋がっていないとなると、これが繋がるということは恐らく無いかと」


 医者の言葉に俺たちは何も言えなくなってしまった。

 いつ家に帰ってきたのかも分からない。ただ、気が付いた時には母さんが俺のことを抱きしめて、何度も何度もうわごとのように「ごめんね……ごめんね……」と呟いていた。

 健康な子に産んであげられなくてごめんねと。


 そんな母さんの姿を見ているのが辛くて俺も泣いてしまったのを今でも鮮明に思い出せる。


 俺の父さんも母さんも冒険者。だから俺の将来の夢も冒険者として稼いで母さんと父さんを楽させてあげる事になっていた。

 だから俺は言った。


「魔力回路がこんなんだけど俺は頑張ってみるよ。絶対に冒険者になって見せる。だから、安心して見ていてよ。そして俺が冒険者を引退した父さんと母さんを養ってあげる!」


 だが、俺の父さんは俺が在学中に魔物に襲われ戦死。そして母さんは何度も俺が授業中に倒れたという報告を聞いた心労によって死んでしまった。

 学園には何度も俺が倒れたということは親に言わないでくれと頼んでいたにも関わらず、さすがに報告はせざるを得ないということで俺には内緒でずっと報告を続けていたらしい。


 冒険者というやつは人が必死に頼み込んでいるのに無視して人の親に心労を与えて殺す生き物なのかと、この時点で相当な不信感を抱いていた。


 でもそれでも、俺は両親に誓ったことだからと必死に冒険者学園で修行をして卒業し、冒険者になれたわけなんだが――このありまさだ。

 パーティーに入ってもすぐにガス欠を起こす冒険者を置いておこうなんて思うパーティーはどこにも無かった。


「これじゃ食いつなぐこともできないよなぁ……」


 今日の収入を見て肩を落とす。

 今は何とか限界ギリギリで食いつないではいるが、これがいつ底をつくかわかったものじゃない。


 魔力量はあるんだ、だから魔法の才能はあるはず。だけど、魔力回路が壊れているせいでまともに魔法を使えない。

 魔法の才を覆い隠してしまうほどのデメリット。


 人生というのは理不尽だ。


「冒険者業も潮時か……何か一発ドカンと稼げるものはないか?」


 ここまでダメダメだと、もう冒険者というものに未練など微塵もなかった。

 だからとにかく、効率よく金を稼ぐことばかりを最近は考え続け、そしてついにやってきてしまった。ちょっと前までは嫌悪していて、そんなものに金を使うくらいなら必死に戦った方がいいとまで考えていた場所。


「カジノか……前までは来る気なんて微塵もなかったが、今はとにかく金が欲しい。なりふり構ってる場合じゃない……か」

『ガラド・ダルドラーン』がこの話含めて三話続きます。 

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