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4-39『デスタとメルフィーの実力』

「ちょっと予想外だったけどぉ、冒険者が増えたところで魔人をどうにかできると思っているならぁ、心外だねぇ。魔人はそんな境地には居ないんだよなぁ」


 それはそうだ。

 魔人に対して賢者でもない人がどれだけ集まったって勝機は薄い。善戦できればいい方で、勝てるかどうかは怪しいというもの。

 だけど、メルフィーはそんなガラドの言葉を聞いて不敵に笑って言った。


「そうかな? そっちこそ私たちのことをナメてるんじゃないの?」


「あぁ、オーズが俺たち二人だけをこっちに寄こしたということの意味、ちょっとは理解しろ」


「わからないなぁ……魔人が居ると分かったうえで賢者じゃない冒険者を二人寄こしたっていうのは見殺しにするようなもんなんだけどなぁ」


 妙に自信満々なメルフィーとデスタだけど、よほど実力に自信があるということなのだろうか。

 ただ、この二人は賢者じゃない。魔人は賢者が出動する案件だから魔人はそれほどの強さを秘めているということになる。

 そんな相手にどれほど戦えるのか、この二人のお手並み拝見だ。


 私は再び『幽閉愚絶門』で一本の腕に体を持ってもらいながらもう二本の腕を構える。


 互いににらみ合い、そして戦いは唐突に再開された。

 デスタが拳を構えて駆け出す。その速度は閃光のごとし、『雷瞬(ライジング)』を使って目にもとまらぬ速さでガラドへ突進していく。

 ガラドは魔法使いタイプで、そこまで速度が速いタイプじゃないため、デスタの突進を回避する術は持ち合わせておらず、デスタが繰り出した拳を咄嗟に腕で防御した。


「『撃雷(げきらい)』」


「ぐぅっ」


 デスタの攻撃に少しだけ後ずさるガラド。

 さっきの筋力増強の効果がまだ残っているようで、デスタの攻撃に耐えることが出来ていた。だが、あれほどの筋力を得たガラドを後ずさらせるほどのパワーを出したデスタ。何あの化け物火力、こわぁ。


 確かにさっき、隕石を破壊するのが早いなぁと思っていたけど、これほどの火力を出していたのか。そりゃ早いよね。


「ちぃっ、かてぇな」


「筋力増強中にこれほどのダメージを食らったのは初めてだぁ。すごいなぁ、尊敬するなぁ」


「心にもねぇこというんじゃねぇ。さぶいぼが立つ」


「そうかぁ、ならこんなのはどうだぁ? 『雷鳴狂波(らいめいきょうは)』」


「ぐあああ」


 ガラドが魔法を唱え、手を叩いた瞬間、その叩いた手からまるで衝撃波の様な稲妻がガラドに襲い掛かった。

 あれは自分が出した音を稲妻として周囲にとどろかせる。音が聞こえる範囲内ならどこにでも攻撃することが可能で、回避は不可能。唯一の対処法は音が聞こえないようにすることのみ。

 聞こえる音が大きければ大きいほど威力も大きくなる。


 私とメルフィーにも音は聞こえていたからちょっと体が痺れたけど、離れていたから聞こえた音も小さかった。

 だけど、デスタは目の前に居て音も大きく聞こえたらしく、苦痛の声を上げていた。だが、デスタはそこで終わらない。


 思わず仰け反ってしまったデスタだったけど、そのまま大きく足を振り上げガラドの顎を蹴り上げた。


「『雷蹴(らいしゅう)』」


「ぐっ」


 顎を蹴り上げて若干浮き上がったガラドの体、そこにさらに回し蹴りを加えてデスタはガラドを横に蹴り飛ばした。

 その威力の高さゆえに蹴り飛ばされたガラドの肉体は何本かの木を薙ぎ倒して飛んで行った。


 私は驚いている。

 デスタが一人でここまでガラドと戦えるとは思っても居なかった。

 確かにガラドは魔法使いタイプで近接で戦うデスタの方が接近戦の上では有利ではある。だが、それでも相手は魔人なのだ。もっと苦しい戦いになるものだと思っていた。


「前言撤回するぜぇ。お前は強いなぁ」


「はぁ……嫌になるな、今ので倒れないとか本気かよ……」


「そりゃ魔人だからねぇ。この程度でやられるわけがないよぉ。それこそ魔人をナメないでもらえるかなぁ?」


 これだけの攻撃を受けてなお、ガラドの様子はまだまだ余裕そうだ。

 対するガラドはと言うと、最初から飛ばしすぎたみたいで少し汗をかいている。デスタの方には余裕というものはなさそうだ。全力全開で戦っていてこの状況ということなのだろう。

 デスタのあの火力はなかなかなものだったけど、まだ火力が足りないということなのか……?


「さぁてぇ……反撃をさせてもらいましょうかぁ?」


「悪いんだけど、またこっちの攻撃なんだ!」


「はぁ?」


 メルフィーが天高く手を上げる。

 その次の瞬間、空に分厚い雲が出現し、ガラドの真上のみ雲に大穴が空いて、そこから光が差し込む。まるでその光景は天国から誘われているかのよう。


「『天開(てんかい)』」


「え、ちょ、ぐあああああああああああああ」


 ガラドに降り注いでいた光、それが極太のレーザーへと変化してガラドのその肉体を焼き焦がす。

 光属性の上級魔法。そのあまりの攻撃範囲の広さに光属性上級魔法の中で最強格と噂されるほどの魔法なのだが、難易度が高すぎてあまり使う人というものを見たことが無い。


 昔の勇者パーティーにも光属性を得意とする魔法使いが居たんだけど、その人は『天開』を使ってくることはなかった。ちゃんと堅実に『天開』より発動が簡単な超級魔法を使ってきたイメージ。

 個人的には下手な超級魔法よりも上級ではあるけど『天開』の方が強い感じがする。


 メルフィーがこれを使えるということは、メルフィーは実力的に魔法使いの中でも上澄みに存在するのだろう。


 間違いなくこの二人、Sランクの中でもかなり強い。


「いってぇな、この野郎! だが、この戦いにも終止符を打ってやるぜ! この俺の切り札(カード)の前に跪け! 『運否天賦』」


 また始まってしまったガラドの『運否天賦』。

 これが発動されてしまったらもう止める術というものは存在しない。ただただ、何が発動するのか私たちは黙って見守ることしかできない。

 今にガラドの背後からルーレットが出現し、私たちは指一本動かすことが出来なくなるだろう。


 覚悟を決めてその時が来るのを待つ。だが、待てども待てどもガラドの背後にルーレットが出現することはなかった。


「は?」


「残念だったな、魔人。お前はすでに爪痕が付いてしまったようだ」


 ガラドの切り札(カード)は発動せず、そして私たちの行動を一切止めることが出来なかった。

 だからデスタはガラドが混乱して動けない間に再び動いた。


 デスタはガラドに間合いを詰めて思い切り握りこぶしを作り出す。その拳には稲妻が迸っており、空気が悲鳴を上げているというのを離れた場所にいる私ですら感じ取れた。


「『迅雷拳ライトニングインパクト』」


 その拳はさっきの『撃雷』よりも早く、そして重い一撃だった。

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