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4-37『マナの悪足掻き』

「しぶとく粘ってきたがぁ、どうやらここまでのようだなぁ」


 倒れ伏し、動けないでいる私の事を見下ろして、勝ちを宣言するガラド。

 最後の一撃が良くなかった。あれをまともに受けてしまったせいで、動きたくても身体は痛いし、言うことを聞かないしで、動ける気がしない。

 逆になぜ今の一撃を受けて生きているんだろう。流石に今の一撃を受けた時は死を覚悟したというのに、私は今地獄の激痛の中、生きている。


 生きているのなら、生きることを諦めるわけにはいかない。

 部下も頑張っているんだ、私がここで諦めてどうする!


「おぉっとぉ……? その状態になっていても、その手だけは動かせるわけだぁ」


 門の中から改めて亡者の手を出してガラドへ殴りかかるも回避されてしまった。


 身体を動かすことが出来ずとも魔力を制御することは出来る。

 身体が動かせないのなら、そこに割いていた分の思考を『幽閉愚絶門』に全て回せ。

 動けないことは仕方がない。だけど、勝つことを諦めたら全てが終わってしまう。だから、私はこの『幽閉愚絶門』のみで勝利を掴み取って見せる。


 ガラドが切り札(カード)を再使用できるまでの時間は極端に短いけど、それでもちょっとは時間が必要なはず。

 だから、もう一度切り札(カード)を使用することが出来るようになるまでになんとしてでもあいつを倒す。

 あいつに切り札(カード)を使わせてしまったら、もう実力なんて関係ない運の勝負になってしまうし、確率的にも私が不利だろう。


 だから絶対にここで――


「でも残念。さっきも見せたけどぉ、もうその手のパワーじゃ俺を止めることは出来ないんだよねぇ」


 もう一度亡者の手でパンチを繰り出すと、まるでさっきの再現のように片手で簡単に止められてしまった。

 そうだ、あいつは今ルーレットで出た筋力増強の恩恵を受けて亡者の手のパワーすらも超えてしまったんだ。


 でも、大丈夫。


「なら、二本ならどう!? セットリミット(ツー)


 更に亡者の手を追加、もう一本の手でもガラドへと殴りかかる。

 でも、二本だけじゃガラドに受け止められてしまう。そんなことは最初から分かっていたし、二本でも力負けしている。

 だけど二本あればガラドの両手を塞ぐことだって出来る。


「なるほどねぇ、動く分の神経を全て切り札(カード)に注いでいるってわけかぁ。回避を全て諦めた頭の悪そうな作戦だねぇ」


「そう、かしら?」


 本来、私は一本しか亡者の手を出すことが出来ない。それ以上出すと自分の動きと亡者の手の操作でこんがらがってしまって暴走する。

 でも、全ての神経を亡者の手に集中させれば最大三本までの手なら操ることが可能になる。


「セットリミット(スリー)


 これが今の私の限界値。

 二本の手でガラドと殴り合い、そしてもう一本の手はというと――


「おいおいおいぃ、そんなのってありかぁ?」


「そもそもあなたたちの存在自体が反則級なのだから、これくらい容認してちょうだい」


 私は自分で身体を動かすことが出来ない。

 動けない人を診療所へ連れて行く時はどうするか? そりゃもちろん運び込む。

 だから私もそれをするだけ。


 三本目の手で私の身体を持ってもらってガラドの攻撃から逃れることが出来るように動かしてもらう。

 もちろん私自身では微動だにできないわけだけど、この方法なら私自身が動けなくてもガラドの攻撃を回避することが出来る。

 亡者の手の筋力は化け物級だから、私くらいの体重なら手が一本あれば軽々と持ち上げられるのだ。


「悪足掻きなんてしてもいいこと一つもないと思うよぉ? そんなことより早く死んだほうが早く楽になれると思うんだけどなぁ」


「確かに肉体は楽になれるかもしれない。だけど、残してきた子たちへの罪悪感はずっと背負うことになるのよ」


「ずっと背負うってぇ? そんなの死んでしまったら終わりなんだから関係ないでしょぉ」


「私もそんな風に考えられたらどれだけ良かったでしょうね!」


 私を掴んでいた手は私を真上に放り投げ、そして素早く握りこぶしを作って二本の手とせめぎ合ってるガラドへと向かっていく。

 さっきは防がれてしまったけど、今度の一撃は外さないよ。


「ガラド、これが私の悪足掻き! 『幽豪拳(ゴーストインパクト)』」


「がはぁっ!」


 ついに私の攻撃がガラドに命中した。

 この一撃は通常の『豪拳』よりも威力が高い。まともに受けたら魔人でもただでは済まない筈。そしてガラドが殴り飛ばされないように二本の亡者の手がガラドの手を掴んでいるため、三本目の手が更に追撃を加えることが出来る。


「そんな一撃だけじゃ物足りないでしょ。おかわりなら、いくらでもあるわよ。『幽豪拳(ゴーストインパクト)』」


 ガラドの腕を掴み、何度も何度もガラドの顔面を殴りつける。

 防御力が高いせいで想定しているほどのダメージは入っていないみたいだけど、それでも何度も何度も殴ればダメージが蓄積されていく。

 これほどボロボロにしてくれたのだ。その分のお返しはさせてもらう――


切り札(カード)ぉ、『運否天賦』」


「うそっ!?」


 さっきよりももっと早い時間でガラドが切り札(カード)を発動してきて、ガラドの背後にルーレットがでてきたことによって亡者の手と私は一切微動だにできなくなってしまった。

 さっきよりも早いということは本当はもっと早くに発動できるようになっていたというのに、使わずに攻撃してきていたということになる。

 そうなると、このタイミングで発動してきた切り札(カード)だけど、まだまだ早くに発動できる可能性もあるんじゃないかという考えが頭をよぎってしまう。


「俺さぁ、人を痛めつけるのは好きなんだけど、人に痛めつけられるのは嫌いなんだよね。俺ってやつぁMじゃねぇからさ。今の攻撃は痛かったぞ。だから、もう容赦はしないことにした。このルーレットでお前を殺してやるよぉぉぉぉぉぉっ!!!!」


 雄叫びの様な声を上げたガラドは最後と称したルーレットを回転させ始める。

 黄色はスパーク、白は筋力増強、魔力封じがどれなのかは分からないけど、判明していないのは残り三つ。

 この中に私を簡単に殺すことが出来る可能性のあるものがあるっていうこと?


 そんなのが発動されてしまったら満足に動くことのできない私では回避なんてとてもじゃないけど出来ない。


 こうなってしまうから私はガラドが切り札(カード)を発動する前に倒したかった……。

 でも、理想論を今語ったところでどうにもならない。今はただ、運命に身を委ねることしか出来ないのだから。


 そうしてルーレットがやがて止まり、示したマスは――赤。


「さようなら、お嬢さん」


 ガラドが怪しげな笑みを浮かべると突如として当たりが真っ暗になった。

 赤のマスは時間変更? いや、遠くの景色は明るいから昼間を示している。となると、私の上に何かが――っ!?


 上を向いてみて私は驚愕した。

 なんと私の真上には超巨大な隕石が出現し、今にも私の今いるこの場所に直撃しようとしていたのだから。

 見てみるといつの間にか亡者の手の拘束から抜け出し、ガラドは安全地帯にまで離れて私の様子を伺っていた。


 亡者の手で頑張って逃げようとしても逃げるのが間に合わない気がする。そして、亡者の手三本だけで隕石を受け止めるというのも無茶だ。

 全盛期の百パーセント『幽閉愚絶門』なら、受け止めることが出来たかもしれないけど、三本だけで止めることは不可能。


 破壊できるか?

 出来ないことはないだろうけど、私一人で破壊しようとしたら落下するまで間に合わないだろう。


 どうしたら――


「『雷天(らいてん)』」


 次の瞬間、どこからとも無く雷がほとばしり、隕石に衝突したのだった。

 今話からガラド戦終結まで走り切ります。


 ハイド戦が気になっている方、もう暫くお待ちください!

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