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4-33『テライの困惑』

「あら、これから行こうと思ってたんだけど、来てくれたんだ~うれしいなぁ。私に会いに来てくれるなんて」


「白々しいね。君は今、僕が来なかったらこの辺一帯をめちゃくちゃにしようとしていたでしょ? そんなことされると、困るんだよね~。この街はさ、森に囲まれているということを売りにしているわけよ。そう簡単に木々を破壊されると、大事なうちの景観が台無しじゃん」


 けらけらと笑いながら互いに軽口の様に発言しあうが、その空気感はかなりピリピリとしているもので、周囲にいる冒険者たちは全員下手に動いたらただでは済まないということを理解せざるを得なかった。

 誰もが感じた。

 周りの冒険者が気を抜いたら気絶してしまいそうなほどの殺意を笑いながらぶつけ合っている二人。


 オーズはぶちぎれていた。

 大事な部下とも呼べる冒険者たちをこれほどにぐちゃぐちゃにしてくれたことや、大切な街の住民たちを危険に晒してくれたこと。

 そして、自分を呼びつけるためだけにこの周囲一帯をめちゃくちゃに破壊しようとしたこと。


 長くこの街で活動している冒険者ですらここまでオーズが切れている姿を見たことあるものは居ない。いつもひょうひょうとしていて、なんでも簡単に許してくれる、軽いノリのギルドマスター。

 そんなイメージが長年こびりついていたため、今のオーズを見て全員震えが止まらなくなっていた。


「それにしてもまぁ、これまた派手にやってくれたね。こりゃ、復興するのも大変そうだぁ」


「へぇ~、そんなに大変なの?」


「そりゃそうでしょ。まず森を再生しないといけないし、これだけ荒れてしまっていたら土質も大変なことになってそうだし、もう最悪だよね」


「そうなんだ? でも、そんなことを考える必要ってもうあるのかな?」


「……へぇ、その心は?」


「だって、みんな私に殺されることになるんだから」


 瞬間、風が吹き荒れ、大量の風の斬撃がオーズへと襲い掛かった。

 しかし、そんなことはオーズには読めていたため、風の斬撃に合わせるような形で『守護(プロテクション)』を展開。襲い来る風の斬撃を見事完璧に防いで見せた。


(このオーズという男、この私の超速魔法発動に合わせてきた? つまり、私がこうするってわかっててすでに構えていたということ?)


 テライは魔人である。魔人は魔法発動に魔力回路を必要としないため、魔力回路を経由する必要のある人間よりも理論上は魔法を速く発動することが出来る。

 そのため、よほど魔法を速射できる能力の持ち主でなければやや不利となるのが普通だ。

 だが、オーズは人間よりも早く発動されたはずの風の斬撃に見事『守護(プロテクション)』を合わせて見せた。これはそうそうできるものではなく、これがオーズを強者足らしめている実力だ。


「ちょっとさぁ、お引き取り願えないかなぁ? こっちは色々と忙しいんだよ? ギルドマスターの仕事量知ってる? 一日中書類の山に向き合っても全然減って行かないのこれが……ほんと、嫌になっちゃうよねぇ」


(変な格好をしていて、ふざけた人だなんて思っていたけど、大間違い。ただのおふざけ野郎じゃなくて、この人は強い)


 魔人であるテライに緊張が走った。

 それもそのはず、ギルドというものは誰でも設立することが出来るわけではなく、Sランクの中でも上澄みも上澄み、つまり賢者の一歩手前レベルの人しかギルドを設立することはできないのだ。

 オーズももれなくそのレベルの実力を有している。というよりも、賢者と同格レベルの実力を持っていると言っても過言ではない。

 だが、オーズは賢者になろうとは思わない。打診が来たとしても毎回断り続けている。


 ――自分には荷が重いからと。


 さっきまで鼻歌を歌ってスキップでもしながら歩いていたテライの様子はどこへやら。

 完全に臨戦態勢となり、オーズのことを一人の強者と認めてガチの戦闘モードへと移行し、次の瞬間テライはその場から姿を消した。


「『追い風(テイルウィンド)』だよ。どう? 速すぎて見えないでしょ」


 テライの使った『追い風(テイルウィンド)』はただの『追い風(テイルウィンド)』ではない。

 凄まじく練度を上げた究極の『追い風(テイルウィンド)』だ。彼女の軽やかな体と凄まじい追い風の力を合わせれば、Sランクの冒険者ですら目で追うのは困難。

 この場の誰もテライのことを目で追えている人は居ない。

 もちろんオーズも例外じゃない。これを目で追えている人が居れば、人外を名乗ってもいいだろう。


 だからオーズは目で見ることは諦め、目を閉じて耳に、音に全神経を集中させる。


 これほどの速度を出していれば風を切る音ははっきりと聞こえる。それがどのタイミングで自分へ向かって来るか、見極めるのみ。

 だが、そんなこと出来る人はそうそう居ない。ましてや、それを確実に成功させることが出来ると自信を持てる人はさらに少なくなる。

 オーズには自信があった。テライがどれだけの速度を出そうとも確実に対応させることが出来る自信が、オーズにはあった。


「『暴風蹴り(ハリケーンショット)』」


「『守護(プロテクション)』かけ五」


「え、うそぉっ!」


 テライが勢いそのままにオーズへ『暴風蹴り(ハリケーンショット)』を放つと、なんとその場所に蹴りが飛んでくることが分かっていたかのようにオーズは『守護(プロテクション)』を展開。

 このスピードに反応して一枚展開するだけでもすごいというのに、それを五枚も展開。一枚だけでは防ぎきれなかったであろうテライの『暴風蹴り(プロテクション)』を完全に受け止めて見せたのだ。


 決め打ちにもほどがある魔法の使い方。


 オーズには見えていた。テライがどんな動きをしてどこに攻撃を仕掛けてくるのか。

 その全てがオーズには手に取るように分かった。


 ――切り札(カード)『先見の明』――

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