個別に
二人がキッチンに消えてから、しばらくは居心地悪そうにしていた皆だったが、順にキッチンへと呼ばれて行くうちに、気持ちもほぐれて来て雑談をしながら、終わるのを待っていた。
あゆみが入って行った時には、佳純はあゆみを労ってくれた。
「やったね!あゆみちゃん。霊媒確定だよ?私から霊媒師達には、共有者が紛れているのは教えるつもりだから安心して。まあ、誰がそうなのかは向こうからはわからないけど、霊媒精査が必要になって来たら話すことにするよ。」
あゆみは、頷いた。
「でも、明日には言わなきゃじゃない?だって、結果わからないよ。違う結果出したら、私が怪しいってなってどのみちCOしなきゃならなくなっちゃう。」
佳純は、胸を張った。
「大丈夫。そこは先に結果を聞いておいて合わせるようにするから。一斉出しはしないようにするとか。だから大丈夫。安心して。ここぞって時に出さないと。」
あゆみは、頷いた。
「それで、役職は居た?」
それには、佳純は頷く。
「思ってた形じゃなかったけどね。またゆっくり話すよ。今はここまでにしよう。」
知っときたかったけどなあ。
あゆみは思ったが、ここで話し込むのもおかしい。
なので、すんなりとそこを出て、次の伊緒を呼んでキッチンへと向かわせた。
椅子に座ると、元気が言った。
「何を聞かれたの?ホントに霊媒師かって?」
あゆみは、苦笑した。
「そんな責めるようなことは言われないよ。霊媒CO3人だもんね。確かに探ってたかもしれないけど、佳純ちゃんはそんなキツい性格じゃないから。」
元気は、あからさまに肩を落とした。
「そうかな。だって、佳純さんってハキハキしてて怖い。オレは真霊媒だけど、責められたらすみませんとか言ってしまいそう。」
永嗣が、笑った。
「おいおい、しっかりしろよ。そんなあからさまに人外ですって言ってるようなもんだぞ?」
元気は、顔を赤くした。
「違うって!ホントに真霊媒なの!」
知ってる。
あゆみは思って、苦笑した。
すると、伊緒が出て来て、永嗣が立ち上がった。
「お、オレだ。じゃあ行って来る。」
永嗣は、キッチンへ向かう。
元気は、ドキドキしているようで、それを不安げに見送った。
そんなこんなで、どんどんと中へ呼ばれて行って、そして最後の拓郎が出て来る時に、佳純も共に出て来たのだった。
そこまで、一時間半経過していた。
トイレはリビング脇にあるので、皆自由に行っていたので問題なかった。
佳純は、ため息をついた。
「…結論から言うわ。まず、この村には狩人が3人居た。」
え、とあゆみは口を押さえた。
つまり、人外は狩人に出たのか。
明生が、顔をしかめる。
「狩人が3人?だったら狩人からか。」
しかし、佳純は続けた。
「最後まで聞いて。霊媒師がもう一人居たの。」と、尚斗を見た。「尚斗さんも霊媒師だった。」
え…?
あゆみは、口を押さえた。
ということは、霊媒師は確定していない。
共有者が混じっていることは、この順番なら元気には言ってしまっているはずだ。
ということは、元気が人外だったら、狼にバレてしまうのでは…。
しかし、佳純はしばらく黙って皆が理解するのを待ってから、続けた。
「…だから、狩人の三分の二に賭けるか、霊媒師の二分の一に賭けるか、どちらにしろ役職から吊った方が良さそう。これだけ出ちゃうと、ローラーしきることはできないわ。縄が足りない。人外が出過ぎてるのよ。とりあえず、皆の意見を聞きたい。狩人か霊媒師、今夜はどちらから行くのか。」
困ったことになった…!
あゆみは、黙ってどうするべきなのか考えていた。
普通に考えて、霊媒には共有者が混じっているんだと言った方がいいだろう。
言ったところで、誰がそうなのかまだわからないからだ。
佳純はまだ明かすつもりはないようで、霊媒師は二分の一だと言った。
だが、実際は人外に当たる確率は三分の一だった。
明生が、言った。
「…まあ、普通に考えたら真が二人居るから間違えても最悪なんとかなる霊媒からかと思うところだが、狩人の方が人外に当たる確率が高い。とりあえず一人吊って、二人にして相互護衛させるのがいいように思うな。明日になれば、占い師の結果も落ちてまた見通しも立って来るだろうし。」
しかし、尚斗が言った。
「オレが出た意味がなくなるじゃないか。オレは、占い師が出ているから、今夜は潜伏して様子を見ようと思ってた。グレーに残っても生き残れる自信もあったし。でも、3人も出たらオレ目線、人外が二人も居るのにヤバいと思ったんだ。このままグレー吊りになったら、騙ってる人外が生き残ることになるなって。だから思いきって出たのに、無駄になる。真狩人に当たったらどうするんだよ?そもそも、狩人を全員公表したら今夜襲撃されないか?狩人には守ってもらわなきゃならないんだからな。」
尚斗から見たらそうなるだろう。
安治が言った。
「霊媒はローラーされるもんだと思ってたから、オレは別に構わないが、オレからしたら後から出た尚斗は怪しく見えてるぞ。その理由なら、オレ達3人が出た時にお前目線で人外が二人居たのが見えたんだから、そこで出るべきだっただろう。個別に聞かれて出るなんて、グレーを詰められたらヤバいと焦った人外にしか見えない。狩人もそうだ。占い師に2人外出てるけど、グレー詰めと聞いてヤバいと思った人外が、無理やりCOしたようにしか見えない。狼からは狐か狂人か真か分かってないだろうし、あちこち混乱しているように感じるな。」
言われてみたらそうなのだ。
後から出た人達は、グレー詰めされるのを恐れて出たとしか思えない。
狩人は中には真も居るだろうが…。
あゆみは、あれ、と言った。
「…そういえば、猫又は?騙りはなかったの?」
佳純は、それに顔をしかめて頷いた。
「そうなのよ。おかしいでしょう?噛まれない吊られない代名詞なのに、その猫又ではなく狩人にみんな出たわけ。狐はないと思う、何しろ噛まれても死なないし、狼に告発されてバレちゃうしね。ということは、霊媒師に狐も出てるのかな。役職に出たらとりあえず占われることはないもんね。」
カイが言う。
「猫又は複数出たら吊ろうとなって、次の日真か偽か透けるじゃないか。だからだと思うよ。だって、仮に猫又が複数だったら、僕は絶対初日の今日吊る事を提案したよ。だって、縄の余裕があるからね。この村は偶数進行だから、まだ初日なら間違えて誰か道連れになっても縄が減らないんだ。狼も狐も、そこのところが分かってるんじゃないかな。まあ、とはいえ呪殺のためにこのまま偶数進行で行きたいけどね。縄が一番大切だからさ。奇数になったら、呪殺で縄が減っちゃうんだよ。」
そうなのか。
あゆみは、感心して聞いていた。
縄の数が減らないのだから、猫又が複数出たら吊り得なのだ。
少なくとも、狼も狐も、人狼ゲームが少しは分かっている人なのだろう。
これは強敵だ、とあゆみが顔をしかめると、愛里が言った。
「あゆみちゃん?どうしたの?」
あゆみは、顔を上げた。
全部顔に出るので、怪しまれたらしい。
「いえ、カイ君の話を聞いて初めてそうなんだって思ったから。人外もそれが分かっているなら、私じゃ太刀打ちできないレベルの高い人外なんだなって、なんか強敵だなって思っただけ。」
佳純は、頷いた。
「こういうのって慣れないとなかなか思い至らないわよね。私も言われて気付いたぐらい。」と、皆を見回した。「とにかく、霊媒師から吊るのか、狩人から吊るのか。一人一人意見を聞かせて欲しい。一番の、明生さんからお願いします。」
明生は、頷いて口を開いた。