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最終日の投票

投票30分前に、尚斗と安治を呼びに行き、4人はリビングに集まった。

あゆみがどうしてももう一度、二人の弁明を聞いておきたいと言ったからだ。

明生は尚斗で固まっているようだったが、まだあゆみは信じたかった。

もしかしたら、尚斗が何か白い要素を出してくれるかもしれないのだ。

あゆみには、公一が狼だったと、どうしても思えないのだ。

明生が、言った。

「…まだ意見がまとまらなくてな。」明生は、ため息をついた。「あゆみさんは尚斗真を切り切れていないし、オレは尚斗は怪しいと思っている。二人の最終的な意見を聞いておきたい。」

安治は、言った。

「ここまで来たら、もう君達に任せるしかないと思っている。ここまでやって来たことが全てだし、オレが尚斗を虐めたのは確かだ。みんなは色が見えてるのかと疑ってたが、オレからしたら議論の時に猫又が混じっている、と聞いた時、誰かがだったら狼目線、尚斗は猫又ではないから襲撃位置だと言った。それを聞いた尚斗が大袈裟に怯える顔をしたから、いけすかない奴だしもっと怯えさせてやろう、とあんなことをした。別に色がどうの、考えてもいなかった。あれは性格が悪かったと思ってる。オレだって、いつ襲撃されるのかとストレスの多い立場だったんだ。あんなことでストレス解消してたのは、確かに嫌な奴だよ。分かってる。」

みんな、追い詰められていたのは確かだ。

尚斗が、言った。

「オレは、真だから噛まれるんだと本気で怖かったんだ。カイがそれで襲撃されるなんて思ってなかった。何しろ、みんなの前ではカイ守りって言ってたんだから、オレ守りにしても噛まれないと思ってたんだ。護衛成功が出たらって思うじゃないか。悪気はなかったんだよ。それで怪しまれることになって…後悔してる。でも、考えてくれよ。オレは確定狼の伊緒さんに、初日から黒だって言われ続けてたんだぞ?仲間なのに、初日から切るなんてあると思うか?オレは真霊媒なんだよ。」

あゆみは、じっと聞いていた。

安治が、言った。

「…まあ、もう二人に任せる。ここまで、オレなりに考えてやって来たし、ダメなら仕方ない。オレ投票になっても、恨みはしないさ。オレからしたら、よく尚斗が初日から疑われながらも生き残ったなと感心してるぐらいだ。狼なのに後から出て…まあ、それは狼目線じゃ、全員グレーに居たわけだしヤバいわな。それを、怪しまれるのを承知で後から出たのは肝っ玉がすわってると思うよ。」

尚斗は、それを聞いて驚いた顔をした。

だが、すぐに言い返した。

「だからオレは、真だから後からでも出たんだよ。狼だったら吊られるのが怖くて出られなかった。」

…でも、追放されたら本当に死ぬのが分かったのは、恵令奈さんを吊ってからよね。

あゆみは、思って聞いていた。

モニターが、パッとついた。

『…最終日です。投票先は決まりましたか?投票、10分前です。』

いつもと違うことを言った。

あゆみは、腕輪を開いて構えた。


明生が、言った。

「…とにかく、今のを聞いてあゆみさんがどう思ったかだな。オレは決めてる。ちなみに票が二回割れたらランダムだ。考えてやって来たことをしっかり考えて投票しよう。」

あゆみは、黙って頷く。

明生は、きっと何も言わないところを見ると、今の意見を聞いても尚斗なのだろう。

あゆみも、今の意見を聞いて、決めた。

やっぱり、行動が全てなのだ。

『投票してください。』

声が、言った。

あゆみは、覚悟を決めて番号を打ち込んだ。


1明生→15

9あゆみ→15

15尚斗→17

17安治→15


「え…」尚斗が、立ち上がった。「オレ?!なんで…あゆみさん、なんでだよ!」

あゆみは、じっと黙っている。

モニターの声が、言った。

『No.15は、追放されます。』

尚斗は、叫んだ。

「なんでなんだよ!オレは上手くやってた!なのになんで…!」

そこまで叫んで、尚斗は崩れるように絨毯の上に倒れた。

シン、と静まり返っている。

「…どうなった?もうこれで勝敗はついたよな?それとも、安治さんが狼で、夜時間か。」

安治は、言った。

「…先に聞きたい。あゆみさんは、どうして尚斗に入れたんだ?最後まで悩んでたんだろう。」

あゆみは、間違っていたのかも、と不安になりながら答えた。

「…尚斗さんが、永嗣さんがカイ君守りだって、狼が思ってるから噛まれないと思った、と言ったからよ。つまり、狼は護衛先が変わっていることを知らなかったはずなの。なのにカイ君は噛まれた。もうあの時にカイ君を噛むしかなかったし、でないと明生さんが言うようにもう一個結果が落ちていたわ。狼はそれを阻止したかったんだと思った。尚斗さんが、他の狼に託して自分が吊られてもって、あんなことをしたんじゃないかって思ったのよ。初日から、味方の狼に切らせていたならやるだろうって。」

安治は、フッと笑うと、頷いた。

「…オレは真霊媒師だ。」え、と明生とあゆみが安治を見る。安治は声を立てて笑った。「オレが真なんだよ!勝った!村人はみんな帰って来るぞ!」

あゆみが呆然としていると、それに答えるように、モニターの声が言った。

『この村に狼は居なくなりました。村人陣営の勝利です。』

尚斗さんが狼だったんだ…。

あゆみは、力が抜けてへなへなとソファに身を預けた。

勝った…。

まだ信じられなかった。

安治が真で、つまりは人狼は愛里、伊緒、拓郎、公一、そして尚斗だったのだ。

あゆみが呆けていると、おかしな形で床に倒れていた、尚斗がううん、と唸って起き上がった。

『…え、尚斗さん?』

あゆみが思わず驚いて声を上げると、明生と安治もぎょっとしたような顔をした。

『え、尚斗?どういうことだ、死んだんじゃないのか。』

尚斗は、顔をしかめて足をさすりながら、言った。

「あれ。オレ、まだ追放じゃないのか?投票し直し?」

明生は、眉を寄せて答えた。

「いや、お前、今死んでた。いや、もしかしたら失神してただけか?」

尚斗は、驚いた顔をした。

「え、失神?なんかあゆみさんに話してて…気が付いたら床に居た。殴られたのかと思った。」

安治が、言った。

「もう追放されるのが分かってるのにちょっと騒いだぐらいで殴るかよ。間違いなくお前は今、勝手に倒れた。というか、ゲームは終わったってさ。ほら、見ろ。」

言われて、尚斗と共にあゆみもモニターを見上げると、そこには村人勝利と書かれてあった。

尚斗は、床に座り込んだまま、息をついた。

「はー。だったら安治さんを黒塗りするためにあゆみさんを噛んだのにって思った。明生さんは説得できそうだったし、あゆみさんには生きててもらった方が良いと思っちゃって。噛みナシ選択は悪手だったかなあ。」

昭夫は、苦笑した。

「どうだろうな。あゆみさんを残したから、迷ったのは確かだ。だが、だからこそ二人で考えることができた。もうほぼ尚斗だろうって思っていたが、それでもあゆみさんは僅かに迷っていたんだ。オレもそんなに言うならってちょっと迷ったが、決定打は二日目の投票。愛里さんと杏奈さんの択の時、安治さんの黒は全員確定黒の愛里さんに入れていなかったんだ。安治さんは愛里さんに入れていてその一票で愛里さんは吊られることになっていた。オレはそれで確定だと思ったが、もしかしたら事故かと、あゆみさんは迷ってた。」

尚斗は、あゆみを見た。

「じゃあ、なんで最後はオレ?ランダムになるから?」

あゆみは、首を振った。

「それもあるけど、カイ君噛みの時よ。あなたは永嗣さんがカイ君守りだと狼は思っているだろうから噛まれないと思ったって言ったけど、ホントにその通りなの。あの日、狼はカイ君守りを外されているのを知らないはずだったわ。もちろん永嗣さんが狼だったらこの限りじゃないけど、永嗣さんは白だった。つまり、あなたが狼だったからカイ君を噛めたと思った。明生さんと話し合ってそうじゃないかと思ってはいたけど、あなたの口からそれを聞いてやっぱりそうだって思ったの。何より、安治さんは結果が全てだとあまり言い訳しなかったし、真だったらそうだよねって思った。真って何も見えないし、狼が作った盤面に踊らされるしかないんだもの。だから、尚斗さんに入れたの。でも、最後まで自信はなかったけど。」

尚斗は、それを聞いてがっくりと肩を落とした。

「…そうなんだ。そうだよな…オレがラストウルフになるなんて、思っても居なかったからさ…。伊緒さんが居なくなった時、まずい、と思った。本当は初日から怪しくなって吊られて伊緒さんを白くしようと思ってたんだ。なのに…拓郎さんも公一も、お前に託すとか言うし…。こうなって、謝るしかない。謝れたらだけど。」と、モニターを見上げた。「オレ、どうなるんだ?なんで目が覚めたんだろう。」

意外なことにモニターが、沈黙を破って答えた。

『お疲れ様でした。ゲームが終了致しましたので、ただいま他の被験者の皆様も、そちらへ戻る準備を進めています。明日の朝には全員が揃う予定です。今夜からは、時間の制限なくご自由に行動して頂けます。お部屋の施錠は、各自行うようにしてください。それでは報酬の件がございますので、また明日の朝こちらにお集まりください。この度は、社会実験にご参加頂きまして、ありがとうございます。』

安治が、慌てて言った。

「え、待ってくれ、他の人たちってのは…、」

しかし、モニターはブッツリ切れて、画面は真っ暗になった。

明生が、ため息をついた。

「…終わったんだよ。とにかく明日の朝を待とう。説明があるだろう。他の奴らから、説明も聞けるかもしれないしな。」

あゆみ、安治、尚斗は、仕方なく頷いた。

もしかしたら、全員無事…?

あゆみは、淡い期待を持って部屋へと帰って行ったのだった。

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