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夜会話と次の日の朝

今回は全員で動いて片付けたので、すぐにゴミ処理も洗い物も終わり、それぞれがペットボトル飲料や、明日の朝のパンなどを手にして、部屋へと向かった。

佳純とは役職の話をすることはなかったが、今夜は10時から11時までの時間、共有者同士は話ができるはずなのだ。

あゆみは、その時間をドキドキしながら待った。

部屋へと戻ったのは、10時にはまだ少しある時間だったので、急いでお風呂を済ませておこうとシャワーを浴びて髪を乾かしていると、いきなりガツン、という大きな音が扉から響いて来た。

「なに?!」

びっくりしたあゆみが扉の方へと飛び出して行くと、特に変わった様子はない。

ふと思い立って扉のノブを回して押してみると、内鍵が開いた状態にも関わらず、扉は全く開かなかった。

…別の鍵が設置されてて、リモートで操作されるんだ。

あゆみは、それを知って少し、怖くなった。

ここへ閉じ込めようと思ったら、いくらでも閉じ込められるということだからだ。

だが、大体こんな場所のこんなホテルに閉じ込められているからと、建物から脱出したところで島から逃げることなど到底できない。

ここに居れば何とかなるのだし、怖がっても仕方がないと、ため息をついてまた、ドライヤーを手にしようとした時、いきなりに腕輪が、ピピピと大きな音を立てた。

「え…?!」

急いでカバーを開くと、液晶画面には着信18と表示されていた。

…佳純さんだ…!!

急いでエンターキーを押すと、あゆみは言った。

「もしもし?」

すると、相手が言った。

『あゆみちゃん?佳純よ。共有者同士の作戦を練っておかなきゃと思って。今いい?』

あゆみは、ドライヤーを放り出して、急いでベッドの方へと走りながら、頷いた。

「ええ。大丈夫。明生さんが進行役とか言ってたから、どっちか出なきゃなんだろうって思って、それを話し合っておかないとと思ってたの。でも、私高校生の時に人狼ゲームちょっとやっただけで、最近は全くしてないから自信がなくてね。」

佳純は、答えた。

『うん、そうだよね。私も同じだけど、でも結構嵌まったんだよ。だから、ちょっとはできるつもり。だったら、私が出ようか?あゆみさんには潜伏してもらって。でも、潜伏してたらグレー吊りになった時、怪しまれたら困るよ。しっかり意見を落として行ける方が、潜伏する方がいいかも。』

あゆみは、うーんと唸った。

「だよね。でも、怪しまれても吊られなければ共有者トラップになれそうだけど…そうだ、一回上手く行った作戦があって。占い師は狐も入ってるレギュだから確定は無理なんだけど、霊媒師に共有の相方が出るって手もあるんだよね。霊媒師が二人居るでしょ?そこに、もう一人出たらいいの。人狼からは、狂人が出てるのか分からないじゃない。だから、騙りを阻止できるんだ。進行役の方の共有者が、霊媒ローラーはしないって決めてね。襲撃されても、共有者目線では真霊媒師が分かってるから結果が確定するんだよ。そのゲームだけ、すごい上手く行ったなーって思ってたから、覚えてるんだ。その、霊媒に出る方を私がするよ。噛まれちゃうかもだけどね。」

佳純の声は、明るくなった。

『いいね!それで行こう!襲撃されるのはお互い様だよ、どっちにしろ露出したらそうなるんだし。人外を騙せるだけ騙して行こうよ。じゃ、明日は私が進行役で出て、役職COを促すから、その時あゆみちゃんが霊媒COってことで。』

あゆみは、見えないのにまた頷いた。

「うん!上手く行くといいねえ。でも、追放されたらどこに連れて行かれるのかな。狭い所に雑魚寝とかだったら嫌だなあ。せっかく豪華な部屋に泊まれるのに。」

佳純は、笑った。

『そうだよね。でも、勝ったら1000万円だよ?すごくない?村人って確か、12人だから、みんなで分けたら…83万ぐらい?それでもすごいよ。狐に勝たせたら500万円ずつとか嫉妬するー。頑張らなきゃ。』

あゆみは、頷いた。

「うん。頑張ろう。私も留学したいから、頑張るんだー。」

佳純は、言った。

『そうなの?あゆみちゃんのバイトの理由は、それだったんだー。私はね…来年、ちょっと学費がヤバイかもって思って。お父さんの会社がマジでヤバイの。だから、学費を出せないかもしれないって言われて、奨学金をもらおうにも、途中からだから手続き全く分からなくて。何より、誰に相談したらいいのかも分からないから、とにかくお金を準備したらいいんだって思って…ここへ来たの。あと一年なのに、酷いよね。頑張るしかないなって。』

みんな大変なんだなあ。

あゆみは、しんみりと言った。

「そうかあ。絶対勝とうね!それから少しでも長く生きられるように頑張ろう!一日10万円だから!」

佳純の声は、笑ったようだった。

『だね。頑張ろう!みんないい人ばっかりだから、明日からも楽しみだー。じゃあ、おやすみ、あゆみちゃん。』

あゆみは、頷いた。

「うん、おやすみ、佳純ちゃん。」

そうして、あゆみは通話を切った。

思った通り、佳純はとてもハキハキと頼りになりそうな、それでいて親しみが持てる人だった。

なんだか、明日からのゲームがとても楽しみに思えて来て、あゆみは一人微笑むと、また生乾きの髪を乾かすために、洗面所へと向かったのだった。


朝、あゆみは何かが倒れたような、ガツンという音で目が覚めた。

「きゃ!」

思わず飛び起きて、音の方向を見る。

それは、扉の方だった。

…もしかして、鍵が開いたのかな…?

あゆみは、机の上の金時計を見た。

すると、思った通り金時計は六時を指していて、今の音は閂が勢い良く抜けた音なんだと悟った。

…なんだ、じゃあまだ六時だ。

あゆみは、ベッドに転がってまた寝ようかと思ったが、良く考えたらゲームのことがある。

自分は共有者だし、ゆっくりしていては会議に参加するのが遅れてしまうかもしれない。

外からは何の音もしないし、みんなまだ寝ているようだったが、幸い、あゆみは早く寝たので頭はスッキリしていたし、もう起きて下へ降りて行くことにした。


トイレに行って顔を洗っていると、ピンポーンとチャイムらしい音が聴こえた。

…チャイム?

「はい。」

あゆみは答えたが、外からは何の声も聴こえない。

すると、またチャイムが鳴った。

…聴こえないのかな。

あゆみは、まだ素っぴんなのにと思いながら、扉を開いた。

すると、一気に外の人の話し声のようなものが押し寄せて来て、ビックリした。

「え…!?なに?!」

あゆみが言うと、目の前に立つ明生が言った。

「ああ、良かった。なんか出てこないから、もしかしてルール違反でもして追放されてるのかとみんなで心配してたんだよ。」

そうなの?!

あゆみは、廊下に溢れる人たちに、どぎまぎしながら言い訳のように言った。

「ごめんなさい、起きていたけどまさかみんなが外に出ているなんて思わなくて。全然音がしなかったから、みんな寝てるんだと思って。」

すると、佳純が言った。

「わかるわ。ここ、スッゴく静かだものね。それより、私が共有者なの。」え、とあゆみは驚いた顔をした。佳純は続けた。「みんなには話したところ。8時にリビングに集まって欲しいわ。役職とか出して、話し合いましょう。」

あゆみは、頷く。

昨日霊媒COすると言ったのを忘れていたのだ。

佳純はきちんとやっている。

あゆみも、しっかりしなければと思った。

「分かった。ちゃんと準備しておくね。」

戸惑っているあゆみに、カイが苦笑して言った。

「ルールブック見なかった?ここ、完全防音なんだって。それから、腕輪は完全防水。このままお風呂入るしかないんだよね、外れないし。」

それには、あゆみは頷いた。

「あ、それはどうしても取れないから、私もそのままシャワー浴びたから。ぴったりしててなんか気持ち悪いけど。」

重久が、伸びをした。

「あーあ、まあ、もうちょっと寝る。8時だろ?なんかダルい。」

和美が、後ろから言った。

「だから飲み過ぎちゃダメって言ったのに。部屋にビール持って帰ってたでしょう?見たわよ。」

帰ってからまだ飲んでたのか。

あゆみが呆れた顔をすると、重久はムッとした顔をした。

「うるさいなー。とにかくもう一寝入りする。じゃあな。」

重久は、階段の方へと歩いて行った。

皆が、それに従ってわらわらと解散して行き、あゆみはやっと扉を閉じて、ため息をついたのだった。

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