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その日も暮れて

そのまま、会議を召集することもなく、5人はそれぞれ思い思いに過ごして、夜を待った。

永嗣吊りは決まったが、尚斗と安治の精査がつかない。

このままだと、自分が残されるのだろうか。

それとも、明生が残るのか。

あゆみは、自分が残されることを考えて、明生の部屋に入り浸ってその日を過ごした。

明生は、言った。

「…君が残されたら、尚斗だって言いたかったんだが。」明生は、ため息をついた。「でも、今朝考えを変えるようなことを言っただろう。君でも説得できると思ったら、安治さんが狼でも君を残す可能性があるよな。」

あゆみは、顔をしかめた。

「じゃあ、やっぱり安治さんって言おうか?それを明生さんが咎めてしっかり考えろとか言ってくれたら、分かるんじゃない?絶対に勝ちたいの。ここまで頑張って来たし、吊られて行った人の思いもあるから。狼だってそうだと思うわ。特にグレー吊り切りを推してた、拓郎さんは確定黒だったけど、あれはつまり役職者の狼に後を託したってことでしょ?安治さんが狼だったら、形振り構わず私を噛みそう。尚斗さんだったら、多分あんまり深く考えてなさそうだし、私を残すと思うわ。」

明生は、真剣な顔で頷いた。

「やるだけやってみよう。昨日だってあれだけ頑張ったのに、重久噛みだったから、どうなるかわからないとは思うがもう最終日だしな。思考ロックしてる村人を残すのは安治さん狼ならリスクが高いはずだ。演じてみる価値はある。オレは、じゃあ尚斗偽で君と対立を演じてみるよ。お互い、それでどっちが襲撃されるかで、明日の投票先を決めることにしたらどうだ?狼に決めさせるみたいで不安だが、もうオレ達には決められないからな。」

あゆみは、頷いた。

「だったら、やってみる。でも…よく考えたら今気付いたんだけど、確定黒の拓郎さんと、公一さんは初日からずっと意見が一緒だったわね。それをどう見るかよね。」

明生は、またため息をついた。

「そうなんだよな。素直に仲間だからグレーに潜んで同じ意見を出していたのか、それともどっちかが吊られたり占われたら両方吊られるのを恐れるから、狼だったらそんなことはしないと考えるのか、そこのところだ。」

あゆみは、うーんと考えた。

「…前者だったら、安治さんの結果が正しいわよね。後者だったら、尚斗さんが公一さん白と打ってるから公一さんが村人なのよ。」

明生は、頷く。

「ただ、安治さんは七日目の伊緒さん道吊れが出た朝に言ってたが、恵令奈さん真で狼狼もあり得るんじゃないかって。公一と拓郎さんが両狼ってのが、あからさま過ぎるって。結果的に、公一の結果が安治さん目線黒だったから、覆されたわけだが、そこがな…仮に安治さんが狼だったら、自分が発言した内容に合うように結果を出せば良かったわけだろう。だが、次の日公一に黒。どうしても永嗣さんが吊りたければ、昨日白を出しておけば、まだ2狼だからととりあえず永嗣さんは安定進行で吊られてたし、それからは狩人が居ないんだから好きな所が噛めたんだ。それこそ、君を噛んでも良かっただろう。だから、安治さんが狼だったら、どうも結果がおかしい気もしててな。」

言われてみたらそう。

あゆみは、顔をしかめた。

あの時公一を確白にして、永嗣が狼だと言えば昨日は永嗣吊りで、噛み放題だった。

永嗣が真狩人だったらの話だが。

「…ちょっと待って、そういえば七日目の話になったから言うけど、あの日どのルートで吊って行くか話し合ったわよね。霊媒を吊り切って終わらなければ最後に永嗣さんか、公一さん永嗣さんで最終日霊媒か、公一さん残しで役職吊り切りか。あの時、尚斗さんは確か、公一さんは吊らなくて良いと言ったわね?安治さんはそれを聞いて、公一さんと永嗣さんを吊る方が良いって言った。違った?」

明生は、首を傾げた。

「…そうだったな。まあ、尚斗目線じゃもう、1狼だったし、安治さんを吊って、終わらなければ永嗣さんってことになるんだろうから、そう発言してもおかしくはない。とはいえ、安治さんが真なら、まだ公一が狼だったわけだから、尚斗の意見はどこまでも公一と永嗣さんを庇ってるように聴こえるよな。永嗣さんが狂人なら、どっちでも良いわけだし吊ろうとか吊るまいとかどっちでも発言はできる。何しろカイ噛みの時のことがあるし、余計にそう見えて来るよな。何しろ、あんなことをしたら永嗣さんの真を切られてあの時吊られたかも知れなかったんだ。」

あゆみは、考えた。

尚斗がそう発言したのを聞いて、確か安治は永嗣を吊るべきだと言ったような気がする。

いろいろあって、安治目線では永嗣残しはかなりまずい進行だと思っただろう。

「…わからない。」明生は、頭を抱えた。「どっちもどっちなんだよ。元気が言ってた安治さんの尚斗虐めはおかしい。尚斗が狼だったら意味のない事だしな。とはいえ、尚斗がそれで安易に永嗣さんに自分を守らせようとあんな突飛なことをするなんて、狼目線でも思うものか?ホントに村人なら、マジでヤバい事だぞ。何しろあと一つカイから白結果が落ちていたら、縄はもう1本余裕があったんだ。狼は詰みだったろう。どうしても、カイを噛みたい盤面だった。それこそ永嗣さんが偽で、破綻しようともな。いい言い訳にされてたのかもしれないって、オレは感じてるんだ。安治さんが尚斗を虐めたことと、尚斗が護衛先を偽ったことを比べたら、どう考えても尚斗の方が罪深いよ。普通は、怯えて夜を過ごすしかないもんな。」

あゆみは、言われて渋々頷いた。

罪の度合いから言うと、尚斗の方がかなり深いだろう。

とはいえ、安治目線では公一と拓郎が狼同士で初日からがっつり意見を合わせていて、狩人に居た伊緒は尚斗を初日から吊ろうと叩いていた…。

「…伊緒ちゃんは、初日から尚斗さん吊りを推していたけど。あれは、どっちが吊られても片方が白くなるっていう、身内切りなの?あんなに吊ろうとしてたのに?」

明生は、苦笑した。

「だからわからない。公一と拓郎さんの両狼はおかしいし、噛まれる恐怖で護衛を変えるってこともおかしい。だから、精査がつかない。ただ、オレの中では今も言ったように、君が生きてることもあって尚斗の方が若干怪しい。君は、それでもやっぱり安治さんか?」

あゆみは、迷った。

こうなったら、もう今夜は自分を襲撃して欲しかった。

明日、間違えずに狼を吊れる自信が全くなかったのだ。

あゆみは、言った。

「…結果、尚斗さん目線じゃ、愛里ちゃん、伊緒ちゃん、杏奈ちゃん、拓郎さん、安治さんが狼ってことになるんでしょう?仮に恵令奈さん真だったら、永嗣さんが狼で安治さん狂人もありうるわけよね。安治さん目線じゃ、愛里ちゃん、伊緒ちゃん、拓郎さん、公一さん、尚斗さんか永嗣さん。違うのって、杏奈ちゃんだわ。杏奈ちゃんはどう思う?白だったか、黒だったか。」

明生は、思い出すように遠い目をした。

「…いや、言われてみたら。杏奈さんは昌平吊りの日にグレーを吊りきることに反対した唯一の人だったよな。拓郎さんと公一がいち早く仕方ないと吊り切りに同意していて…昌平は反対だが仕方ないって言ってた。だから、杏奈さんは狼というより狐じゃないかって話になってたよな。狼だったら一人だけ目立つのに、あんな発言は危ないしね。言われてみたら、拓郎さんと公一のラインはこの頃からあったよな。」

あゆみは、考えながら答えた。

「もちろん、狼でも違う意見を出しておかないとって思った可能性はあるけど。つまり、杏奈ちゃんが狼なのか、公一さんが狼なのかってことなのよ。杏奈ちゃんが狼に見えた?愛里ちゃんが狼だったから、意見を一緒にしてた二人は確かに怪しいかもだけど、それは拓郎さんと公一さんだって同じよね。やっぱり、判断がつかないんだわ。公一さんが狼だったら、私にわざとあんな風に遺言を残して、最終日尚斗さんを選ばせないようにした可能性はあるわね。」

明生は、頷いた。

「そうだな。やっぱり思考ロックするのは危ない。とにかく、今決めた通りに演じてみよう。噛まれる位置で精査だ。それしか方法はないよ。」

あゆみは頷いたが、狼だって馬鹿じゃない。

ここまで上手くやって生き残ったのに、噛みで投票先が分かるようにするだろうか。

悩みは尽きないが、無情にも時は刻々と過ぎて行き、夜になって行ったのだった。

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