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狼位置

「あの」あゆみは、言った。皆があゆみを見る。あゆみは続けた。「私は狩人には、必ず真が残っていると思うの。霊媒にも狼が出たわけだし、そうなるといくら5人居ても狼だって何人も役職に露出したくないでしょう。それに、初日に霊媒3COになった時、きっと狂人目線、狼が出たと思ったと思うの。実際は猫又の私が混じっていたんだけどね。だから、何かしなきゃって狂人は狩人に出たと思っているわ。だから、狩人は真、狂、狼だったと思ってて、伊緒ちゃんと永嗣さんの強い対立を見ても、狼と真が残っていると思う。ここは、だから霊媒両目線で狼が残っているはずのグレーを吊り切って、そこから役職精査を始めたら良いんじゃないかな。狩人の護衛成功が出たら、縄が増える盤面よ。まだ真が居ることも、それでハッキリ分かるし。このまま、今日はグレー吊りにしましょう。半PPではないんでしょ?迷うと良くないわ。」

景清が、それに強く頷いた。

「そうだな。昨日の杏奈さんがどっちだったかわからないが、とにかくグレーを吊りきるしかない。その後狩人精査だが…」と、伊緒を見た。「オレは君を吊るつもりだ。」

伊緒は、え、と目を丸くした。

「どうして私?!昨日元気さんを守らなかったから?!永嗣さんがカイ君を守らなかった方がおかしいんじゃない!」

明生が、言った。

「待て、景清、まだわからないじゃないか。確かにオレ達の言うことを聞いてくれなかったから元気は噛まれたが、永嗣さんだって尚斗に唆されたとはいえ護衛をしてなかった前科がある。そこはとにかく一度精査しなきゃ。」

だが、景清は確信めいた様子で言った。

「そもそもなんで昨日元気を噛めた?伊緒さんは元気守りと聞いて前日永嗣さんの指定が元気だったんだと思ったと言っていたが、違ったかもしれないだろう。伊緒さんが前日オレを指定されていたのは皆分かっていただろうが、その日誰を守るのか、狼からは見えてない。なのに、狼は元気を噛んだ。なぜか?伊緒さんが狼だからじゃないのか。元気を守れと言われて、前日永嗣さんが元気を守ったと分かったと言ったな?分かったから、わざと元気守りを拒否して安治さん守りを強く推して、元気を噛んだとしか思えない。仮に永嗣さんが狼だったら、前日自分に指定されていたから元気噛みは伊緒さんの護衛成功が出る可能性が高くてできなかったはずだ。そもそも永嗣さんは、守り先を探って来たり、拒否したりしない。だからオレは、伊緒さんを必ず吊ると言ってるんだ。」

そうか、元気さん噛み。

あゆみは、目が開かれるようだった。

永嗣が狼なら、前日自分に振り分けられた元気が、次の夜には伊緒の指定になるのは想像できたはずだ。

それならば、霊媒噛みは怖くてできなかっただろう。

縄が増えて、狩人は吊りきられるからだ。

だが、狼はあっさり元気を噛んだ。

そこに護衛が入っていないのを、知っていたように。

皆が疑惑の目を伊緒に向けると、伊緒は言った。

「そんなの!私は知らないわよ、狼が噛んだだけなのに!確かに指定に逆らったのは悪かったと思ってる。でも、私は安治さんの方が噛まれると思ったの!どうして永嗣さんの時はそこまで怪しまなかったのに、私だけ偽だって断定するの?!永嗣さんの方が、明らかに尚斗さんと繋がってておかしいんじゃない!私は永嗣さんとは違ってちゃんと安治さんを守るって言ったわ!私は間違ってない!」

あゆみは、迷った。

伊緒目線、尚斗が怪しいと初日から思考ロックしていて、そこにカイ襲撃の朝に対抗の永嗣まで繋がって見えて、疑惑が確信に変わったのだろう。

だからこそ、共有者との意見の違いは出て来て、つい逆らったのだとも考えられる。

そこに、たまたま狼の襲撃がハマってしまっただけかもしれないのだ。

あゆみは、言った。

「…わからないわ。景清さん、決めてしまうのは早いかもしれないわよ。たまたま狼が賭けに勝っただけかもしれないんだもの。結論を出すのは早いわ。」

だが、景清は頑なだった。

「オレは、伊緒さんを吊る。そう決めてる。皆の意見は、グレーを吊り切ってから聞くが、オレの気持ちは変わらないよ。縄が増えたら必ず吊りきりだが、増えなくても伊緒さん一択。オレの結論だ。」

今度は景清が思考ロックしている。

あゆみは、ため息をついた。


グレーは吊りきることが決まって居るので、誰を吊ろうということはそれほど気にならなかった。

だが、問題は明後日からの狩人と霊媒師の精査だ。

グレーに2縄使うことが確定しているので、必ず偽の方を見極めて間違いなく吊らねばならない。

だが、それがとても難しかった。

狼は結局景清を襲撃せず、一番噛みたかっただろう元気を噛んだ。

そこは、元気が万が一にも偽であったらと話題に出ていたところだったので、助かったと言えばそうだ。

だが、色が確定しなくなった。

もしかしたら残せたかもしれないグレーにも縄を使い切るしかなくなり、これまでも全く分かっていない、狩人と霊媒師を見極めることになってしまったからだ。

伊緒は、確かに怪しい。

だが、一生懸命さが裏目に出ている真狩人なのかも知れなかった。

何より、初日からこちらを元気付けてしっかりしろと鼓舞してくれていた、伊緒の記憶があるあゆみには、景清のようにあっさり決め打つことができなかった。

永嗣も、確かに尚斗守りの日はかなり怪しく映った。

だが、尚斗自身が護衛先を変えたことによる問題で、今回の伊緒の件と併せて決定的でもなかった。

何よりそれから、永嗣は落ち着いていて伊緒より余程真狩人にも見えてしまう。

そんなわけで、あゆみは迷っていた。

霊媒師も、尚斗は後から出たことも手伝って初日から怪しかった。

しかも、カイの護衛をわざわざ自分に向けるという、やってはならないことをしていて、安治に比べて目立って怪しかった。

だが、狼だったらそんなことをするだろうか。

何より、安治が尚斗を怯えさせるようなことを執拗に吹き込んでいたことは、真霊媒師だった元気からの証言でも分かっていた。

真霊媒師なら、そんなことをする必要があっただろうか。

そもそも、人外で、狼の尚斗が襲撃を怖がると思っている時点でおかしいのだ。

そんなこんなで、安治も白いとは言えなかった。

なので役職はどちらも、真だとか偽だとか、決定的なことがないのだ。

とはいえ、どこかに隙があるはずだった。

景清の、頑なな様子も気に掛かる。

あれは、やはり伊緒が狼で、佳純を噛んだと思って許せず言っている事なのだろうか。

昨日も、明生が仮にあゆみから情報が欲しければ、伊緒が佳純を噛む利点があると言っていたのを聞いて、景清は厳しい顔をしていた。

そう思っただけで確定ではないのに、感情で見方が濁っているなら、そこは正しておかなければならない。

あゆみは、景清に話をしておこう、と、二階の景清の部屋へ行くことにした。


景清の部屋には、誰も居なかった。

…リビングかな。

あゆみは、景清を探してリビングへと降りて行った。

リビングには、景清と明生と重久が居た。

重久は、会議の時とはうって変わってしっかりした顔つきをしており、しかしそれを困ったように歪めている。

明生が、振り返ってあゆみに気付いて、言った。

「狩人のことなんだよ。景清が、どうしても伊緒さんだって。」

やっぱり思考ロックしているのだ。

あゆみは、言った。

「それを気にしていたの。とにかく、落ち着いて精査しなきゃならないわ。役職は、みんなそれぞれ怪しい所があって、誰が真だと決め打つ材料がないし。永嗣さんだって、確かに伊緒ちゃんが言うように尚斗さんの話をあっさり信じて護衛先を変えてるのが怪しいでしょう。まだグレー吊りで時間は稼げるし、ゆっくり考えてもいいと思う。」

景清は、しかし言った。

「オレは決めてる。村が違うというのなら、みんなは永嗣さんに入れたらいいじゃないか。オレは、絶対に伊緒さんに入れる。」

重久が、言った。

「気持ちは分かるよ。昨日の夜のことを明生から聞いた。いくら言っても安治さん守りだって聞かなかったらしいじゃないか。オレでもそう思うと思う。でもな、村の勝利が掛かってる。ここは冷静に、よくよく考えてから決めた方がいい。落ち着けって。」

そこまで話して、ハッと振り返ると、開けたままだったリビングの扉から、バツが悪そうな顔をした公一と拓郎、それに安治が顔を覗かせた。

「ええっと…キッチンに行きたいんだが。入っていいか?」

ここには、確白しか居ない。

3人は、食べ物か飲み物を探しに来て、確白同士が言い合っているのに遭遇して困っていたのだろう。

明生が、言った。

「ああ…すまないな。良いよ、通ってくれ。ちょっと意見のすり合わせしてるだけで。」

3人は頷いて、さっさとキッチンの扉へと走る。

盗み聞きしたような気持ちになっているのだろうと思われた。

…あの3人も、信じられないしなあ。

あゆみは、ため息をついていた。

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