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とはいえ

あゆみはああは言ったものの、もし狩人に狂人と狼が居て、お互いに対立を演じているとしたらまずいな、も思っていた。

狼と狂人が何らかの形で繋がっていたなら、恐らく話し合って表面上は対立し、お互いの守り先は噛まない方向で進めているかもしれない。

そうした方が、最終日勝てる見込みがあるからだ。

霊媒師には、必ず真が2人居て、人外は一人だけだと分かっているが、狩人は初日に吊った恵令奈が偽で、必ず真が残っている思考で進めてしまっている。

が、分からなかった。

もし、縄に余裕さえあれば、狩人を吊りきることも可能だった。

それを考えて自室で籠っていると、チャイムが鳴った。

「はい。」

思わず答えたが、ここは声が聞こえない。

あゆみは、急いで扉へ駆け寄ると、それを開いた。

すると、そこには伊緒と杏奈が立っていた。

「あゆみちゃん。ご飯食べた?」

伊緒が言う。

いつもと変わらない様子だったが、その伊緒が人外かもしれないと思うとあゆみは緊張した。

なので、硬い表情で答えた。

「うん。佳純ちゃんと。」

伊緒は、あゆみの様子に気付かないのか、微笑んで頷いた。

「次の会議まで話そうよ。杏奈ちゃんとも話してたんだ…グレーって言っても、どこに投票しようかって。」

断ることもできた。

だが、昨日まで心の支えにして来た二人なのに、いきなり突き放すことはあゆみにはできなかった。

なので、頷いた。

「ええ。じゃあ入って。」

二人は頷いて、あゆみの部屋に入って来た。

そして、窓際の椅子に座るようにあゆみが促すと、二人は素直にそこに座った。

あゆみは、言った。

「杏奈ちゃんもグレーなのに。他の人達の、黒い所とか分かる?狐も居たらほとんどが人外ってことになるものね。」

杏奈は答えた。

「わからないわ。私からも色は全く。でも、拓郎さんと公一さんは、意見が似てるから狼同士って言うならありそうよ。だから昌平さんが、狐が残っているのなら、そうなのかな。」

伊緒が、言った。

「今夜は、私は杏奈ちゃんには入れないつもり。だって、二日目に愛里ちゃんと決戦に上がった時に入れてしまったし、それからも私の立場を分かってくれて、仲良くしてくれてたわ。人外だったら、それを理由に私を怪しんでもおかしくないのに。だから、私からは白く見えるの。」

あゆみは、慎重に頷いた。

「確かにそうね。私は確定村人だけど、まだ霊媒COしている時でも疑わないで居てくれた。それは分かるわ。」

杏奈は、言った。

「ありがとう。私は本当に村人だから、他の人達に怪しまれるのはとてもつらいわ。でも、吊りきることになるのかしら。景清さんは、まだ吊りきるって言ってた?」

あゆみは、頷いた。

「ええ。それが一番村目線でも安全だろうからって。共有者達が決めたことだし、私には責任を取る勇気もないから、従おうと思ってる。でも、誰を吊ろうとかは決めてないみたい。グレーからそれぞれ思う所に入れたらいいって考えみたいよ。吊りきるから、どこからでもいいって思ってるみたいね。」

伊緒は、息をついた。

「景清さんは横暴だわ。狐が残っているなら、昌平さんなんじゃないの?和美さんが初日に囲ったと思った方が無難だわ。そうでないなら、和人さんが狐でしょうし。一輝さんが初日に囲ってたってことね。つまりはまず昌平さんを吊って、そこから黒っぽい公一さんと拓郎さんを吊って行けば自ずと色が落ちて行くわよ。それでも黒が一人なら、杏奈ちゃんまで吊ればいいわけだし。黒が二人出て、まだ吊るっておかしくない?縄を無駄にしたくないものね。」

あゆみは、伊緒も杏奈を庇うのかと思って驚いたが、仲良くしているのだからそうなるのかも知れない。

あゆみは、答えた。

「…そうね。でも、民意だから。共有者からしたら、白く見えるから残すとは言えないのよ。現に愛里ちゃんは黒だったわ…私も、疑いたくはないけど勝つためには疑って行かなきゃならないなって思ってる。景清さんは勝ち筋を逃したくないから、一生懸命なの。仕方ないわ。」

杏奈は困惑した顔で伊緒を見たが、伊緒はあゆみを見たまま言った。

「あゆみちゃんは、それで良いと思うの?霊媒に明らかに怪しい人が居るのに、それを放置したまま村人も混じってるグレーを吊りきるなんて。私は、まず霊媒から手を掛けて、その間にゆっくりグレーを精査したら良いんじゃないかと思ってるの。」

あゆみは、まだ尚斗を吊ろうとするのかと、顔をしかめた。

「霊媒は、まだわからないわ。そちらこそ決め打ちになるんだから、しっかり考えなきゃいけないと思う。グレーには多くの人外が居ると思われていて、そっちの方が縄を無駄にしないで済むでしょう。吊り間違えたら縄が足りなくなるかもしれない。景清さんでなくても、私だってグレーから手を掛けた方がいいと思うわよ。狐が残っていたらどうするの?とにかく、私が決めることじゃないし、共有者が決めてるのよ。一応意見は出すけど、景清さんの意見が一番強いわ。もし、考えを変えたいなら、景清さんに言った方がいいと思う。」

杏奈が、まだ何か言おうとしている伊緒を制止して、言った。

「そうよ、伊緒ちゃん。あゆみちゃん、困ってるわ。村の進行を共有者が決めたんだから、従うしかないのよ。私はもう、覚悟を決めたわ。村が勝てばいいわけだし。任せようよ。」

伊緒は、不満そうだったが頷く。

あゆみは、助かった、と杏奈を見た。

「きちんと話を聞いて決めるよ。もしかしたら、グレーをローラーしているうちに考えも変わるのかもしれないし。杏奈ちゃんが頑張って今夜の吊りを逃れたら、きっと生き残って勝てる未来もあるかもだから。」と、伊緒を見た。「伊緒ちゃん、真狩人だったらあまり強く言わない方がいいと思う。だって、それでみんな永嗣さんと伊緒ちゃんで迷ってしまってるから。伊緒ちゃんは初日から頑張って発言していたのに、無駄になっちゃうよ?伊緒ちゃん目線では、尚斗さんが偽だって見えないはずでしょ?なのに、ずっと推してるから。それが何か見えてるのかなって警戒されてしまってるの。村の流れに逆らうより、それに乗った上で怪しい所を提示していく方がいいと思うわ。今は、霊媒よりもグレーよ。グレーの中から、きちんと理由を話して怪しい所を提示できたら、一気に白くなるんじゃないかな。やってみたら?」

伊緒は、目を丸くした。

「え、確白の中で私が怪しい話になってるの?」

怪しまれていないと思っていたのか。

あゆみは、それこそ意外だという顔をして答えた。

「え、だって誰かが言ってたじゃない。こうなっても尚斗さんばかりを吊り押すから、色が見えてる人外なのかって言われてたでしょ?」

伊緒は、心外だとムッとした顔をした。

「そんなの、初日から怪しいからに決まってるじゃない!それだけで、カイ君を守らなかった永嗣さんより怪しいなんて心外だわ!今朝のあの二人のお芝居を信じてるの?絶対、安治さんに脅されたのを利用して、あんな風にカイ君を噛む方法を考えたのよ!」

あゆみは、ため息をついた。

それを見て、杏奈が慌てて言った。

「伊緒ちゃん、決めつけ過ぎよ。確かに永嗣さんは対抗だから伊緒ちゃん目線でそう見えてもおかしくはないけど、村目線じゃわからないんだもの。落ち着いて。」

伊緒は、それでまたヒートアップしてしまったと思ったのか、口をつぐむ。

あゆみは、言った。

「…そう、杏奈ちゃんが言うように、わからないわ。伊緒ちゃんが狼で尚斗さんと永嗣さんを陥れようとしてるのかもとか思ってしまう。だから、あまり自分目線のことを村に押し付け過ぎちゃいけないのよ。落ち着こう?」

伊緒は、不満気だったが頷いた。

あゆみは、そんな伊緒がただ真狩人で自分から見えてるからこそ永嗣と繋がりがあるように見える尚斗が、初日から引き続き更に怪しく見えているのか、それとも狼でどうあっても縄を真霊媒や真狩人に使いたいのか、全く分からなかった。

分かったのは、伊緒がかなり強引な性格で、すぐに感情的になってしまうタイプなのだということだ。

あゆみは、これをどう受け取って良いものか分からなくて、一応佳純にも話しておこうと思ったのだった。

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