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二日目投票と夜会話

『投票してください』

あゆみは、迷った。

どちらも村人だったらと思うと指が震える。

愛里は、ここへ到着した時から仲良くして来た。

杏奈は、控えめな感じだったが体調を気遣ってくれてとても優しかった。

どちらを選べと言われても、あゆみには残酷な宣告だった。

それでも、投票しなければ結局ルール違反で追放になってしまう。

あゆみは、苦渋の決断をして、番号を入力した。

『投票が完了しました。』

結果が現れる。


1明生→8

2カイ→8

3和人→5

4景清→8

5杏奈→8

6昌平→8

8愛里→5

9あゆみ→5

10伊緒→5

11永嗣→5

12元気→8

14重久→8

15尚斗→5

17安治→8

18佳純→8

19公一→5

20拓郎→5


…真っ二つ…!

あゆみは、思った。

今残っているのは17人で、同票にはならないのだが、かなりの接戦な気がする。

と言うことは、カイが話していたことから考えると、両方村人か、両方狼かのどちらかなのだろうか。

一瞬にしてそんなことが頭の中を駆け巡った後、モニターに大きく8と出た。

『No.8は、追放されます。』

「そんな!足りないの?!私なの?!」

パッと見たところ、確かにどちらが多いのかわからない。

だが、あゆみが必死に数えたところ、愛里が9票だった。

つまり、杏奈は8票なのだ。

たった一票差で、愛里に決まってしまった。

「いや!いやよ!死にたくな…!」

そこまで言った後、愛里は急にバッタリと前に突っ伏して絨毯の上に倒れた。

『No.8は、追放されました。夜時間に備えてください。』

愛里の手足は、おかしな方向に曲がっている。

明生が、急いで立ち上がって愛里を上向きに真っ直ぐな体勢で寝かせた。

「…変な体勢で倒れたな。骨は大丈夫か?」

カイが、立ち上がって愛里を見た。

「…大丈夫そうだけどね。」と、あちこち触れた。「…うん、折れてはないな。」

それを見ていた拓郎が、言った。

「…死んでるのに、今さら骨とか関係あるか?みんなで殺したんだぞ。こんな茶番はもうたくさんだ。」

吐き捨てるように言う拓郎に、誰も責めることはできなかった。

だが、カイが言った。

「あのね、もし戻って来るなら、いきなり骨折なんてかわいそうだろ。だから見ただけだよ。そもそも、君だって杏奈さんに入れてるし、その時点で同罪だよ。こうしてグレーを詰めて、見通しを良くするのが勝利への道なんだ。村人だったらごめんだけど、必ず勝つから待っててって気持ちなんだよ。君が本当にもう誰もその手で殺したくないなら、投票しなければいいんだ。ルール違反で死ねるよ。」

拓郎は、黙った。

明生が、ため息をついた。

「…運ぼう。カイは残れ、占い先を指定されるだろ?佳純さんと話すのか?」

カイは、頷く。

「うん。ここからは僕が確定真占い師だから、狼の噛み合わせを避けて佳純さんと景清さんとだけ話し合うよ。じゃあ、よろしく。」

カイが離れると、明生は側の重久や元気に頷き掛けて、愛里を持ち上げた。

カイは、佳純と景清と共に、キッチンへと消えて行ったのだった。


あゆみは、肩を落として階段を登った。

愛里は、どっちだったのだろう。

咄嗟の瞬間に自分は迷った挙げ句、杏奈に投票してしまっていた。

なので、先に階段を登る杏奈の後ろ姿に、声を掛けることもできなかった。

部屋の前まで来て、隣りの伊緒が小声で言った。

「…私も、杏奈ちゃんに入れたよ。」あゆみは、伊緒を見た。杏奈は自分の部屋に入って行くのが見えた。「どっちかなんか、決められるはずないよ。色が見えないんだもの。でもあの二択を迫られたら、私も最初から仲良くしてた愛里ちゃんには入れられなかったよ。杏奈ちゃんも良い子だと思う。でも、カイ君が言ってたように、色なんてわからないんだ。だから、気にしちゃダメだよ。」

あゆみは、頷いた。

「…うん。分かってる。でも、杏奈ちゃんとは明日から普通に話せないよ。杏奈ちゃんから見たら、殺そうとしたわけだもの。きっとこれまで通りにはならないよね。」

伊緒は、頷き返した。

「とにかくあゆみちゃんには色が見えるでしょ?今夜愛里ちゃんが人外だったのか分かるんじゃない?白だったら狐かもだけど…とりあえず、結果は見えるんだから。また明日から頑張ろう。」

あゆみは、いっそ自分は霊媒師ではないと伊緒に言ってしまいたかった。

だが、伊緒がもしも人外だったらと思うと、それもできなかった。

「…うん。ありがとう、伊緒ちゃん。今夜はカイ君を守ってね。」

伊緒は、微笑んで頷いた。

「任せて。必ず守るわ。じゃあね。」

「また明日。」

あゆみは、伊緒と別れた。

部屋に戻っても、一向に気分は晴れなかった。


夜、施錠を待ってすぐにあゆみは佳純の番号を入力して、エンターキーを押した。

ピピッピピッと呼び出しているような音がした後、佳純の声がした。

『あゆみちゃん?』

あゆみは、ホッとして言った。

「佳純ちゃん。私…もう、なんか嫌になってきて。愛里ちゃんを吊ってしまったわ。本当にあの二人で良かったのかな。」

佳純は、答えた。

『落ち着いて。大丈夫よ、カイ君を信じよう?真占い師なんだよ?大丈夫、きっと黒が出る。真霊媒師が証明してくれるよ、きっと。』

「でも、人外も混じってるのに。私は黒って言えばいいの?それとも白?」

佳純は、答えた。

『明日はとりあえず、黒って言ってみて。もし、あゆみちゃんだけ違う結果を言ったら、もうそこでカミングアウトするわ。あなたが猫又だって。』

そうだ、私は猫又ってことになっていた。

「…そうだったわ。景清さん…今夜、もしかしたら噛まれるんじゃ。」

佳純は、答えた。

『わからない。そうなったらそうなったで、その方が良いって景清さんは言ってた。霊媒結果もね、必ず確定するって。よく考えてみてよ。4人の中に真が二人だから、必ずそこは確定するの。だから、真が二人生きてる限り、偽物は偽の結果を言えないの。狂人だったら 間違うかもしれないけど、迷いなく結果を言うようなら間違いなく狼だってカイ君は言ってた。だって、狼には白か黒か分かるから。だから、誰か噛みたいところだけど、今日霊媒に猫又が居ると明かされたから、安易に噛めなくなったわ。かなり村が有利だし、景清さんがその上一人を連れてってくれたら、きっと勝ちに近付くと思うわ。』

あゆみは、考えた。

「それって…狼は、きっともう噛めるところって決まってるよね?景清さんしかいない。だって、霊媒には猫又、佳純ちゃんとカイ君には護衛が入ってる。グレーは狭められないし、もしかしたら今夜は、また二死体出ることになるの?」

佳純の声は、暗く沈んだ。

『…そうね。それはカイ君も言ってた。どうなるのかはわからないわ。でも、仮に残ってるのが狂人と狼とか、狐と狼だった場合、私かカイ君をチャレンジしてくるかも。今なら護衛成功しても、縄は増えないから。狼目線でも、恵令奈さんが真であった可能性はあるわけなの。だから、それを確かめるためにも、噛んで来るかもって。噛めたら、対抗の狩人は吊られるわけでしょう?破綻だから。わからないけどね。』

そんな可能性もあるのか。

佳純が淡々と話すのに、あゆみは段々にその意味が浸透してきて、目を見開いた。

「…待って。ということは、佳純ちゃんが今夜襲撃されるかもなの?!そんなのイヤよ!」

佳純は、なだめるように言った。

『あくまでも可能性なのよ。私が噛まれたら、景清さんを共有として村を動かして欲しい。大丈夫よ、きっと私は大丈夫だから。落ち着いて。』

落ち着けるはずがない。

佳純が居なくなるかもしれないのだ。

あゆみはにわかに取り乱してしまっていたが、佳純はあくまでもそんなあゆみをなだめて、落ち着いた様子で時間いっぱいまで話してくれたのだった。

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