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夕食

昌平は、黙々と和美が残した鶏肉を捌いて、唐揚げを作っていた。

和人と元気がそれを手伝っていて、重久もあれこれ言われた通りに動いて、夕食の準備をしている。

和美が居た時には何もしなかった重久が、そうやって働いているのを見るのは、何やら寂しく感じた。

あゆみと伊緒も、二階の部屋へと戻って行く時に、杏奈と愛里に出くわしたらと思うとなかなか戻ることができなくて、結局キッチンで、そんな三人を手伝ってサラダを作ったりと、皆の夕食の準備を黙々としていた。

杏奈は、昨日ケーキを焼くと言っていたが、結局キッチンへ来ることはなかった。

恐らく、それどころではないのだろう。

あゆみだって、もし吊り先に指定されて今夜殺されるかもしれないのに、パーティの準備だと浮かれてケーキを焼く気持ちにはなれないと思う。

なので、杏奈を責める気にはなれなかった。

テーブルの上に大皿を置き、そこへ次々に揚がって行く唐揚げを盛って行き、サラダを配置して、食べたい人だけ食べるように設置した。

永嗣や尚斗、明生やカイ、安治、公一、拓郎と次々に人がやって来ては、自分でご飯をよそってさっさと椅子に座ると、黙って食べる。

昌平たちも、それに混じってまた黙って食事を始めて、あゆみと伊緒も、愛里たちが来たら気まずいので、急いで食事を終えて、少し唐揚げをタッパーに詰めて、お弁当のようにして、遂に降りて来なかった佳純の部屋へと、持って行く事にした。

三階へと向かおうとすると、カイが言った。

「…ああ、佳純さんところに行くの?」二人が足を止めると、カイは続けた。「愛里さんと杏奈さんは、僕と景清さんに説得されて結局部屋に籠ってるよ。だから大丈夫。佳純さんが参ってるみたいだから、頑張ってねって伝えて欲しいんだ。もし進行役が疲れるなら、僕か景清さんが代わるからって。」

あゆみは、ホッとして頷いた。

「うん。出来たら代わってあげて欲しいな。疲れちゃってるのよ…昨日から。」

カイは、黙って頷く。

あゆみは、伊緒に頷き掛けて、二人で三階へと上がって行った。


カイが言ったように、道中愛里と杏奈の二人に会うことはなかった。

18号室の前に到着したあゆみと伊緒は、チャイムを押した。

すると、しばらくして扉が少し開いて、佳純の片目だけが見えた。

「はい?」と、伊緒とあゆみが立っているのを知ると、パッと扉を広く開いた。「あゆみちゃん!伊緒ちゃん!来てくれたの?」

あゆみは、頷いて言った。

「ご飯、まだでしょ?伊緒ちゃんと一緒に唐揚げ弁当作って持って来たよ。あのままだと、全部食べられちゃう勢いだったから。」

佳純は、嬉しそうに道を開けた。

「入って。お腹は空いたけど、もし愛里ちゃんと杏奈ちゃんが居たらと思ったら、降りて行けなくて…カイ君たちが追い払ってくれたけど、すごく指定先を変えて欲しいって訴えられてね。気持ちは分かるわ、だって本当に死んでしまうから。でも…もし二人のうち一人でも人外だったら、避けて通れない道だなって思って。」

伊緒とあゆみは、部屋の中へと足を進めて、扉を閉じた。

伊緒が、手に持っていたタッパーを差し出した。

「食べながら話そうよ。お腹空いたでしょ?」

佳純は、それを受け取って、窓際の椅子の方へと足を向けた。

「うん。来て、座って話そう。」

伊緒とあゆみは頷いて、窓際へと向かった。

他の部屋とは置いてある調度は全く同じだが、しかしよく見るとベッドの細工が僅かに違っていたり、椅子の脚の彫刻が違っていたりしていた。

佳純はさっそくタッパーを開いて、歓声を上げた。

「わあ!美味しそう!」と、割り箸を割った。「いただきます。」

佳純は、パクパクと食べ始める。

あゆみは、言った。

「カイ君が、もし進行役が辛かったら代わってくれるって言ってたよ。景清さんも。二人が確定村人なんだから、甘えてもいいと思うな。」

佳純は、ため息をついた。

「そうね…明日ぐらい、変わってもらおうかなって思ってる。もう、疲れて来ちゃって。普通の人狼ゲームだったらうまく進行して行ける自信があったわ。でも、本当に死ぬ上、リアル時間で進むからゆっくりでしょう?勢いで決めてしまえるわけでもないし。本当…甘く見てた。」

伊緒は、頷いた。

「佳純ちゃんは頑張ってるよ。だから、ちょっと休ませてもらったら良いんじゃないかな。今夜はきっと、私が占い師を守るよ。安心して。」

佳純は、苦笑した。

「…うん。ありがとう。」

伊緒が真だとは限らない。

だが、佳純はその事は口にしかなかった。

そこからは、またたわいもない話をして佳純が食事を終えるのを待って、三人で一階へと降りて行き、投票時間に備える事にしたのだった。


階下へと降りて行くと、リビングの扉を開いてすぐに、何やら言い争うような声がした。

「…だから、どうしてカイ君の独断で決めてしまわれなきゃならないの?!女子に対する偏見よ!感情的にもなるわ、だって無実の罪で殺されようとしてるのよ?!」

愛里だった。

もうソファに座っているカイの前に立って、杏奈と二人で何やら言っているようだ。

…どうしよう、決められない。

そう思ってあゆみが顔を歪めると、佳純が言った。

「なに?まだ何か言い争ってるの?」

愛里と杏奈は振り返った。

「佳純ちゃん!あなたなら分かるわよね、私達は村人よ!いくら真役職でも、殺そうとされてるのに黙っていられないでしょう。」

だが、景清が言った。

「っていうか、オレ達はお互いに真役職だって知ってるが、君たち二人はどうしてお互いに白だって分かるんだ?自分が白なら、相手は黒だとか思わないのか?対抗に挙げられてるのに、一枚岩っておかしくないか。なんか色が見えてる?」

愛里は、え、と驚いた顔をする。

「え…だって、杏奈ちゃんとは仲良くしてたし、怪しいこともなかったから。黒だと思う所が全くないわ。」

杏奈も、頷く。

「一人で来た私と仲良くしてくれた愛里ちゃんだもの、私は信じてる。もっと他に私達を陥れようとしている人外が居ると思ってるわ。」

明生が、ため息をついた。

「さっきあゆみさん達にも言ったんだが、感情だけじゃダメだぞ?20人のうち人外8、女子も7人居る。誰かは人外に当たっていると考えて間違いないだろう。全員が白なんてあり得ない。誰が黒を引いてるかなんか、誰にもわからないんだ。君たちが今できることは、自分達二人以外から吊れと言うのではなく、自分が相手よりどれだけ白いかのアピールしかない。それとも、相手がどれだけ黒いか。騒げば騒ぐほど、君たちから縄は外れなくなるんだ。」

二人は、絶望的な顔をした。

なぜなら、全員が明生の言葉に同意するように、黙って頷いていたからだ。

…時間が近くなってる。

あゆみは、暖炉の上の金時計を見て、思った。

指定はこの二人から外れない。

どうしてもこの二人から選ぶ必要がある。

カイが、言った。

「…票が見たいんだよね。」皆が、場にそぐわない落ち着いた声にカイを見る。カイは何かを考えるように宙を見て続けた。「票のバラけ方で二人の色が見えて来ると思ってる。綺麗に分割したら、どっちも狼か、どっちも村人かのどちらか。片方に集中したら、票が少なかった方が狼。何しろ狼は確定で5人残ってるから。仲間は吊らないよね。露出している狼は、そのうちに吊られる可能性が高いけど、グレーは逃げ切れる可能性があるし。というのも、狼は必ず真占い師を噛まなきゃならない時が来る。狩人の狼は風前の灯火なんだ。グレーの狼を守り切るために。今夜が山かな。僕か景清さんか、二択で狙って来るかもしれない。伊緒さんが真であることに賭けたいよね。」

景清が、言った。

「…オレはいい。」え、と皆が景清を見ると、景清は言った。「佳純さん、君とカイに護衛を入れてくれ。相互護衛をできる限り続けるんだ。片方が真狩人なら、一回ぐらいはしのいでくれる。狼が捨て身になったら、そこでジ・エンドだがな。カイだけは残せ。」

…景清さんが共有騙りをしてる…!

あゆみは、ドキドキした。

佳純は、困った顔をした。

「でも…景清さんが。」

景清は、苦笑した。

「勝てばいいんだよ。」と、皆を見回した。「オレが共有者だ。佳純さんの相方。霊媒の猫又は、もう出すか?」

佳純は、渋い顔をしながら、首を振った。

「…まだ、噛むかもしれないから。霊媒の中の猫又は露出させないでおくわ。」と、佳純は伊緒を見た。「だから伊緒ちゃん、今夜はカイ君を守って。永嗣さんは私。今夜は杏奈ちゃんと愛里ちゃんから一人吊って、霊媒師に色を見てもらう。」

恐らく分かっているだろう元気は、他の霊媒師達に紛れて、それでも黙って頷いていた。

…元気さんは真霊媒なのかもしれない。

あゆみは、そう思って見ていた。

すると、モニターが何の前触れもなくパッとついた。

『投票10分前です。』

時間が減っていく。

遂に投票時間がやってきた。

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