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残酷な選択

「…どうだろう。狼は多分切って来てると思うんだよね。明生さんや昌平さんが言うようにさ。五人も居るんだよ?誰かが生き残ったらいいわけだし、簡単には尻尾を掴ませないと思う。でも、和人さんが言うように、今日はグレーを詰めて、今夜グレーを占って白圧迫が正着かもね。どうせ役職は決め打って行かなきゃならないんだ。占い師だけでも確定して良かったんだよ。霊媒師と狩人に、多くて三人外でしょ?つまり、恵令奈さんが真だった場合は狩人は偽同士ってことになるから最悪そうなるから。上手い事護衛先指定して、真が居るなら1グッジョブ出してくれたらまた呪殺しても縄が減らなくなるから、期待したいところだよね。うーん、とりあえず、今夜は昌平さんと和人さんは置いといて、完全グレーの中から選ぼうか。だってこの二人の内、一人は間違いなく白だからさ。杏奈さん、愛里さん、重久さん、公一さん、拓郎さんの5人から選ぼう。」

佳純は顔をしかめた。

「5人は幅が広いわ。せめて二択か三択にまで絞ってくれない?」

カイは、佳純を軽く睨んだ。

「だから僕は占った所しか色が分からないんだってば。でも、そうだね、だったら適当に選ぶよ。」と、じっと皆の顔を見つめた。「…女子達って僕からは全く色が分からないんだよねえ。だから、杏奈さん、愛里さんは入れる。で、重久さんはちょっと白っぽいかなって思ったし…公一さんか拓郎さんだけどなあ。二人共意見は対抗してるけど、今のところおかしなことは言ってないんだよねえ…ま、いいか。とりあえず、僕に任せるんだったら杏奈さんと愛里さんにするよ。この二人から一人選んでくれる?」

それには、あゆみが言った。

「待って!そんな適当にって、理由が薄過ぎない?二人共、おかしなことは言ってなかったと思うわ。理由があるなら、それでいいとは思うけど…。」

一緒にお茶を飲んで楽しく話した、仲間がまた減ってしまう。

しかも、ただ居なくなるのではなく、死ぬのだ。

あゆみが悲壮な想いでそう言うと、カイは鋭い目であゆみを見た。

「なに?だったらあゆみさんはどこか怪しい所があるの?」

あゆみは、言われて戸惑った。

怪しいところ…。

「…一度聞いただけじゃ分からないわ。何度も話し合って決めたいと思っただけ。」

カイは、じっとあゆみを睨むように見ながら、言った。

「あのね、感情的になっちゃ勝てないよ?僕なりに理由があるんだ。」あゆみが驚いた顔をすると、カイは続けた。「他に大した理由がないから、それに頼るしかないしで薄い理由だけどね。まず、愛里さんはさ、和美さんの襲撃に誰よりショックを受けてるようだったけど、それでも永嗣さんを責める事がないんだよね。永嗣さんが守らなかったから襲撃されたって思うのが自然だろうと思うのに。永嗣さんに理解を示すような発言をした。僕から見たら、それは矛盾してる。発言と行動が矛盾している時、人は嘘をついている場合が多いんだ。同じように杏奈さんは、逆に永嗣さんを責めるような事を言った。でも君って、あんまり和美さんの死に対してショックを受けてないようだったよね?それが性格だって言われたらそうなのかもだけど、淡々としてた。朝ごはんだってしっかり食べてたしね。なのに、和美さんが真だったと思うんだよね?永嗣さんを和美さんを守らなかったと責めるほどには。にも関わらず、結局昌平さんと和人さんが黒かったらまた考えるって…昌平さんは和美さんの白だよ?いろいろ矛盾してて、思考がバラバラ。もっともらしい事を繋げただけに聴こえたよ。だから、この二人にしたんだ。白かもしれないけど、こんな時ってボロを出した人外か、まともに思考できない村人が吊られてしまうものだし、そうすることが村の利益になるって僕は思ってる。」

適当だと言っていたが、カイにはきちんと理由があった。

言われてみたらそうなのだが、こじつけにも聞こえなくもない。

何しろ、二人はいつもあゆみと佳純、それに伊緒と一緒に居て、仲良く話していたのだ。

女子でもあるし、男子ほど論理的に思考できないかもしれないし、なんならあゆみだってヤバい方だ。

すぐに感情に踊らされてしまうからだ。

佳純は、苦渋の顔をして、景清を見た。

「…景清さんは、どう思うの?」

景清は、肩をすくめた。

「オレはカイが言う通りで良いと思うけどな。どちらにしろ、必ず誰かを吊らなきゃならないんだ。まだ縄に余裕はあるし、ここで一縄間違ったとしても仕方がない。とにかくグレーを詰めるのが村のためってのは、その通りだと思う。二択で行こう。オレはカイを支持するぞ。」

佳純は、困ったように愛里と杏奈を代わる代わる見た。

二人は、縋るような目で佳純を見た。

「そんな…私達は話し方が悪かったのかもしれないけど、ちゃんと考えて発言していたのよ?矛盾してるって言うけど、そんなつもりはなかったわ。ただ、和美さんの死を乗り越えて行かなきゃって思って、冷静に考えた結果なだけなのに!」

愛里が言うのに、杏奈も頷いた。

「分からないのは村人なんだから仕方がないわ。迷っているのよ、誰も彼もがカイ君みたいに頭が切れるわけじゃないわ!他の男性達と、一体何が違ったというの?何も変わらないじゃないの!」

佳純は顔を歪ませた。

迷っているのは、あゆみから見ても分かった。

だが、佳純は、言った。

「…多数決だわ。仕方がない。私以外の確定村人がそう言うんだもの、それに従うしかない。今夜は、愛里ちゃんと杏奈ちゃんから選んで投票してちょうだい。」

「ええ?!」

「待って、佳純ちゃん!」

二人の声が、佳純に縋りつく。

だが、佳純は首を振って、言った。

「…休憩にするわ。後は個々人で話を聞いてどちらに入れるか決めて欲しい。投票時間までに、ここへ来てくれたら良いから。解散。」

佳純はそう言い置くと、サッと立ち上がって逃げるようにリビングを出て行った。

あゆみは、遂に友達から選ばなければならないのか、と絶望した気持ちになったのだった。


あゆみが茫然としている中、愛里と杏奈はリビングを出て行った佳純を、急いで追って行った。

恐らく、考え直して欲しいと言いに行ったのだろうと思われた。

隣りの伊緒が、立ち上がってあゆみに声を掛けた。

「…あゆみちゃん。大丈夫?」

あゆみは、ハッと伊緒を見た。

「…うん。私…友達に入れなきゃならないのかって、感情的になっちゃった。ごめん。」

また、伊緒にしっかりしろと言われるかと思ったのだ。

伊緒は、首を振った。

「気持ちは分かるよ。私だって、せっかく出来た友達に死ぬって分かってる票を入れるのはとってもつらいわ。でも、カイ君が言うのはその通りだし。もし村人なら、きっと勝って戻って来る事を信じよう。それしか、出来る事はないよ。間違えないように、慎重に考えよう?」

あゆみは、頷く。

景清が、言った。

「友達って言うけど、君達は同じ女子だってだけで一緒に居たんだろ?前から友達なわけじゃないだろ。」

言われて、あゆみは渋々頷いた。

「そうだけど…ほんとに良い子達だし。人外っぽい所も無くて、いつも励ましてくれてたの。朝ごはんだって、食べたくないって言ったら食べた方が良いって言ってくれて…。」

そう、こんな所で友達ができたと、喜んでいたのだ。

しかし、明生が言った。

「…いい子だってのは分かる。でもな、ランダムに役職が振り分けられたのに、人外に当たってないってなぜ言える?20人中8人が人外なんだぞ。女子が7人も居るこの村で、人外に当たってないとは言えないだろう。疑ってかからなきゃならない。ゲームとかオブラートに包んでるが、殺し合いだ。人外と村人との。勝たないとマズいんだぞ。そもそも、君達に取り入ってたのだって、もしかしたら票をもらわないためかもしれないのに。それとも、君は人外か?」

明生に強く言われて、あゆみはびっくりした顔をした。

そうだ…村人からは、自分は共有者じゃないのだ。

確定していない霊媒師の一人なのだ。

「…私は人外じゃないわ。でも、あなたが言うのは分かる。確かに、人外が男子ばっかりのわけはないわね。昨日は恵令奈さんだって吊ったのに。分かっているわ、ただ感情がついて行かないだけ。私…でも、佳純ちゃんの所へ行かないと。もしかしたら、あの二人に責められてるかもしれない。」

あゆみが立ち上がると、カイが言った。

「僕達が行くよ。」と、景清を見た。「行こう、景清さん。多分、情に訴えに行ったとしたら、佳純さんが可哀そうだ。僕達で追い返そう。」

景清は、頷く。

そうして、二人してリビングを出て行くのを、伊緒とあゆみは黙って見送るしかなかった。

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