交錯
「次は、愛里ちゃん。話せる?」
愛里は、まだ少しショックを受けているようだったが、話を聞いているうちに落ち着いて来たのか、頷いた。
「ええ…。いつまでも、和美さんが居なくなったことを悲しんでいてはいけないわね。親しい人を亡くすの、初めてだったから堪えてしまって。ええっと、今は永嗣さんがカイ君を守った事が妥当だったかって話になってるわね?私は、間違ってなかったと思うわ。だって、結果的に和美さんだったけど、もしかしたらカイ君だった可能性だってあるもの。和美さんが居なくなったのは悲しいけど、勝って帰るためにはカイ君みたいにしっかりした意見を持った人が生き残るのが重要だった。だから、それを責めるつもりはないわ。そこを責めている拓郎さんは怪しいと思うし、私と同じ意見の公一さんは白かなと思った。重久さんはまた、拓郎さんとは違った意味で永嗣さんを責めてる気がするし…まだフラットで見てるかな。ただね、私は伊緒ちゃんとたくさん話したから…一生懸命なのが分かってるから。どうしても、永嗣さんより伊緒ちゃんの方が真かなって思ってしまうのは許して欲しい。これは感覚だから、この二人を決め打つ時が来たらきちんと精査するつもりよ。」
あゆみは、その気持ちが分かった。
伊緒を信じたいという気持ちが大きくなるのは、あゆみも同じだ。
いつも、フラフラとなる自分をしっかりしろと鼓舞してくれるのは、伊緒だからだ。
これで伊緒が狼だったらと思うと、人を信じられなくなりそうだったが、それでも決めつけてしまうのは怖い。
だが、今は信じていたい。
そんな気持ちなのだ。
佳純は、頷いて杏奈を見た。
「杏奈ちゃんは?どう思う?」
杏奈は、答えた。
「…私は、やっぱり和美さんが噛まれる可能性が高かったんだなと、安治さんの意見を聞いて思ったの。だから、そこを守っていなかった永嗣さんは、責めたい気分よ。伊緒ちゃんとはよく話しているし、村のためにって気概を感じるから、どうしても伊緒ちゃんの方が真じゃないかって思ってしまう。恵令奈さんが白だったのは分かってるわ。でも、恵令奈さんは伊緒ちゃんほど真らしい感じじゃなかったもの。でも、狩人はこのままでグレーを吊るわけでしょ?だったら、私は自分の意見と違う所が怪しく見える。つまり、公一さんと愛里ちゃんかな。でも…目立って黒いって感じでもないし迷ってる。とにかく、分からないから昌平さんと和人さんの意見も聞いてから、そっちが黒かったらまた考えるけど。」
佳純は、頷いて昌平を見た。
「じゃあ、和美さんの白の昌平さん。昌平さんは、昨日も白かったと思うし、やっぱり疑ってないんだけど…話してみて。」
昌平は、頷いて口を開いた。
「昨日、オレは尚斗さんを疑っててそこを庇ったように見えるから、永嗣さんも恵令奈さんも怪しいと思ってた。それは今も変わらないな。というのも、オレも安治さんと同じ意見だから。確かにカイは守られる位置だったし、そこを守ったと言えばこうして意見が分かれるのは分かってることだ。だから狼が、それを利用して真かもしれないところを噛んで来たのかなと思った。和美さんは白かったよ。狐っぽくもなかった。カイがダメならそこを噛むのは予想できたはずだ。悩んで悩んで決めたと言うのなら、オレだって少しは考えたけど、永嗣さんは特に考えずにカイを守ったと言った。だから引き続きオレは永嗣さんが怪しいと思うし、尚斗さんが怪しいと思う気持ちは変えられないな。グレーは、とりあえず狼は同じ意見は言ってないように思うんだ。グレーが減って来たら、遅かれ早かれ一人は狼が吊られる未来は想像できる。真占い師が黒を引いて来るだろうしね。そうなった時、同じ意見を出してたら、諸とも吊られて終わりだから、夜に話し合って別々の意見を出すことにしているはずだ。だから、オレはまだ誰が怪しいとはわからないな。投票とかでハッキリしないとここが怪しいとは言えないよ。確定白の占い師達の意見が聞きたいな。」
佳純は、頷く。
あゆみは、昌平はやっぱり白いのかも、と思っていた。
和美が噛まれてしまったし、信じたい気持ちなのだ。
つい、贔屓目で見てしまう。
佳純は、言った。
「じゃあ和人さん。あなたは囲われてるかもと言われてるけど、反論ある?」
和人は、困惑した顔をした。
「オレはただ一輝に白を打たれただけだし、一輝が狐だったって言うのならなんでオレに白を打ったんだろうって思うよ。さっき誰かが言ってたけど、初日から囲うなんてしないんじゃないか?こうなった時に、ここを怪しんでくださいって言ってるようなものだよ。オレは村人だし、マジで迷惑してる。大体、一輝が慣れてない風だったって言うけど、相方が居るんだからそいつが入れ知恵してるだろうし、きっとみんなが思うように初日は適当に白打っておけって言ってると思うけどな。オレを占ってくれてもいいけど、それより黒位置が一個でも分かる方が良いんじゃないか?オレは黒じゃないぞ。グレーがまだ広いから、いつまで真占い師が生き残れるかわからないし、できたらグレーの中の白を探して、白圧迫した方が良いと思う。そしたら、縄に余裕があるうちに残りを吊りきったら良いわけだし。霊媒に一人、狩人に一人だったらグレーに3人だろ?白見つけてグレー吊って、白見つけてグレー吊ってしてたら自然に露出して来るよ。狐が居たら、呪殺されるだろうしさ。」
確かにそうだが、狩人と霊媒の中の狼をどうするか。
あゆみは、思った。
狼ではなく狐だったとしても、決め打ちしなければならなくなる時が来るのだ。
カイが、言った。
「それって霊媒や狩人に狼しか出てない視点だよね?狐が出てたらどうするのさ。君目線じゃどっちも狼確定なの?」
確かにそう。
あゆみが和人を見ると、和人は言った。
「みんな狼だろうって言ってなかった?だからオレはそれで思考してるだけなんだけど。占い師と霊媒、狩人に狐が出てるとカイは思うのか?」
カイは、首を振った。
「わからないよ。僕目線じゃ誰も占ってないしね。でも、後から出た尚斗さんは狼目はあるけど狐ではなさそうだけど、もし、尚斗さんが真なら他が狐はあり得るかなと思ってる。先に話し合って、占い師と霊媒師に出ようってなってたかも。まあ、霊媒はローラーされるかもだし、無いとは思うけどね。」
明生が、言った。
「だが…ここまで聞いたがあんまり参考にはならなかったな。昌平が言ってたように、狼も馬鹿じゃないから絶対に違う意見を言ってるはずだ。少なくとも数人は、役職の狼を切って来てるのは絶対だろう。となると、あまり参考にはならないんだよな。本来なら、投票結果とかで判断もできるもんなんだ。口ではいくらでも言えるけど、投票となると味方には入れづらいもんだから。でも、まだ昨日の恵令奈さんしか投票してないし、満場一致で決まっただろう。判断する決め手がない。」と、カイを見た。「どうする?カイ。お前が猫又なのか共有なのか占い師なのか分からんが、とりあえず村人なのは確かだ。お前が決めてもいいかと思ってるんだが。」
カイは、顔をしかめた。
「うーん、僕に丸投げはしないで欲しいな。後で佳純さんと景清さんと話し合うけどさあ。」
佳純が、言った。
「今の時点で、カイ君はどう思うの?意見を聞いていて、何か思った?」
カイは、うーんと皆の顔を見回した。
皆が、息を飲んでカイの言葉を待った。




