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二日目の朝

昨日がゲーム初日だったので、今日が二日目になる。

あゆみは、よく眠れずに浅い眠りで起きたり寝たりを繰り返していたので、スッキリしないまま朝を迎えていた。

寝たり起きたりということは、自分は襲撃されなかったということだ。

まだ外は暗かったが、それでも時間まではもうすぐだった。

あゆみは起き上がって、顔を洗って用を済ませると、ドアの前に立って、閂が抜けるのを待った。

素っぴんだったが、そんなことは些細な事のように思えて、もう気にならない。

ガツン。

扉は、何の前触れもなく、大きな音を立てた。

待ってましたとあゆみがドアノブを回して開くと、目の前の扉も開いて、杏奈が顔を覗かせているのと目が合った。

「杏奈ちゃん。」

あゆみが言うと、杏奈は言った。

「あゆみちゃん!」と、足を踏み出した。「みんな無事…?」

あゆみも、足を踏み出した。

すると、隣りに伊緒が居るのが見えて、杏奈の隣りの部屋の昌平が出て来ているのも見えた。

首を回して廊下を階段の方向へと見通すと、向こう側の飼え清、和人、明生、カイ、愛里も見えた。

昌平が、言った。

「全員居るか?そっちはどうだ。」

明生が、あちらから答えた。

「カイも無事だし愛里ちゃんも居るが、一輝が出て来てないな。」と、一輝の扉の、チャイムを押した。「一輝。」

ルールブックには、完全防音だと書いてあった。

つまりは、チャイム以外では外の音が全く聴こえないのだ。

愛里が、言った。

「おかしいわね。寝過ごしてるのかしら。気持ちは分かるけど、恵令奈さんの件で、めちゃくちゃ参ってたみたいだったし…。」

明生は、頷いてドアノブに手を掛けた。

「一輝、入るぞ?」と、ドアを開いた。「お、鍵が開いてるな。内鍵はかけてないみたいだ。一輝、起きろ、みんな出て来てるぞ!」

一応、それぞれの部屋には、夜に閉じ込められる鍵とは別に、自分で部屋に籠りたい時にかけることができる鍵も設置されてあった。

それが、掛けられていないのだ。

明生は、部屋の中へと足を踏み入れながら、また声を掛けた。

「一輝?おーい。」と、中へと入って行くのが遠目に見えて、あゆみもそちらへ足を向ける。すると、明生の声が、大きく響いた。「カイ!ちょっと来てくれ、一輝が息をしてない!」

「ええ!?」

廊下に立っていた愛里も叫んだが、こちらから歩いて向かっていた杏奈もあゆみも叫んだ。

昌平が、一気に後ろから駆け出して一輝の部屋へと突進して行く。

カイが入って行くそのすぐ後を、昌平は走って追いついて行った。

あゆみも、途端にドキドキしながら自然足を速めて一輝の7の部屋へと向かう。

杏奈も部屋の前で入るのを躊躇している横へと並んで、あゆみも戸惑っていると、中から昌平の声がした。

「…死んでる。一輝が襲撃された。」

明生が、言った。

「…占い師を襲撃して来たのか。猫又が居るかもしれないのに?」

カイが、奥から出て来て、言った。

「…他に犠牲者が出てないか、調べてからでないと分からないんじゃない?だって、相互占いしてたんだよ?僕は和美さんを占って白だった。景清さんは?」

景清は、険しい顔で答えた。

「オレはカイを占って白。」

するとそこで、階段の方から元気の声がした。

「おーい!来てくれ、和美さんが襲撃されてるんだ!」

和美さんも?!

あゆみは、手で口を押えた。

カイが、険しい顔で言った。

「…行こう。一輝のことも知らせなきゃ。」

明生が頷いて、動き出すカイについて急いで廊下を抜けて走って行く。

あゆみも、遅れてはならないとそれについて、必死に三階へと向かって行った。


三階も、二階と同じように部屋があった。

数人が目の前の13の部屋の前に集まっていて、最後尾の元気が言った。

「…重久さんと安治さんが中に確認に行ってくれたんだけど。安治さんが言うには、昨日の恵令奈さんみたいに全く動かないって。息もしてない。」

カイと明生が頷く。

伊緒が、前に進み出た。

「確認に行くわ。」

カイは、言った。

「僕も行くよ。」

二人は、部屋の中へと入って行く。

あゆみも、部屋の入り口付近で青い顔をしている佳純が気になって、急いで前に出た。

「佳純ちゃん!大丈夫?」

佳純は、あゆみを見てホッとした顔をした。

「あゆみちゃん!確認に行こうと思うのに…足がすくんで。」

昨日、かなり参ってたもんね。

あゆみは、頷いた。

「大丈夫、一緒に行こう?みんなで一緒に行けば大丈夫だよ。」と、杏奈と愛里を振り返った。「杏奈ちゃんも、愛里ちゃんも。」

杏奈は頷いたが、愛里は震えながら首を振った。

「私はここに居る。無理、ホントに無理なの。」

気持ちは分かる。

あゆみは、佳純と杏奈と共に、カイと伊緒の後を追って中へ入って行った。


部屋の作りは、下の部屋と全く同じだった。

和美は、ベッドの上で穏やかに眠っているようだったが、顔色は真っ青で一目でもう息はない、と分かった。

…昨日、たくさん話したのに。

あゆみは、思っていた以上にショックを受けた。

カイと伊緒がさっさと確認作業をしている中、重久は和美の横で膝をついて項垂れていた。

…ちょっと仲良くなってたもんね。

あゆみは、重久に同情した。

まだ恋愛関係ではなかっただろうが、結構いい感じに見えてはいたのだ。

昨日、恵令奈が追放された後はショックを受ける和美の手をしっかり握って、部屋へ帰る時も付き添って気遣っていた。

こうなる前に和美と話したのは、恐らく重久が最後だろう。

カイが、手を止めて、言った。

「…死んでるよ。でも、おかしい。やっぱり戻って来るっていうのは夢物語じゃないかも。」

明生が入り口の方から言った。

「それはどういうことだ?」

それには、伊緒が答えた。

「和美さんは、恵令奈さんと違って数時間前に亡くなったみたい。体が冷えきってるから分かるの。でも、それなのに死後の変化が全く起きてないの。だから、死んだばっかりみたい。矛盾してるの。」

カイも頷く。

「僕が見たどの死体より死にたてホヤホヤだよ。でも、冷たい。だから、死んでないのかもしれないなって、思っただけなんだ。」

伊緒も、頷いた。

「うん。私もそう思った。良く調べたら生きてるのかも。仮死状態って感じかな?調べるものが何もないから、わからないけど。」

重久が、顔を上げた。

「じゃあ、じゃあ和美は生き返るか?オレ…昨日、まだ時間はあるとか思って。自分が襲撃されるかもって悩む和美に、大丈夫だから明日また話そうとか、言っちまって。そのまま別れて…朝これだ。謝りたいのに。」

あゆみは、佳純と顔を見合わせた。

佳純は、言った。

「…永嗣さんは誰を守ったの?」

永嗣は、神妙な顔で答えた。

「軽く考えてた。オレはカイを守ったんだ。誰より真っぽかったし…和美さんは考えてもなかった。」

不自然ではない。

狼も、カイは守られるとして他から猫又を避けて噛むために、三択を選んだのだ。

その賭けに勝ったのだろう。

明生が言った。

「…下では、一輝も犠牲になってた。」え、と三階の皆が明生を見る。明生は続けた。「どっちかが呪殺だ。昨日和美さんを占ったのは?」

カイが、言った。

「僕だよ。和美さん白。」

景清が言った。

「オレはカイ白。つまり、和美さんかカイが真の相方なんだな。」

明生が、頷いた。

「和美さんが真で一輝を呪殺したか、カイが真で和美さんを呪殺したかのどっちかだな。どちらにしろ、狐は居なくなった。となると、和美さんの白先の昌平か、一輝の白先の和人が相方の可能性が出て来たな。まあ、そこは占えば良いわけだし、昨日の恵令奈さんの色は?聞いておきたい。」

あゆみがそういえばどっちを言えば良いのかと困惑していると、佳純が言った。

「結果は一斉に出して。行くわよ、3、2、1!」

「「「「白!」」」」

4人の声が揃った。

あゆみは、咄嗟に白と叫んだのだが、正解だったようだ。

ホッとしていると、明生は頷いた。

「真か狂人か狐だな。まあ、そこはいい。今夜も誰か追放しなきゃならないぞ。話し合わないと。」

カイが、言った。

「今、3人減って17人、偶数進行から奇数進行になった。縄は減らずにあと8つ。狼5、狂人1、狐2の8人外だけど、狐が一匹確実に居なくなったから、昨日の恵令奈さんが真だったとしても7人外だから、まだ縄に余裕はあるよ。ただ、狐をまた呪殺したら縄数が減るから、油断はできない。恵令奈さんが人外だったら平気でグレー詰めれるけどね。昨日より今日はもっと考えなきゃならないよ。」

佳純は、ため息をついた。

「…そうね。じゃあ、とりあえずカイ君と景清さんは私の部屋に来て。二人だけに話したいの。他の人達は、準備をして…そうね、朝御飯も済ませてからリビングに来て欲しい。全員集まったら始めるわ。ここは、一旦解散。」

全員が、頷く。

あゆみは、去っていく佳純、カイ、景清の話が気になったが、自分は今霊媒師だ。

なので、振り切るように後ろを向くと、階段を降りて部屋へと帰ったのだった。

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