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揺れ動く意見

昌平がキッチンから戻って来た。

明生は、言った。

「オレはみんなの決定に合わせるつもりだったから、村が恵令奈さん吊りにしようと言うなら今日はそれでいいだろう。とりあえず、恵令奈さんからの意見は聞くし、真ならすまないが吊られてくれと言っておく。恐らく狼が残っているだろうから、残りの二人がその役目を引き継いでくれるだろうし心配はいらない。で、もう狩人はどうせ真が残ればいつか分かるだろうし、偽は破綻するだろうから一番重要なのは占い師の精査だが、そこは呪殺一発で分かるはずだ。そこでオレは思うんだが、みんな占い師に狐が出ていると思うなら、今夜は占い師同士の相互占いか、お互いの白先を占うかで呪殺を目指したらどうだ?占い師同士の相互占いなら、それで村役職省いたらもう、真二人が確定する。後は残った狩人二人が交互に護衛し続けたら、結構な白黒色がつくんじゃないか?」

和美が、手を打った。

「それいいわね!」と、皆の視線を受けてから、ハッと手で口を押さえた。「あ、ごめん。割り込んだ。」

佳純が、少し咎めるような視線を和美に送ってから、明生を見た。

「でも…それじゃあ明日の吊り先は?狩人はとりあえず二人残すんでしょう。グレー精査は?勘でやるの?それで縄は大丈夫なの?」

それには、カイが言った。

「僕はいいと思うよ。」佳純が顔をしかめると、カイは続けた。「だってさ、いつまでも全員生きてるとは限らないからね。狩人の護衛が指定になるってことは、占い師を狼がチャレンジ噛みでもして来たら真占い師が抜かれる可能性もあるわけだ。まあ、猫又が居るかもしれないのに噛むのは難しいかもしれないけど、無いとは言えないからね。絶対に生き残ってる初日に、占っておいてさっさと呪殺を出したら、それで明生が言うように真占い師が確定するんだよ。黒だったら黒だったで、吊ればいいわけで。内訳が透けて来るから。それに、僕達占い師のグレーって広いようでそうでもないよ?僕は7人、役職に刺さってる景清さんだけが8人だ。仮に相方が分かったらその時点でお互いに相手の白が自分の白になるから、6人になる。その中に狼が2人か3人も居るし、狐も一人居るわけでしょ?村人が白くなってくれたら、明日のグレー詰めなんて簡単だよ。後は狩人が護衛成功出してくれたら、縄だって増える。狼が狐を噛んでも増える。楽勝じゃない?やっぱり占い師の確定は急ぐべきだ。」

占い師同士の相互占い。

あゆみは、佳純がどう判断するんだろうとじっと佳純を見つめた。

佳純は、じっと考えていたが、困ったようにため息をついて、頷いた。

「…そうね。仮に今夜真狩人を吊ってしまっていたとしても、明日呪殺が出たらそれで人外が1減ってチャラだもんね。偶数進行だから縄が減らないもの。猫又と共有者が潜んでいる限り、占い師も霊媒師も狼は噛めない。だったら確実に呪殺を見分けるためにも、初日に占い師同士の相互占いをするしかないわね。じゃあ…誰を占うかは、また考えて後で言う。とりあえず、今は狩人よ。」と、皆を見回した。「これで、グレーも白先も役職者達も、全員が意見を言ったわ。ここでもう一度、狩人からの発言を聞こうか。じゃあ、さっきは伊緒さんからだったから、今度は恵令奈さん。どう思った?」

恵令奈は、それこそ皆が敵ではないかという顔をしていたが、その顔を上げた。


「…みんな、私でいいとか私を吊っとこうとか、明生さんに至っては私が真だったらすまないとか!発言順で最後だっただけだし、私が狼っぽくないなら普通狼っぽい人から吊るものでしょう?狼を残した方が狩人を噛めないかもしれないけど、結局狐が残っていたとしても、狼は噛めないのよ!数を減らしたいとか言わずに、人外っぽいところを吊ってよ!どうして私なの、納得いかない!私はただ、自分が思った事を言っただけよ!真狩人なのに、人外達だって私を吊り押してるんだから分かるでしょう!」

完全に怒っている。

それはここまで、散々皆に怪しいと言われて来たのだから、それはそうなるだろう。

絶望して悲しむ人も居るだろうが、恵令奈は怒る方だったのだ。

佳純も面食らって言葉を出せずにいると、明生が言った。

「村が勝つためだぞ?勝てば賞金が出るし、君は初日に退場して楽してるのに結構な金になるはずだ。村役職なんだろ?だったらオレ達を信じて大丈夫だ。問題ない。」

恵令奈は、ぐ、と黙る。

結局はお金が問題なのだろうし、その点では村が勝ちさえしたらいいのだ。

恵令奈は、むっつりと言った。

「…絶対勝つとは限らないじゃないの。私だって信じたいわよ?でも、そんなのこの初日に信じろっていう方が難しいわ。バイトに来たのに初日に吊られて昨日と今日の20万だけなんて。そもそもあなた、信じられてるカイ君の白先だけど、まだ二人共人外じゃないとは限らないからね?」

確かにそうだ。

あゆみは、ため息をついた。

恵令奈目線では、真の自分を追放しようとしている皆の事が、全員敵に見えるのだろう。

多分、あゆみが恵令奈でも、同じ事を思ったはずだ。

同情はしたが、今はあちこち意見に流されていては進まない。

とにかく今夜の、投票を乗り越えなければならないのだ。

佳純は、ため息をついて伊緒を見た。

「…伊緒さんは?どう思った?」

伊緒は答えた。

「私は自分が真だから、永嗣さんでも恵令奈さんでも吊れる方を吊ればいいと思ってるわ。必ず護衛成功できる盤面が出て来るはずだし、真証明できると思ってる。私を怪しむ人は、黒く見えてるわ。それは仕方ないと思う。自分が真だと知ってるのに、怪しんで来るんだもの。私の意見は変わらないわ。霊媒師では尚斗さんが怪しいと思ってる。確かに早計だったと思うわ、COのタイミングは個別に話した時だから、確かに白の数のことは分かってなかったわね。でも、グレー詰めになってから慌てて出たのは変わらないわ。いくら弁明したって、私の考えは変わらない。尚斗さんの話では、人外が2人出たのが見えたからってことだけど、それは直後に分かっていたことだったわ。どうしてそこで出なくて、話がグレー詰めになってから、しかも個別に話を聞くって言った時に出たの?遅いのよ。私たち狩人だってそうだろうと言うかもだけど、そもそもあの場は村役職を共有者が把握するために作ったものだった。霊媒師がまだ出て来るなんて共有者だって想定外だったでしょう。何を言っても後付けの弁明でしかないわ。永嗣さんが尚斗さんを庇ったことで確信を持った。恵令奈さんもそれに追随してた。私から見て対抗2人がそんな風なのに、尚斗さんを怪しまないでいろって方が難しいわ。なんなら尚斗さんを占って欲しいぐらいよ。役職COしてるからそれはないだろうけど。」

伊緒の意見はしっかりしている。

筋が通っている感じだ。

…芯が強いタイプなんだな。

あゆみは、それで伊緒の穏やかな顔の裏の性格を知った気がした。

佳純は、真面目な顔で頷いた。

「私は今は伊緒さんをそこまで怪しいとは感じてないわ。フラットな感じ。」と、永嗣を見た。「じゃあ、永嗣さん。」

永嗣は、口を開いた。

「…そうだな、おかしなことにオレも伊緒さんと同じ印象なんだよ。」え、と皆が驚いた顔をする。永嗣は続けた。「最初は、まだ霊媒師の意見も聞いてなかったし、伊緒さんが怪しむからだったら尚斗は白か、とか単純に思って話しただけで、あの時は単体精査はできてなかった。だが、ここまで聞いて来て思うのは、案外に尚斗をみんな庇うんだな、ってことかな。後から出たのは最初にみんなが思ったように黒いし、そこはマイナスだ。弁明で白く見えたかもだが、伊緒さんが今言ったように直後に出たら良かったことなんだ。だが、伊緒さんは対抗だし…そうなると、狼だったら仲間を最初から切ってるのかなって。仮にどっちかが吊られてどっちかが残った時、黒が見えたら片方は白いと見なされて残されるだろう。吊られるにしても後になる。だからかな、と思ったかな。まあ、オレ目線じゃ伊緒さんも恵令奈さんも人外だから、どっちでもいいしみんなが決めた方に入れるつもりだ。オレ吊りだけは飲めないがね。できたら護衛成功を出したいからな。」

永嗣さんも、尚斗は白くはないというのね。

あゆみは、にわかに面倒になった。

せっかく伊緒が白く見えて来たのに、また永嗣が白く見えてくる。

もう、優柔不断過ぎて自分が嫌になって、思考停止したい気分だった。

佳純が、言った。

「…もう、わからない。今夜の吊り先は、私は指定しないわ。狩人の3人の中から、ここだという所にそれぞれ投票して欲しい。もう結構話しているし…ここで、休憩しましょう。次は、投票前にもう一度集まりたいわ。8時から投票だから、7時にここに集合して。解散。」

全員が立ち上がって、それぞれ思い思いの方向へブラブラ歩いて行く。

昌平と和美は、急いでキッチンへと走って行った。

今夜はカレーかあ。

あゆみは、そんなことを呑気に考えていた。

思考停止している方が、楽だったのだ。

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