午後
そんなこんなでとりあえずその場は収まった。
昼ご飯は何とか入れ替えで午後1時にはあゆみ達もきちんと摂ることができた。
これからは、きちんと昼後や晩御飯時を考えて、議論を終わらせるようにすると佳純は宣言していた。
早めに済ませたい人は早めに行くことにして、遅めの人は遅めでそれぞれ調整しようということになった。
とはいえ、夜はもう、こんなのは懲り懲りだからと昌平がカレーを作ってくれると約束してくれて、今は数人がキッチンで野菜の処理を手伝っていた。
ここには、大きな鍋も炊飯器も完備されてあるのだ。
あゆみも大量の玉ねぎを剥いて来て、涙が止まらなくなったのでもうここまでで良いと言われて、外へ出て来ていたのだ。
外で座っていた、明生が振り返った。
「終わったか?」
あゆみは、首を振った。
「後少し。私は玉ねぎ剥いてて涙が止まらなくなったから、出て来たんです。玉ねぎ切ったら煮込みに入ると言ってたから、そろそろ落ち着いてるんじゃないかな。」
言った通り、手伝っていた数人がキッチンから出て来た。
和美が、息をついた。
「凄く大変だったわ。昌平さんが今、水を計ってたからもう出て来ると思う。時々様子を見に行かなきゃだから、席を立つのを許して欲しいわ。まあ、あのお鍋の大きさだから、なかなか沸いて来ないとは思うけど。」
和美がソファに座ると、隣りの重久が言った。
「カレーもいいが、なんかつまみになるような物も作ってくれよ。唐揚げとか乗せると旨いぞ?」
和美は、顔をしかめた。
「ダメ。唐揚げならまた明日作ってあげるから。あんまり飲み過ぎないって今朝言ったばかりじゃないの。そうね…冷凍のオクラがあったから、それを解凍してあげるわ。それで我慢して。」
重久は、ため息をついた。
「へぇへぇ。おかんみたいだな、全く。」
和美は、ムッとした顔をした。
「やめてよ、私はあなたより年下よ?せめて妹にして。」
重久は、苦笑した。
「分かったよ。ってかオレはどっちも知らないけどな。おかんも妹も居た試しはないし。」
そういえば、天涯孤独と言っていた。
あゆみがその会話にハッとすると、和美も思ったのか少し、バツが悪い顔をした。
が、すぐに気を取り直して言った。
「…ま、いいわよ。確かに私は母親だし、そう見えてもおかしくないから。でも、だったら厳しく行くわよー?」
重久は、困ったように笑った。
「おいおい、オレの母親に持ってる夢を壊すなよ!菩薩のような母親にしてくれ。」
和美は笑った。
何やら、この二人はあれこれ言い合いながらも仲が良く見えた。
歳が近いのもあるかも知れない。
佳純が、言った。
「あ、昌平さんが出て来た。」と、昌平がソファに座るのを待った。「昌平さん、お疲れ様。その他手伝ってくれた皆さんも。じゃあ、お昼の議論を始めましょう。さっきも言ったように、全員の意見を聞いて行きたいの。まずは完全グレーの人達、その次に霊媒師、そして占い師、その後白先の人達。その順番で聞いて行くわ。そして、またそこまで聞いてからどう思ったか狩人達の意見を聞きたい。その間、基本的に話している人以外は口を挟まないで。疑われたら反論したくなるだろうけど、後からにして。でないと全員終わる頃には日が暮れちゃうから。それでも時間が掛かるから、トイレに行きたい人は勝手に行ってくれていいわ。カレーの様子を見に行くのも自由よ。とりあえず、さっきも話したように、拓郎さんからどうぞ。」
拓郎は、皆に見つめられて緊張気味に口を開いた。
「…そうだな、オレはグレーはまだ全くわからないが、狩人は、皆が言うように恵令奈さんが少し怪しいかと思ったかな。でも、狼だとは思ってない。あのどっちかに合わせておこうって感じは、狂人か狐っぽいと思った。狐は狩人に出ないだろうと思われてるが、案外占われるのが嫌で出た可能性もあるかなとは思った。何しろ、大体狩人ってのはローラー掛けるんじゃなくて相互護衛させられて破綻を待つようなところがあるし、吊るにしても最後に決め打ちにされることが多いだろう。それを生き残ったら強いもんな。他は話を聞いてみないとわからない。以上だ。」
言われてみたらそうかなあ。
あゆみは、それを聞いて思った。
佳純は、頷いて公一を見た。
「じゃあ、公一さん。」
公一は、言った。
「今の拓郎さんの話を聞いて、確かになあと思ったよ。霊媒はローラーされるかもだから出るなら狂人かなと思ってたけど、狩人はすぐには吊られないって認識だもんな。確かに狐が居る可能性もある。でも、狼は必ず出てそうだよな。狩人に狂人と狐ってないだろう。だとしたら、今夜は白人外っぽいところを吊って、狼は残した方がいいよな。真と狼の組み合わせになると、狼は破綻を恐れて噛めないんだよね。つまり、二人護衛できるのと同じになるから、強い意見を出してる伊緒さんと永嗣さんを残して恵令奈さんからってのは、オレも同意だな。仮に恵令奈さんが真でも、残った狩人の正体が狼からもわからないから、すぐには噛めないだろ?時間稼ぎになりそうだよな。」
佳純は、頷いて次に重久を見た。
「じゃあ、次は重久さん。」
重久は、言った。
「うーん、みんながみんな恵令奈さんを吊りたがるのがちょっと怖い気もするが、公一の言うことはもっともだ。狼は狩人に出てそうだから、そこは残して白人外から先にって考えには同意だな。吊りきるならいざ知らず、とりあえず一人減らしておこうってことなら公一の意見で良いと思う。だからって、伊緒さんと永嗣の中に真が居るのかと言われたら、そこもわからない。狩人3人は多過ぎるから、せめて2人にしたいもんな。占い師は、カイがめっちゃ真に見えるが、カイは頭が良さそうだから思考ロックしないようにしておく。他はわからない。霊媒だって、尚斗が後に出たのは確かに怪しいと思ったが、永嗣が言ってたように後から出るなりの理由があったし、そこまでオレは怪しんでない。明日からの結果次第で怪しもうと思ってる。それぐらいかな。」
重久は、あんな風だがそれなりに考えていそうだった。
佳純は、頷いて愛里を見た。
「次は愛里ちゃん。」
愛里は、緊張気味に言った。
「みんなすごいなと思ってしまうわ。私はまだ、そこまで恵令奈さんを吊るべきとか思ってない。と言うのも、真だったら怖いと思ってしまうから。でも、確かに3人の中では、最後に発言しているのになんかハッキリしない気がする。なんだろう、様子見というか、自分の意見がない感じ?回りから浮かないようにしてるというか。煮え切らないと思われるかもしれないけど、それでもそんな真狩人もいるかもとか考えてしまったりで、迷うわ。公一さんの意見を聞いて、真でも確かに狼が残っていたら、簡単には守り先を噛めないから、それはそれで良いのかもとか思ったりもするわ。」
迷うのは、村人っぽいなあ。
あゆみは、それを聞いてそう思った。
佳純は、次に杏奈を見た。
「じゃあ、グレー最後の杏奈ちゃん。」
杏奈は、おっとりと答えた。
「愛里ちゃんの気持ちがめっちゃ分かるなと思って聞いてたわ。でも、決めなきゃならないなら、皆が言うように少しでも怪しいと思われる恵令奈さんから吊るのが良いのかも知れない。私は霊媒師に狂人が出ているのかなと思っている方だから…特に後から出た尚斗さんとか、仕事をしなきゃって焦った狂人のように見えちゃって。そうなると、内訳よね…案外、占い師に狼が出ていて狩人に狐と狼なのかなって考えてるわ。さっき公一さんが言ってたように、狐でも相互護衛で最後まで生き残ろうとするかも知れないじゃない?霊媒師は狼には出づらい気がするけどなあ。だから、尚斗さんを狼だって強く押す伊緒ちゃんが、ちょっと黒目に見えちゃうかも。それぐらいよ。」
皆がもっともそうな事を言う。
あゆみは、今の中に人外などいない気がして困った。
佳純は、ため息をついた。
「…怪しいと思うところはなかったなあ。」と、あゆみを見た。「じゃあ霊媒師の話を聞こうかな。あゆみちゃんからお願い。」
え、私から?!
あゆみは、内心焦ったが、急いで口を開いた。