お母さんの秘密
ポリーのお母さんは本当は盗賊団の頭の女でした。
でも好きでなったわけではなく、拐われてきて生きるために仕方なく頭の女になったのでした。
頭は彼女が妊娠すると興味を無くしましたが、独占欲が人一倍強いので解放するでもなく森の中の一軒家に置くことにしたのです。
彼女はここでポリーを独りで産み育てました。
それまでに自分で薬を作ったことはありませんでしたが知識はありました。
高い教育を施される身分だったのです。
月に一度、頭の子分が普通の食材や生活必需品を届けていました。
彼女は物乞いのような扱いが嫌だったので代わりに作った薬を渡していたのです。
ポリーに悲しい思いをさせないために薬屋ということにしたのです。
ポリーの父親を騎士と言ったのも可愛い我が子を罪人の子にしたくなかったのです。
ポリーのお母さんは頭に強い恨みを抱いていました。
さらに頭にはポリーが10才になった時に売ると言われていたのでポリーが美しく成長するに従って心が張り裂けそうになっていき、ついに病気になってしまったのです。
「お母さん、今夜は蛇のスープだよ!
美味しいものを食べて元気なってね。」
「ありがとうポリー…(私はもう…)」
次の日もポリーが森で薬草を採っているとアレクがやってきました。
「こんにちは、アレク。」
「こんにちは、ポリー。」
おうちの近くのお母さんの病気に効く薬草は採り尽くしてしまったので、おうちから遠く離れた場所で採っていました。
帰りが遅くなってしまったのでアレクが送ってくれるそうです。
すっかり暗くなった森の道を2人で歩いているとおうち近くの開けた丘に出ました。
夜空に満天の星。
2人とも思わず見上げると流れ星が。
それが幾つも流れていきます。百年に一度の流星群の夜でした。
「あ、お祈りしなきゃ!」
「お祈り?」
「うん、流れ星にお祈りすると願いが叶うんだって。
お母さんが言ってた。」
「…」
「何をお祈りしたの?」
「お母さんが元気になりますようにと、お母さんとお父さんとみんなで幸せに暮らせますようにと、あとはあとは…秘密!」
「秘密か。全部叶うといいな。」
「うん!えへへ」
照れたように笑うポリーが可愛くってアレクは慌てて目をそらしました。
「さあ、行くぞ!お母さんが待っているだろう。」
「うん!」
ポリーがおうちに帰るとこころなしかお母さんの顔色が良くなっている気がしました。
「お母さん!元気になったの?」
「ええ、いつもより調子がいいみたい。お腹が空いたわ。」
「すぐに作るよ!ちょっと待っててね。」
ポリーは流れ星に心から感謝しました。