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森にて

9才のポリーはお母さんと2人で森の中のおうちで暮らしています。

深い森の中にたった一軒だけぽつんとある小さなおうち。

たった2人での生活も美しく優しいお母さんとならばちっとも寂しくありませんでした。

お父さんは騎士さまで私たちのために今も遠くの国で戦っているそうです。

それを話すお母さんは悲しそうな顔をするのでポリーはお父さんの話を強請(ねだ)らなくなりました。


おうちは薬屋さんをやっています。

森で採れる薬草から薬を作って売っています。

月に1回、おじさんが来てそれまでに作った薬を全部買っていきます。

お金があっても森では使えないのでお肉やお野菜といった普通の食材をお薬の代金として置いていきます。

お洋服とか石鹸とかの生活必需品もお願いすると次の月に持ってきてくれるので不便ですが生活には困りません。


ポリーはまだ簡単なお薬しか作れないので薬草を採ってくる役目です。

でも、お料理やお掃除、お洗濯はもうちゃんと出来ます。

最近はお母さんが病気になってしまったので1人で頑張っています。

お母さんのためのお薬も頑張って作れるようになりましたからもうすぐ治ります。


薬草を採りに森を歩いていると剣を佩いて鎧を着けてマントを羽織った立派な騎士さまに出会いました。

ポリーやお母さんと同じ金髪に青い目の綺麗な顔をしたお兄さんです。

月1回、お薬を買いにくるおじさん以外の人と会ったことがなかったのでビックリしましたがお母さんに習ったとおりにご挨拶しました。


「こんにちは。」

「やあ、こんにちは。君はどうしてこんな森にいるの?お父さんかお母さんは?」

「薬草を採りにきたの。お母さんはおうちに居るわ。」


騎士さまは驚きました。

この森には熊や狼がいて盗賊も隠れ住んでいると言われているからです。


「子ども1人でこんな森にくるものではないよ。危ないから帰りなさい。」

「おうちは森の中にあるから同じことよ。

薬屋さんだからいつもここで薬草を採っているのよ。

今はお母さんが病気だから私がお薬を作らなければならないの。」

「そうか。では僕が見張っていてあげよう。

僕はアレク。君の名は?」

「私はポリー。よろしくね。」

「ああ、よろしく。いつも1人なのか。熊や狼は怖くないの?」

「これを付けているから大丈夫。」


ポリーは腰に結びつけている草の束をアレクに見せました。


「なんだいこれは?」

「これは臭い葉っぱなの。熊や狼が嫌いな匂いなのよ。

鼻のいい動物はこれを付けている限り寄ってこないわ。」


ポリーは臭い葉っぱの束をアレクの鼻先に突き出しました。


「うわ、臭ッ!!強烈な匂いだね。確かにこれは効きそうだ。」


それからポリーが薬草を採る側でアレクが見張っていてくれました。

ポリーが夢中で薬草を採っているといつの間にか毒々しい模様をした蛇が近くにいました。


「危ない!」

「待って!」


アレクが思わず剣を抜いたところをポリーに止められました。

ポリーは近くにあった拳大の石を手にとり蛇に近づくと素早く蛇の頭を叩き潰しました。

アレクが驚いているとポリーが説明してくれました。


「この蛇はすごく美味しいのよ。

精もつくから持って帰ってお母さんに食べさせてあげなきゃ。」

「お、おう…」

「今日はありがとう。森の中で人と出会うこともないから楽しかったわ。

じゃあまたね。」

「うん、またね。」


ポリーはもときた道を帰っていきました。

しばらくその場に残っていたアレクのもとに立派な体格の大人の騎士が来ました。


「殿下、あの者は?」

「ポリーというらしい。森で母親と暮らしていると言っていた。」

「盗賊団の関係者でしょうか?」

「屈託なく話していたし、あまりにも無防備だ。

母親は分からないが彼女は何も知らないと思う。

一応、住居を探しておいてくれ。」

「御意。」


アレクはアレクサンダーといってこの国の王子さまでした。

12才で王さまになるための勉強をしています。

今は騎士としてこの森に隠れ住む盗賊団の討伐に参加しています。

大人の騎士は騎士団長さんでした。

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