Vtuberの僕、声優の彼女と同棲します ~クラスの地味な女子が実は人気声優だった!?あ、僕はVtuberやってます〜
――またあの夢を見た。
『大きくなったら結婚しようね!』
『約束だよ!』
『うん!』
幼ながらにそんなことを約束するなんて随分とませていたと思う。夢はその約束のところだったり、一緒に遊んだ時のものだったり、正確には覚えていないがそんな感じだったと思う。
そうして俺は目が覚める。
「またあと夢か……あの子はどうしてるのかな……」
そんなことを呟きながら学校へ行く準備を進める。今年から高一となったため、勉強の難易度も少々上がったが今のところはついていけているので、自分の日々の活動に支障は出ていない。
僕は去年からVtuberとして活動している。過去に、夢でも未だに見るあの子と家の事情で離れ離れになってしまった。しばらくは傷心していたが、たまたま見かけたVtuberというものにハマり、心にぽっかりとできていた隙間を埋めることが出来た。
「まだまだ未練があるから、こうやって夢に見るのかもしれないけどね」
そう言いながら苦笑する。そんなことを考えているうちに学校へ行く時間が迫っていたため、急いで準備を終え、軽食を口に含んで家を出る。
「おはよう、春樹」
「おう。おはよう、翔」
始業時間には間に合い、中学からの親友である河野春樹と挨拶をする。
春樹とは中学のときに出会った。そして、以前からの趣味であったVtuberのことで意気投合し、そのまま仲良くなっていった。俺自身がVtuberに応募しようと考えていると漏らしてしまった時も否定せずに、応援してくれた。昔のことを思い返していると春樹から声をかけられた。
「ん?どうかしたか?」
「いや、何でもないよ。気にしなくて大丈夫」
「んー、ならいいか」
その後、二人で少し話をしていると担任の教師が教室に入ってきた。
「出席を取るぞ」
そう言って担任は出席を確認していく。
「白星翔」
「はい」
僕の名前を呼ばれたため、返事をする。その後も出席を取っていくと、記憶にない少女がいることに気付く。
「蓬莱茜」
「はい……」
彼女は小さな声で返事をした。高校が始まってまだ数日とはいえクラスに覚えのない人物がいた事に驚いたが、それ以上に彼女をどこかで見たことがあるような錯覚に襲われた。
彼女が誰なのか思い出せずにいると、気付かないうちに朝のHRが終わっていた。そのまま僕は授業の準備をしてから思考を再び動かしたが、思い出すことは無かった。
そのまま学校が終わり家へと帰宅する。今日は配信の日なので配信の準備をしていると、一通の連絡が来ていたことに気付く。
『今日の夜8時から少しお時間を頂けませんか?』
『えぇ、構いませんよ』
マネージャーさんからの連絡だった。今日の配信は夜の6時から7時までの予定なため、問題ないと返事をし、準備を進める。
そうして時間となり、今日も今日とて配信を開始した。
「みんな、こんそら〜」
こんそら
こんそら〜
こんそらー!
「早速みんな来てくれたね。ありがとう!それで今日の配信は――」
僕は固定の挨拶をし、配信内容を話していく。
そもそも僕はVtuberの『星夜空』として、1年ほど前から活動させてもらっている。というのも、元々好きだったVtuberの会社が2期生募集中と応募を受け付けていたのだ。
せっかくだからと受けてみると結果は合格。デビュー後はホラゲーの絶叫実況や親フラなんていう恥ずかしい放送事故なんかをして少しずつ話題に登っていて、今では登録者30万人と人気と言っていい程には登録者、応援してくれる人がいる。
「そういえば高校生活が始まってから数日経ったんだけど、未だにクラス全員の名前が覚えられてないんだよね……」
俺も覚えてないから大丈夫だよ
私も仲良い子以外は知らないわ……
しょうがないしょうがない
今日学校で蓬莱さんという人を知らなかったことを、ぼかしながら話題にする。
「でも知らない人の中で1人だけ妙に見覚えのある人がいたんだよね〜」
確かにそういうことたまにあるよな
デジャブ的な感じか
もしかして生き別れの兄弟……!?
↑いやクラスメイトだから同学年だろ
それもそうかw
「いやいや、生き別れって……。まぁ、過去に1人だけ仲良かったのに別れることになった人がいたなぁ」
それは辛い
元気出せって!
Vtuberとしてのキャラでは明るめに振舞っているため、少し寂しそうな声になったことでリスナーに心配をかけてしまう。
「いや、もう過去のことだし大丈夫だよ!それにもう5年以上前のことだし」
5年って言うと小学生くらいに別れたのか
さっき言ってた人がその人の可能性微レ存?
さすがにないだろ
そんなことを言われ、僕はハッとした。確かに言われてみれば蓬莱さんはあの子の面影があるような……。まぁ、さすがにありえないと判断する。
「小学生の記憶だからね〜。もうほとんど覚えてないよ」
それもそうだな
そういえば高校の勉強ってどんな感じ?
「勉強?今は基礎の復習みたいなことやってるよ」
そうしてリスナーの質問に答えたり、自ら話題を出したりと、配信時間の1時間があっという間に終了した。
「あっ、時間だね!今日はここまでだよ!みんな見てくれてありがと〜」
もうそんな時間か
推しの配信は時間が経つのが早い
リアタイできて良かったよ!
「みんなありがとう!それじゃ、おつそら〜」
おつそら〜
おつそら!!
そうして僕は配信を終了する。
「蓬莱さんがあの子……」
配信中に言われたことが気になってしまうが、他人の空似の可能性の方が高いし、何よりもあの子のことをほとんど覚えてないために判断のしようがなかった。
「まぁ、気にしても仕方ないか。8時までにご飯食べてお風呂済ませようかな」
そうしてるうちに8時になり、マネージャーと電話を繋ぐ。
『こんばんは空さん』
「こんばんはマネージャーさん」
『まずは配信お疲れ様です』
「えぇ、ありがとうございます。それで連絡ってなんでしょうか?」
マネージャーさんは一呼吸置いてから声を発する。
『……コラボ番組をやってみませんか?』
「コラボ番組ですか……?」
『はい。と言っても、Vtuber同士でのものではなく、声優の方とのものですが』
「えっ!声優さんとの番組ですか!?」
思いがけないことを言われ、僕は大きな声で聞き返してしまう。
『はい、そうです。若手で人気なとある声優と、Vtuberの若手で1番人気のある空さんでやる、週に1度30分の番組です』
「若手の人気声優さんとの番組……」
僕は動揺し、マネージャーさんの言葉を反芻する。
『嫌ならば断ってくれていいですし、リアルでの事情があった場合も断ってくれて構いません。先方も1週間ほど返事を待ってくれると言っています』
「向こうがですか?」
『はい。そもそも今回の番組でVtuberの指名をしてきたのは向こう側の人です』
「そうなんですか……」
どうして指名されたのかは分からないが、何か評価をしていただけたのだろうと思った僕は意を決して返事をする。
「そのお話、受けさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
『えぇ、ありがとうございます。後日、撮影の日程などは連絡させていただきますね。それでは連絡は以上となります。それでは』
「ありがとうございました。ではまた」
そう言って僕は通話を切る。
「せっかく指名してもらったんだ。それにやるからには頑張るぞ……!」
そう決意し、その日は眠りについた。
次の日、マネージャーさんから日程の連絡が届いた。撮影日は必ず空けなければと、予定を確認した。そのまま数日が経ち、撮影当日となった。
「マネージャーさん、おはようございます」
「空さん、おはようございます。本日は頑張りましょう」
「はい!」
そうして僕たちは撮影現場へと足を踏み入れた。
「本日はよろしくお願いします!」
「あぁ、よろしく頼むよ」
向こうのお偉いさんと思しき人に挨拶をし、準備へと入る。
しばらくして番組の相方をするという声優が入った。そして僕は自分の目を疑うことになる。
「へ……?湊あかり?」
若手の人気声優が来るとは聞いていたが、若手ナンバーワンが来るとは誰も予想できないだろう。それに加え、彼女は今期放送されている、僕が前から好きだったアニメのヒロイン役をやっているのだ。これを驚かずにいられようか。
「っ!あなたが星夜空さん……?」
どうしてか、一瞬僕のことを見て動揺したように見えたが、普通に質問してきたので答える。
「はい、星夜空です。本日はよろしくお願いします」
そのまま撮影を終えたが、向こうのお偉いさんがマネージャーさんと会話をしているのが耳に入る。
「それにしても受けていただけて助かったよ」
「いえ、こちらもしても驚きはありましたが、このお誘いは大変魅力的でしたので、お気になさらず」
「ははっ。今まで会社に従順でとてもいい子だったあかりちゃんに、今後の道を広げるためにVtuberとのコラボ番組のことを持ちかけたら突然この人とやりたい!なんて言うんだから、こちらとしてもすごい驚いたんだよ」
そんなことをマネージャーさん達が話してるのを聞いていたが、ふと横を見ると、顔を真っ赤にした湊あかりさんがいた。
「うぅ……恥ずかしい……」
「あっ、えっと、僕は気にしてませんし、何も聞いていないので大丈夫ですよ」
「いや、あのね?元々私、君のファンだったんだよ……だからこのお話が持ちかけられた時に、立場を利用して君に近づこうとしたんだ」
「そう、だったんですね……」
いきなりそんなことを言われ、複雑な、よく分からない感情が胸の内に生まれる。
「ま、まぁ、まだ知ってからは短いですが僕も湊さんのファンですからおあいこですよ」
ファンというのは本当だ。好きなヒロイン役をやっていて、その声が見事にイメージと合致してから、彼女のことが気になって他作品も調べたりしている。
「そうなんだ……。えへへ、私たち一緒だね!」
はにかむように笑いながらそんなことを言ってくる彼女に思わず息を飲む。しかし情けない気がしたので動揺を見せないように振る舞う。
「そうですね。えっと、これからよろしくお願いしますね」
「うん!それから敬語じゃなくても大丈夫だよ。これから末永く一緒にやるんだからね」
彼女のそんな言葉に含みを感じたが、ひとまず肯定しておく。
「うん、分かったよ。改めてよろしく!」
「こちらこそ!あっ、そうだ。何かあるかもしれないし連絡先交換しとこ?」
「了解」
そう言って連絡先を交換したが、僕は違和感を受ける。
「蓬莱茜……?それにこのアイコンの場所……」
ふと顔を上げると、彼女はじっとこちらを見ていた。
「えっと、どうかしたかな?」
「ううん、何でもないよ。……なんで思い出さないかなぁ」
何かあるならば伝えてくれるだろう。その後に何か言ってた気がするが気のせいだと判断する。
「それじゃ、今日の撮影分は終わったし解散かな?」
「……そうだね。今日はありがと!楽しかったよ!」
「僕の方こそありがとう!」
そう言って僕たちは別れることになった。
翌日、何事もなく学校に着き、出席を取っていると僕は驚きで声を上げそうになる。
「蓬莱茜」
「はい……」
「っ!?」
何とか息を止め、留まったがこれは気のせいではないだろう。声もよく聞けば本人だ。すると彼女がチラッとこちらを見た気がした。
『今日の放課後、校舎裏で待ってるね』
そんなこと連絡がタイミング良く来たため、疑念は確信へと変わる。蓬莱茜、彼女が湊あかり本人だ。
その日は授業が頭に入ってこなかった。幸いまだ中学の内容でなんとかなる範囲だから自分でやればなんとかなる。
そうして迎えた放課後、僕は言われた通りに校舎裏へと向かった。
「来たね。その様子だと思い出してくれたかな?」
彼女の言い回しに違和感を感じるが、気にせず答える。それにこのやり取りでも、既に彼女は素の状態で話している。学校ではつけているメガネを取り、長く伸びた前髪もセットしている。
「うん。まさか君がそうだったとはね……」
「ふふっ、やっとかぁ。入学してからずっと待ってたんだからね?」
先程は気にしなかったが、僕の中に新たに1つの疑問が浮かぶ。
「えっと、待っていたってどういうこと?」
「えっ……?それを伝えるためにここに来たんじゃないの?」
「えっと、僕は君が湊あかりだと気付いたことを伝えに来たんだけど……」
「……へ?」
彼女が口を開けたまま停止してしまう。なんだかこんな表情に見覚えがある気がするのは気のせいだろうか。そんなことを考えていると彼女が再び動き出す。
「いや、なんで!?名前も、アイコンも見たのになんで思い出さないの!?」
「えっと、何を思い出すのかは分からないけど、あのアイコンはどこかで見たことあるような……」
そんなことを口にすると彼女がスマホを操作し、1つの画像を見せてくる。
「これも覚えてないの!?」
「これって……!?」
それはよく夢に見たあの子と僕のツーショット写真だった。そうして僕は失っていたピースがハマったかのように、全ての記憶が繋がる。
「茜ちゃんなのか……?」
「そうだよ!全く、もぉ!翔くん、思い出すの遅すぎだよ!!」
言われてみれば、目元や雰囲気が記憶の中の彼女とそっくりだ。話し方も少ししか変わっていない。彼女は、彼女こそが幼い時に結婚すら約束した、あの子だったのだ。
「ふぅ、ようやく思い出してくれたかぁ。知らない間にVtuberになってたのもびっくりだよ〜」
「それはこっちのセリフだよ。気付いたら茜ちゃんが人気声優になってたなんてさ」
「まだまだ私は新人だよ。だからこそ、今後ももっと頑張らなきゃだけどね!もちろん応援してくれるよね?」
「もちろん。過去にすごく仲が良かった子が頑張るんだ。応援しないわけが無い」
「ふふっ、ありがとう!」
そうして、離れていた時の話をしながら、放課後の人のいない校舎を抜け、帰路へ着く。
「ふふっ、最近はいいことばっかりだなぁ〜」
「僕は驚きの連続だよ……」
「でも嫌じゃないんでしょ?」
「そうだね」
そのまま二人で歩き続けていると分かれ道に着く。
「僕はこっちなんだ」
「あっ……私は逆だ……」
「そんなに落ち込まないでよ。また会えたんだし、これからも時間はたっぷりあるんだしさ」
「そうだね……。そういえばだけど、あの約束ってまだ覚えてる?」
彼女はそう言って、不安そうな表情をする。
「うん、覚えてるよ。なんだか恥ずかしいな」
「あのさ……あの約束を叶えたいって私が言ったらどうする?」
「えっ……」
――つまり結婚をしないか、ということだ。
「……いや、ごめんね。でも伝えておきたかったの」
そう言って切なそうな表情をする彼女を心から愛おしい、守りたいと思っている自分がいることに気がつく。
「僕もさ、本当のことを言うと未だにあの時のことが忘れられてないんだよね」
「えっ?」
「今でもたまに夢に見ては、あの子は、茜ちゃんはどうしているのかなって考えてるんだ」
「うん……」
「嫌だ、なんて気持ちは無いんだけど、まだ再開したばかりでいきなりというのも早い気がするんだ」
「そうだね」
僕は深呼吸をし、勇気をふりしぼり今の想いを伝える。
「だからさ、僕と恋人から始めてほしいんだ」
「っ!こんな事言うのも変かもだけど、私でいいの?」
「君がいいんだ」
「5年間、翔くんのことを忘れなかったような重い女だよ?」
「それは僕も同じだよ」
彼女は嬉しそうな、照れくさそうな表情で俯いてしまう。
「さっきも言ったけど、まだまだ時間はあるんだ。これからも末永くよろしくね?」
彼女の顔を覗き込むように見て、目を合わせてそう伝えると、熱でもあるのかと思うほどに顔を真っ赤にしてしまった。
「今日の翔くんすっごく積極的……うぅ……」
「い、いや、全部本音とはいえ、勢いで色々と言っちゃって僕もすっごく恥ずかしいんだからね?」
僕は元々こんなことを言うタイプでは無いため、今になってあんな発言をしてしまったことを恥ずかしく思う。しかし、口にしたことは全部本音であるというのも事実だ。
そのまま二人で顔を赤くして黙り込んでしまうが、しばらくして沈黙が破られた。彼女のスマホに連絡が届いたようだ。
「あっ、えっと、出るね?」
「う、うん」
そう言って彼女は僕に背中を向け、電話に出た。
『茜、昨日は色々言ってたけど結局どうなったの?』
「お、お母さん!なんで今かけてくるの!」
『あら?今は不味かったかしら?』
「今はダメ!ほんとに!それじゃ切るからね!」
『あっ、ちょっと待って。翔くんそこにいるんでしょ?』
「な、なんでそれを……」
『茜ほど分かりやすい人はいないわよ』
「むぅ……代わればいいの?」
「えぇ」
彼女ら2人の声が大きかったため、内容は聞こえていた。
「僕が代わればいいのかな?」
「うん……お母さんがごめんね」
「いや、大丈夫だよ。それに久々に話もしたいしさ」
僕は茜からスマホを受け取り、通話を代わる。
「はい、もしもし」
『翔くん、久しぶりね!随分と大人びた声になったわね』
「えぇ、5年も話してませんでしたからね」
『ふふっ、そうだ、茜は迷惑をかけてないかしら?』
「大丈夫ですよ。まぁ、相変わらず抜けているところもあったりしますが」
『そうね……。あ、翔くんの両親は元気にしてるわ』
「えっ?何故あなたが……」
僕の両親は関西の方に出張となっている。僕は地元を離れるつもりがなく、Vtuberとなり都心を離れる訳には行かなかったために一人暮らしをしている。
『あら?聞いてないのね』
「はい、そもそも月に1度しか連絡を取っていませんし」
『そうなのね。あ、そうだ。茜がそっちに1人で行った理由知りたい?』
「ちょっと!お母さん!!」
僕からスマホを取り返そうとする茜を躱し、疑問に思ったことを聞いてみる。
「えっ?そもそも一人暮らしなんですか?」
『あら、聞いてないのね。あの子、翔くんに会いたいからって、声優の活動を口実に一人暮らしを要求してきたのよね』
「そ、そうだったんですね……」
嬉しいような、恥ずかしいような感情に見舞われながら返事を返す。
『でもあの子に一人暮らしなんてできるのかまだ不安なのよね……。そうだ!どうせなら2人で一緒に暮らさないかしら?』
「「えぇ!?」」
近くで抗議の目を向けていた茜にも聞こえたようで、2人していきなりのことに驚く。
『白星さんもいいわよね?』
『あぁ、むしろ俺達も翔が一人暮らしすることは心配だったからな。賛成だ』
「え!?父さん!?」
『おう、翔。元気にしてるか?』
『お母さんもいますよ〜』
「えぇ……」
驚きを通り越して唖然としていると、勝手に話が進んでいってしまった。
『翔くんのマンション、もともと家族でも住めるくらいの広さみたいだし、色々と手続きは進めておくわね』
「お、お母さん……」
こうなった時の茜のお母さんは止められない。過去に僕も巻き込まれた時にそう理解した。
その後色々と話していた気がするが、何も頭に入ってこなかった。
『それじゃ電話切るわね。今日は話せて楽しかったわ。これから茜のことよろしくね』
「は、はい!」
そうして嵐は過ぎ去って言った。特大の爆弾を残したまま。
「えっと、本当にこれから同棲するのかな……?」
「お母さんだもん……絶対もう手を回してるよ……」
かける言葉を探していると、彼女は吹っ切れたような表情でこんなことを言ってきた。
「いつかは結婚するんだもん、それが少し早くなっただけと考えよう!そうだ、せっかくだし一緒に暮らして色々とお互いのことをもっと知れるかもしれないしね。お母さんには感謝しなきゃ……」
最後の方はだんだんと小声になっていった。
「でもやっぱり恥ずかしいよぉぉお!!!」
僕も同じ気持ちだよ!!そう心の中で叫ぶ。これから好きな人とひとつ屋根の下で過ごすなんていきなりすぎて、もはや脳が理解できていない。
「マジですか……?」
そうして、Vtuberである俺と声優である茜の勢いで決まってしまったいちゃラブ同棲生活が幕を開けた。
まず初めに、ここまでお読み頂きまして誠にありがとうございました。
自身初の短編作品です。
私自身が小説を書き始めたばかりで未熟者であり、短編という1つの話の中で伝えたいことや描きたいシーンが頭の中にはあるもののとても難しかったです。
そんな中、私の作品を見つけ、読んでくれた皆さまには感謝の念に堪えません。皆さんが読んでくれる事が励みとなります。今後も精進していきますので、どうぞよろしくお願いします!