08 レースン皇国
出発にあたり、服装を以前の紺一色にした、聖騎士4傑には、聖騎士のような白の服装である必要はなく、あくまでも暗殺部隊なのだ。そして、聖騎士を名乗ってはいけなく、旅人として暗躍しなければならない。武器、魔法も聖属性で戦わないといけない規則もなく、暗殺者として生きるのみである。
教会の邪魔になる輩は、暗殺対象になり、大司祭から命令が下ると、暗殺に乗り出す事もしばしばある。
教会関係者は他国に行くと、その国の教会に立ち寄り、現状を教国に知らせる義務を負う。又、ジンは冒険者の為、滞在期間を冒険者ギルドに報告しないといけないのだ。
今、向かっているのは、レースン皇国だ。皇都迄、距離700キロメートルと言ったところか。
転移で行きたいところだが、行った事がある場所にしか転移は出来ない為、今回は徒歩で行く事にした。乗り合い馬車もあるが、1人の方が楽なのだ。そして、旅の途中で魔物を討伐出来れば、ギルドで換金出来ると言うものだ。
都市、町への近道は案外、危険な森を通らなといけない事が多く、ジルは率先して危険な森に入る。森から出て来ると200体の魔物が手に入る事もある。
取り合えず、どこかの国の住民権を買う為にお金を稼ぐ事にした。洞窟から持って来た古い硬貨、新硬貨に換金して貰ったお金はなるべく使わないようにし、次世の為に残すようにした。
森の中を縮地で木々を避けながら、走る。魔物に出くわせば、国宝【雷無剣】が振るわれる。横殴りする、縦割りにしながら縮地で何事もなく走る。魔物は勝手に空間収納ボックスに入っていく。国宝【雷無剣】は内部を切断する剣だ。皮膚、甲羅等、固い物は切らずに内部だけを斬る、その為、端から見ると、空振りのように見える。
ジルの持ち味は、無尽蔵とも言える、体力と魔力である。1週間、走り続けても疲れない体力と、1か月間魔法を使い続けても魔力欠乏症にならない魔力にある。
こういった体力と魔力である為、パーティー等に入る事を避けている。体力と魔力であれこれ聞かれるのが嫌なのだ。今の魔法は何だ? 今の体術は何だ? うざい事この上ない。
さてと、もうそろそろ森を抜けても良さそうだぞ。
森から出て、直ぐに転移魔法陣を地面に描く。転移魔法陣がすっと消えた、転移魔法陣作成が成功した証拠だ。
現在、皇都の城壁門前に辿り着く所だ。首都から皇都まで2日掛かった事になる。
皇都の城壁は、首都の2倍、200メートルの高さがあり、掘りも30メートルはありそうだ。城壁門前は馬車隊30体は並んでいる状態で、大商人が来ているようだ。
馬車隊の護衛の1人が気さくに話しかけて来た。
「悪いな、坊主。ローレンス商会の馬車隊だ、少し時間が掛かるかもしれねえ」
「いえ、お構いなく」
貴族用の城壁門に行き、冒険者ギルドカードSSSを衛兵に見せて、中へ入る。
冒険者ギルドカードと共に、このカードは本物という証明書も冒険者ギルドに発行して貰っていた。
城門壁を潜り、中に入り教会を見つける。大通り沿い、一番奥にそれはあった。首都と全く同じ建物で、分かりやすい。建物が違えば、違う宗教かも知れないからだ。冒険者ギルドも同じ列にあり、後で寄ろうと思った。
大通りは、夕方だからだろうか人は少ない、教会の中に入る。ステンドグラスが若干違う、内装はほぼ同じだ。
司祭が近付いて来た。
「どのような御用件で」
聖騎士4傑の紋章を見せて。
「大司祭様に御挨拶しに来た」
「聖騎士4傑は教会に立ち寄らないで頂きたく。聖騎士4傑は教会関係とは関わっていないと言うのが通例です」
「はい、分かりました」
そりゃそうだ。聖騎士4傑は暗殺団だ、公に教会に出入りしていたら、教会が怪しまれる。
教会から出て、冒険者ギルドへ行き……。んっ! 暗殺部隊が滞在期間を言うのも可笑しな話だ。冒険者ギルドは依頼掲示板を見る事だけにし、そのまま食堂屋を探す事にした。冒険者ギルドに入り、依頼掲示板を見ていると、受付嬢がやって来て。
「SSSのジルさんですか?」
衛兵から冒険者ギルドに報告が入ったのだろう。
「あぁ、俺がジルだが、何か?」
「ギルド長室迄、来てください」
何か、厄介事かな。
2階に上がり、ギルド長と書かれた立て札の部屋をノックした。
「入りたまえ」
ドアノブを回し、扉を開けた。
「失礼します」
「君が、SSSのジルだね」
「そうですが、何か御用でしょうか?」
「規則では、冒険者は違う町に行くと、滞在期間を言う事になっているんだが」
「滞在期間を言う前に、どんな依頼があるか気になりまして、依頼掲示版を見ていました、遅れまして申し訳ありません」
「まぁいい。SSSの依頼が溜まっているのだ」
「はぁ、どんな依頼でしょうか?」
「まずは、キングトータス、オークロード、メデューサ、バジリスクロードの討伐だ。一番厄介なのはどれかね」
「オークロードですかね」
試されている事が丸わかりで苦笑しそうだ。
「良く分かっているな。オークロードは群れを作る。オークロード迄に辿り着くのが大変なのだ」
「いつからですか?」
「いま直ぐと言いたい所だが、君も準備があるだろう。4日後にお願い出来るか?」
「はい、分かりました、4日後、ここに来ます」
それよりも飯だ。ここに来て何も食べていない。目的はグルメ旅なのだ。
城壁門に立っている、衛兵に訪ねた。ここで一番旨い、食堂はどこかと。
「そりゃ、ミヤケ食堂だな。そこのカレーは抜群だ」
カレーがあるんだ。地球では当たり前にあるが、町には無かったぞ。転生者がやっている店か?
衛兵に場所を教えて貰い、食堂屋に向かい開いていたので入る。
カウンターに座り、ライスカレーを注文する。
「こ、これは。甘口カレーだ」
甘さに中に、ピリっとした刺激があり、これはこれで、旨い。
この星では辛い物が普及していないから、辛さに抵抗があり甘くしてあるのだろう。なるほど。今晩はここに泊り。明日はビーフカレーを頼もう。
翌日、早朝はビーフカレーを頼み。昼はオムライスを、夜はラーメンを頼んだ。
翌翌日、早朝はサンマ定食を頼み。昼は親子丼を、夜は刺身定食を頼んだ。
ここの亭主は地球から来たのだろう。やったぜベイベー。