03 アリリとの再会
洞窟を出ると、すっかり夜更けになっており、漆黒の闇だった。木々が夜空を遮り、前方が全く見えない。
「洞窟にでも泊るか」
先程の金銀財宝の元に戻り、眠りに就く。
「お前か、わしのお宝に手を出したのは」
上の方から声が聞こえて、上を見ると、コウモリがいた。岩に足を掛け、逆さまで話しかけて来た。
「バンパイアか。どうやって入って来た」
「お前が入ると同時に入ったのだ」
「お前の方が泥棒だろう」
「お宝を置いていくのなら見逃してやろう」
「人の話しがわからん奴だな」
「お前はここで、死ね!! 行くぞ! 『超音波弾』」
『重力障壁』
ジンは『重力障壁』で『超音波弾』を防ぐ。
「此方からだな、『転移斬』」
バンパイアはコウモリになり、『転移斬』を避けて上空に逃げた。
「空に飛んでも無駄だ、『重力波』」
バンパイアは空から重力により、地面に押し付けられた。
「ぐっ! 動けん」
「『重力波』、100G」
「ぐぁ、死ぬ。やめてくれ~」
「まだまだ、上げていくぞ」
「参った、頼む、やめてくれ、お願いだ」
「2度目はないぞ、分かったか?」
「分かった、2度としない」
『解除』
「お前、弱いんだから、相手見てから喧嘩売れよ」
「分かった! 『超音波弾』」
ジンは手の平で『超音波弾』を遮り、握りつぶした。
「2度目はないと言ったよね、『インフェルノ』」
「ぐわーーー」
「もっと上げるよ『ハイインフェルノ』」
「2度としない、やめてくれ~」
バンパイアは灰になり消え、魔核は空間収納ボックスに入れた。
こいつ『ハイインフェルノ』まで使わせるとは、バンパイアエンペラーか?
「いいや、もう寝よう」
翌日、早朝。洞窟の外は晴れやかだった。小鳥の囀りが聞こえ、木々からの木漏れ日が今日は、晴れだと言っているようだ。
さてと、ラステリア王国の首都に向かおう。
縮地を連続で行い、ラステリア王国の首都には1日で辿り着く事が出来た。縮地に疲労回復と俊足のバフを掛けて、3日の所を1日に短縮出来たのだ。
首都の城壁は高さ100メートル位で、掘りは30メートルはありそうだ。
首都とあって、城壁門前では長蛇の列が続いていた。昔の方が争いが頻繁に起こっており、城壁100メートルは短い、掘りの30メートルもそう深くないなと言う感想だ。
最後尾に並び、4年前から書いている本を読む。本は防御、攻撃、商人の心構えから王の民政等、いろいろな分野に分かれて書いてある。
今は旅人だ。魔物との闘い方、商人の会話術をおさらいしている所だ。
城壁門に近づくに従い、心配になった。お金が古くて使えないんじゃないか?
そう言えば、これまだ使えるのか? 【人】の時代に冒険者ギルドに登録してあったのを思い出し、冒険者ギルドカードを空間収納ボックスから取り出した。
衛兵の所まで来た。
「身分証明書を」
「無くしました」
「銀貨1枚だよ」
「はい」
銀貨1枚を取り出した。
「おい、こんな古いお金、使えないぞ」
「では、これでは」
冒険者ギルドカードを見せた。
衛兵は顔を真っ青になり、衛兵所に駆け込んだ。
なんだ?
「こっちに来い」
衛兵所に通された。連行されたのか?
◇
「これは、どこから拾って来たんだ?」
ここは衛兵所の中の取り調べ室だ。壁と机に椅子があるだけの部屋だ。
衛兵は俺の冒険者ギルドカードを、指で摘んでひらひら、させながら怒気を含ませながら言った。
「俺のだが」
「今の時代、冒険者SSSはいないんだ」
「だが、いるからしょうがないだろう」
「これは、300年前のジル王が所有してたものだ」
「俺が、ジルだが」
「嘘を付くな」
「前前世が、ジル王なのだ。前前世があるのだからいても可笑しくないだろう」
「証拠はあるのか?」
「う~ん、ここにアリリがいるはずだ、長寿のハイエルフだから生きていると……思う」
「アリリ様は、今、宮殿魔法師団長になっている。お前なんかと、会わせる訳にはいかないぞ」
「では、思念。『アリリ、ジルだ。衛兵所に連行されている。助けてくれ』」
数分後。
「アリリ様が、いらっしゃいました」
「アリリ様、何用で?」
「ジルが捕まっているらしいので、来ました」
「はぁ、ジルとはこいつの事で?」
「ジルの身元保証は、私がするよ」
釈放され。現在、アリリと大通りを歩いている。もう夕暮れだ。酔っ払いや、急ぎ足で帰る者、店を畳んでいる者等、さまざまだ。
「今日は、家に泊って行きな。ジル」
「あぁ、迷惑掛けるな」
「あんたとは、大賢者の時からの付き合いだからね」
「アリリは、何歳なんだ?」
「私に年を聞いて生きている者は、あんただけだよ」
「突然、いなくなった経緯を話して貰うからね」