よく分からない相関図が出来上がる*(相関図絵有り)
今回結構長いです。
王宮の官吏であるナディアは最近、男共の様子がおかしい事に不可解さを感じていた。
「あ、もう昼か。俺飯食ってくるわ」
いち早く立ち上がったのは護衛団長のカトラ。
彼は最近、昼になるとこうやって一人仕事を抜ける。
前は隙あらばナディアとお近付きになろうとしていた男が、最近では全く声をかけて来なくなった。
恐らく他に気になる女が出来たのだ。
単純で分かりやすい。
昼食を済ませ仕事に戻ると宰相のマッシュが書類を持って正面からやって来た。その手に持たれている仕事量にナディアは首を傾げた。
いつもなら前が見えない程の書簡を抱えているマッシュが今は手に抱えられる程度の量しか持っていない。
そういえば、この前は終わらないナディアの仕事を手伝ってくれた。本来なら彼にそんな余裕あるはずもない。
てっきりナディアの気を引きたくて無理をしていたのかと思っていたのだが、どうやら本当に余裕があったらしい。
・・・そして、もう一つ気になっているのは・・・。
「ナディアちゃん!どうした〜?ボーっとしてぇ?」
「キャッ!シャルラーニ!?貴方ぁまた人に戻れてたんですぅ?」
魔王の鏡、呪われた男シャルラーニである。
「なんだか面白くなさそうな顔、してるなぁ?何か嫌な事でもあった?」
人の話を聞かないシャルラーニにナディアは普通の会話を諦めた。コイツは鏡の時から話が通じなかった。
「最近〜なんだか皆おかしくないですかぁ?護衛団長も宰相もコソコソ何かしてるみたいなんですぅ」
「ほうほう?それは面白そうだなぁ?じゃあコッソリ何やってるか覗いてみる?」
ウキウキ顔でそんな事を提案されナディアは暫し考えた。
エメが魔王を引き止めてくれている貴重な時間を割いてまで興味があるかと問われれば答えはNO。
ナディアは奴等に興味はなかった。
「特別に俺の鏡の中に入れてあげるよ?」
「それはとても興味深いですぅ!連れてって下さい〜!」
が、ナディアはシャルラーニに関しては興味深々であった。
彼の人の姿を見た時からナディアはシャルラーニが気になっていた。ぶっちゃけ顔が滅茶苦茶タイプだった!
「ナディアは可愛いなぁ〜。エメもこれくらい素直だったらなぁ〜」
「ん?エメ様がなんですぅ?」
「ううん?じゃあ明日お昼前に迎えに来るな?」
(シャルラーニと親密になれるチャンス!)
ナディアは明日を楽しみに自分の執務室に向かうのだった。
*****◆*****◆*****◆*****◆
ある日の昼、エメは魔王とのお喋りを終えると用意したお弁当を持って王宮の官吏達が利用する裏庭にやって来た。
その一番奥のベンチに腰掛けると辺りを見回し、お弁当を開く。
本来ならちゃんとエメ用の昼食が用意されるのだが美容に気を使う魔王のが料理長に毎回無理難題を言い特別メニューを作らせていると知ったエメは昼食を作ってもらう事を辞退した。
魔族の食事は人間の食べる物とは少し異なっている。
彼等が身体に良いとされる物は人間には毒であったり身体に害がある物も多い。
しかし、こちらの国にも人間が口に出来る食材がちゃんと手に入る為、エメのご飯はそれで作られる。だが、違う種類のご飯を朝昼晩と作って貰うのは些か気が引けた。
その為、料理長に昼食は自分で好きな物を作って食べたいとお願いしたのだ。
怒られるかと思っていたが料理長は快く、その申し出を受け入れてくれた。
いや、寧ろ泣いて喜ばれた。
厨房の大鍋には、よく分からない黒い液体がボコボコと泡を噴き、そこから怪しげな足がいく本も突き出していた。
エメは魔王の食事には金輪際一切口をつけない!と自分の中の注意事項に書き込んだ。
「おう。今日はちゃんと時間通りに解放されたみてぇだな?」
「あ、カトラお疲れ様。カトラの分もあるよ」
最近、エメにはある秘密が出来た。
実は、お昼に魔王から解放されるこの時間、カトラとコッソリ会っているのだ。勿論この事は魔王や他の者達には黙っている。
「今日はちゃんとお肉一杯挟んで来たよ。メープルとシロップは野菜好きなのに、やっぱり皆それぞれ好みが違うんだね?」
「まぁな。アイツら草食族だからな。俺らは肉食」
ペロリと唇を舐めるカトラにエメは内心ゾッとした。
エメは未だにカトラが人間を食べるのでは?と、疑っている。話を逸らすため慌てて手元のバケットサンドをカトラに渡すと彼は微妙な顔でそれを受け取った。
「あのさ?一応あんた魔王の王妃候補なんだから、臣下の俺に気を使わなくていいと思うんだけどよ?」
普通なら妃候補が臣下の為に料理を作るなど絶対に有り得ない事である。しかし、エメがあまりに特殊なケースだった為、カトラ達は些かその辺りが麻痺していた。
「カトラの休憩時間を私の都合に合わせて貰ってるんだから気にしなくてもいい。食べながらでいいから、触ってもいいかな?」
言葉だけ聞くと、とても如何わしい。
破廉恥である。しかし彼等にその自覚は、ない。
「何が楽しいかなぁ?ほれ」
当初あれ程嫌がっていたカトラは今では気にする事もなくエメに耳を触らせてくれる。
エメは子供のように目を輝かせながら、いつもの様にカトラの耳をモフモフした。カトラはその体勢のままエメの持って来たバケットをモグモグ食べている。
しばらく黙って食べていたカトラは一度怠そうに顔を上げおもむろに隣に座っていたエメの両脇を持って持ち上げると自分の膝の上にストンと座らせた。
「頭下げるのだりぃ。これなら頭下げなくてもいいだろ」
「重くない?」
「全然。っつーかお前もっと筋肉つけろや。男だろ?前から気になってたが、ふにゃふにゃし過ぎじゃね?」
カトラに指摘されエメはギクリとした。
どんなに背が高く顔面がハンサムであっても身体は女性である。逞しい筋肉などあるはずもない。
(男と偽るのなら、身体を鍛えなければいけないか?)
エメはカトラの耳をモフモフしながら新たな目標を立て始めた。見当違いも甚だしい。
これ以上、男気を上げてどうするというのか。
エメは一体何処へ向かっているのだろうか。
「あ、コレ美味いな。本当にエメが作ったのか?」
「母が料理好きで、子供の頃よく一緒に作っていたから。やっぱりお肉好きなんだね」
ほのぼのと会話する二人は目を閉じ会話だけ聞いていれば微笑ましいカップル。良い雰囲気である。
しかし!現実は身体のでかい獣人男が世の女性が涎を垂らしてアヘ顔を晒してしまう威力を持つ美しい美青年を膝の上に抱えイチャイチャしているという気色の悪い構図が出来上がっていた!!
コレをエメを溺愛する人間の親衛隊達に見られたらカトラといえど、ただではすまない。恐らくマッパに剥かれ吊るされると思う。つまり公開処刑である。
「「何アレ」」
それを鏡越しからコッソリ覗いていたナディアとシャルラーニも勿論想像を超えて来た二人のイチャイチャ加減に(本人達は全くそのつもりなし!)かなり苛ついた。
(アイツら自分の立場ちゃんと理解してるのかな?)
シャルラーニは予想外に仲良くなってしまっている二人に舌打ちした。コレでは計画が丸潰れだとシャルラーニは苛立っていた。
「・・・前々から阿呆だ阿呆だと思ってましたけどぉ〜カトラはモテな過ぎてついに美男子に手を出したんでしょうかぁ〜?でも、いくら男といえど〜相手魔王様のお妃候補ですよねぇ〜?」
こんな事を口にしたがナディアは瞬時にカトラとエメの相性が結構良いのだと気が付いた。と、いうよりもカトラがエメを気に入っている。獣人は自分の近くに置く相手を本能で選別する。そこに、相手の性別や性格、見た目は基本関係ない。きっとそれに気付くキッカケがあったのだろうとナディアは考えた。
(ありゃりゃ〜?これはまずいですねぇ。魔王様未だにエメ様の事お気に入りですしぃ〜まだエメ様がカトラのお耳を触ってるって知られたら、また拗ねそうですぅ)
「もうすぐ休憩が終わるね。ありがとうカトラ!今日も癒された〜また余裕があったら触らせてね?」
エメがカトラの膝から降りカトラの耳の毛並みを元通りに手で梳くとカトラは気持ち良さそうに目を閉じた。
そんなカトラにナディアとシャルラーニは、やはり同時に突っ込んだ。
((お前は躾けられた室内犬か!!))
カトラは最早エメの前ではただの愛玩犬であった。
*****◆*****◆*****◆*****◆
昼食を終えエメはそのまま離宮には戻らずにナディアや官吏達が働く執務室へ歩いて行った。
ナディアは不思議に思いながらシャルラーニと一緒に鏡の中を移動しつつエメの後を追う。
(あっちは宰相の仕事部屋ですけどぉ?なんでエメ様が彼方に?呼び出されたのかしら〜?)
そういえば宰相は魔王の我儘に振り回され何度かエメに助けを求めている。今回もそうかもしれない、ナディアは面倒事が嫌いなので魔王の事は全てマッシュに丸投げで彼が毎回問題をどう処理しているのか実は知らなかった。
エメはドアをノックすると返事がないドアを開き、勝手に中に入って行った。勝手したる様子である。
「昨日来れなかっただけで、これだけ仕事が溜まるんだから、そりゃ仕事が進む筈ないよね」
エメは先日片付けを手伝い一度は綺麗になったマッシュの机に積まれた書簡の束を見て溜息を吐いた。
机の真ん中には相変わらず顔色が悪い宰相のマッシュが難しい顔で仕事をこなしていた。エメは思った。
(可哀想)
そもそも、この王宮まともに仕事が出来る者が少な過ぎるのである。エメは顔色が悪すぎるマッシュに声をかけた。
「宰相様、少し仮眠を取ってください。指示を頂ければ出来る範囲は私が片付けておきますので」
「・・・あ、エメ様。今日は来て下さったのですね。いえ、私の仕事ですからエメ様一人にお任せする訳には・・・」
エメの気遣いを断る彼であるが、エメは知っている。
この男、3日間ぐらいまともに睡眠を取っていない。
いくら魔人とはいえ身体を壊してしまう。
「では、起きる時間を決めて下さい。時間になったら起こしに伺います。隣の部屋ですから、誰か来た時も声をお掛けします。余り無理なさると仕事の効率も落ちてしまいますよ?」
「・・・そう、ですね。では少しだけ・・・お言葉に甘えさせて、頂きます」
マッシュは申し訳なさそうに仕事の指示と時間を告げるとフラフラと隣の部屋のソファーへ倒れ込み、そのまま意識を失った。
彼の体が限界を超えていた証拠である。
「さて、どれどれ?」
ナディアはあっさりと自分の仕事をエメに任せたマッシュの行動にまず驚いた。彼は基本自分の仕事を他人に任せるのを嫌うのである。一度ナディアが気紛れで手伝いを申し出た時はナディアも大変だからと断られた。しかし半分はナディアに手を出されたく無かったのだと彼女は気付いていた。
それを、人間のエメにあっさり任せた彼は今、安心したのか爆睡している。ナディアは、無警戒なマッシュに腹を立てた。
(あの人ぉ〜!一応重要案件も中に含まれてるでしょうが〜
いくら魔王様のお妃候補でもこれは問題ありですよぉ)
そんな事を考えながらエメがどう出るか伺っていたナディアは次の瞬間息を飲んだ。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!
エメは何度か書類の種類を確認すると幾つかの束を小分けに纏め凄まじい速さで判を押し始めた。
その間、ちゃんと中の内容も確認している様子である。
その証拠に印を押された書簡はちゃんと分類され、それぞれの場所に振り分けられている。
「これは、私には分からないな。あ、また計算間違ってる」
手は高速で動きつつ、そのつど間違いを見つけ訂正し、計算もし直している。そして、処理が終わった書簡達は全て綺麗に纏め整理されマッシュが後程直ぐに確認し処理出来る様に書簡置き場に並ぶられていく。
その動き、最早プロフェッショナルである。
(エエエエ〜!?人間ってもしかして、とても優秀なんですぅ?狡ぃ〜私もあんな助手がほしぃ〜!)
しかもエメは美青年。
ナディアの隣に置けば見栄えがいい。
彼女は先程マッシュを無警戒の阿呆宰相呼ばわりしたのも忘れエメが欲しくなった。
(マッシュは私に気があるようですから〜強めにお願いすればエメ様を貸してくれるかも知れないですねぇ〜?早速戻ったらお願いしてみましょ)
「ね?エメ優秀だと思わない?ナディアもあの人欲しいんじゃない?」
ナディアの心を読んだようにシャルラーニが声をかけてくる。ナディアはそういえば側にシャルラーニがいた事をすっかり忘れていた自分に驚き顔を赤くした。本来の目的はシャルラーニと二人きりになる事である。
「そうですねぇ〜あの仕事振りを独り占めは狡いですぅ。帰ったら早速私の仕事も手伝って貰えるよう宰相にお願いしますぅ」
「そうだよねぇ?是非お願いしてみてよ!じゃあそろそろ外に出ようか?」
まだそれ程シャルラーニと会話出来ていないナディアは慌ててシャルラーニの腕を掴んだ。そんな彼女にシャルラーニは人の悪そうな顔で笑みを作りナディアの頭を撫で、彼女だけ鏡の外に出した。
『あまり長い時間こちら側にいるとナディアまでそっちに帰れなくなっちゃうからな。とっても楽しかったよ!また遊ぼうナディアちゃん?』
そのままシャルラーニの姿は鏡からスッと消え去ってしまう。ナディアは頬を膨らますと悔しそうに鏡を睨みつけた。
*****◆*****◆*****◆*****◆
マッシュは久々の深い眠りの中、その心地よさに微睡んでいた。
(気持ち良い。しかし、いい加減起きなければ・・・エメ様は、ああ言っておられたが、彼に仕事を押し付けるわけには・・・)
エメに補佐に入って貰ってからマッシュの負担は激減した。
今でも十分仕事量は多いが魔王アルカダの相手をし、マッシュの仕事を手伝ってくれるエメはマッシュにとって最早神であった。
彼がまだ重い目蓋をなんとか開こうとした時、誰かが彼のおでこに手を置いた感触がした。そして、近くからいい香りが漂ってくる。
(誰、です?女性?)
その香りは女性的でありながら甘過ぎずマッシュにとって好ましい香りだった。おでこに置かれた手もヒンヤリとして気持ちが良い。
(もしや、何処かの女官が入り込んで?全く・・・)
王宮の管理が召使に誘惑されるのはよくある事で、普段なら相手にしないマッシュであるが、久々にとれた睡眠と心地よい女性の香りに、珍しくその気になった彼は相手の手を掴むと、そのまま身体を反転し相手をソファーに押し倒した。
「きゃ!?」
女性の悲鳴が聞こえマッシュは相手の口を手で塞ぐと口元を釣り上げた。
「静かに・・・一体何処から入り込んだのです?女性が寝ている男の部屋に一人で訪れるなど無用心にも程がある。それとも、そういう目的だったのですか?」
薄暗い部屋で相手の顔がよく見えない。
しかし、掴んだ手首はとても細く、掌が触れている頬はとても柔らかい。マッシュは親指で相手の唇を撫でると・・・少し味見をする事に決めた。
「貴女思ったよりも魔力が強そうですね?これは楽しめそうだ」
魔族、魔人は基本的に支配欲が強い。
暴力的ではないが自分が精神的優位に立つ事にエクスタシーを感じる生き物である。
それは、普段屈強な理性でもって自らを律しているマッシュも同じであった。それは魔人の女性も同じで、しかし恋人同士であれば、その都度雰囲気でどちらかが合わせる事で関係は成立する。
しかし、マッシュは現在恋人もいなければ相手に誘惑される事も多い立場な上、久々の深い眠りからの覚醒によって完全に寝ぼけていた。
「時間がありません。サッサと済ませましょうか?」
マッシュの手が相手の太腿辺りに触れた時、彼はその違和感に気が付いた。
(ん?スカートではない?)
彼は意味が分からずそのまま手を足の付け根の辺りまで滑らせ、押し倒した相手がズボンを履いている事に気がついた。彼は魔法で部屋のカーテンを開けた。そして彼は、自分が押し倒している相手を確認し完全に硬直した。
「・・え、え?エメ・・・様?」
そんな筈はないと彼は思う。
彼は今まで夜這いをかけられ、その相手を間違えた事などない。いくら寝ぼけていたとはいえ、男と女を間違えるなど。
「・・・・・・は、離して・・・」
震え声で懇願され、マッシュは自分の手が結構際どい位置に置かれている事に気が付いた。そして手を離そうとし本気で怯えるエメを見て思わず、こう思った。
(泣かせたい)
魔人の本性なんて、こんなものである。
「・・・エメ様。まさかと思いますが、実は女性なんて事はないですよね?」
自分の勘が外れた事が信じられずマッシュは悪あがきをしてみせた。しかし、実はその通りであるエメは見る見る瞳に涙を溢れさせた。
(やばい!まともそうに見えて、この人もヤバァイ人だった!!見境ない猛獣だった!!)
まぁ間違いではない。
しかし、相手は女性に限る。
エメは必死に首を振った。
「そんな訳ないでしょう!!寝ぼけないで下さい!!」
涙目で訴えるエメにマッシュは嫌な汗をかいた。
そっと身体を起こし起き上がるエメに手を貸そうとするが、その手を避けられた。
初めてのエメからの拒絶にマッシュは思いの外ダメージを受けた。
「あ、あのエメ様。申し訳ありません・・・完全に寝ぼけてしまって・・・どうか、この事は・・・」
「誰にも言えませんのでご安心を!仕事終わりましたので私は帰ります!!」
お怒りで出て行こうとするエメの腕を慌てて掴んだマッシュにエメは止めの一言を呟いた。
「魔人って、やれれば誰でもいいんですね?不潔」
ズンッ!
氷の刃がマッシュの心臓を貫いた。
エメの目は、まるで汚物を見る目であった。
マッシュはそんなエメの態度に・・・何故か興奮が抑えられなかった。
まぁ、そういう事である。
*****◆*****◆*****◆*****◆
「私、最近やっぱり魔王様が一番癒されるのかも知れないと思い始めているんです」
エメの言葉に魔王アルカダは、その意味を深く追求する事なく頷いて満足気に笑い声を上げた。
「それはそうだろう?なんだエメ!そんな当たり前の事に今更気が付いたのか?」
エメの中で同じ女性は自分を付け狙う危険な存在であり、油断出来ない。
シャルラーニはエメを揶揄い女性と知っているので危険人物だ。
カトラはとても癒されるが獣なので下手をすると食べられてしまうかもしれない(食料として)
そして、一番まともだと思っていた宰相のマッシュは屑であった(女の敵)
その点、目の前のナルシストは自分が大好きなだけで無害。
潔い程、自分以外に興味がない!!
「はい。こんな簡単な事に今まで気付けずにいたなんて。私はやはりまだまだ魔王様の足元にも及びません。誰もが羨む美しさをお持ちになり、尚且つ癒されるなんて。本当に魔王様は素晴らしい」
本気だった。
エメは本気でアルカダを褒めた。
アルカダはエメのその言葉に、普段はない熱を感じとり珍しく聞き返した。
「そうだろうが・・・エメ?何かあったのか?」
ニッコリ。
「いいえ?何も?」
満面の笑顔のエメに、魔王はなんと人生で初めて沈黙した。