温もりを求めて
温もりを求めて
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登場人物
博士:温もりを求めて最愛の人の面影を求め人形を造り出す
人形:博士により造られた人形、心の在り方を学ばされる
役表
博士:不問
人形:不問
博士「これでいったい、何体目の失敗作になるのか…何度造っても上手くいかない…いつになれば私は…くそ!必ず造ってみせる、心を持った…人の温もりを感じる事のできる、貴方と同じ心を持った人形を」
間
博士「やっと…やっと完成した、遂に私は造り出す事が出来た!これからはこの人形に心を、感情を学ばせていけば」
人形「…あなたは…だれですか?」
博士「おぉ…目覚めたか、私は君を造り出した、例えるなら親みたいなものだ」
人形「おや?おやとはなんですか?」
博士「親とは…どう表現すればよいのだろうか…考えた事も無かったな、そうだな、後々(のちのち)分かっていくことになるだろう親とはどういうものなのか…君にはこれから感情というものを学んでいってもらうことになる」
人形「かんじょう?ですか…かんじょうというものがわかりませんが、わかりました。
わたしは、これからかんじょうというものを学んでいくのですね」
博士「そうだ、人間には喜怒哀楽と呼ばれる感情があるのだ、喜び、怒り、哀しみ、楽しい、そういったものを君に学ばせていく。
それから私の事は博士と呼ぶように、分かったね?」
人形「わかりました、博士。
わたしはまだ生まれたばかりで何も知らないのですね。」
博士「そうだね、君はまだ生まれたばかりだ。私には君を成長させ、心を学ばせ感情を理解させる為に共に成長するつもりだ」
人形「博士の言っていることは全くわかりませんが、わかりました。」
間
博士「君を生み出してからもう半年も過ぎたのか…早いものだな時が過ぎるのは」
人形「そうですね、博士。
博士のおかげで色々な感情を学ばせて頂きました。
喜怒哀楽だけでなく他にも様々な感情がある事もわかりました。」
博士「確かに君は様々な感情を学んだね。
今では表情もまるで人間の様に変わる様になって来た…しかし、君は未だに愛情だけは理解出来ないようだね」
人形「私には愛情というものが、どういったものなのかわかりません。
愛情とはどういった感情なのですか博士?」
博士「愛情とは…愛情にも様々なものがあるから難しいのだよ…家族愛、友愛、博愛、恋人達の愛、他にも様々な愛がある。
感情の中でも特に複雑なものなのだよ愛情とは」
人形「そうなのですね。
愛情とはそれほどに複雑なものなのですね。
何故、博士は私に愛情を教えようとしているのですか?」
博士「それは…愛情を理解するのは、感情を理解する、心を理解するのに必要不可欠な事だからだよ、愛情を理解すれば様々な感情の本当の意味を理解する事が出来るのだよ」
人形「そういうことなのですね。
愛情を理解出来る日が来たら私は、人間になれるのですか博士?それとも愛情を理解しても人形は人形のままなのですか?」
博士「そうだね、愛情を理解する事が出来れば君は限りなく人間に近い存在になる事は出来るだろう。
しかし、人間になる事は出来ないんだ。」
人形「人間には…なれない…そうですよね、所詮私は博士により造り出された人形ですから」
間
博士「何故こんなにも無駄な物を作り上げてしまったのか、ただ人の形を真似ただけの人形を。どれだけ人形を愛した所で何も答えてはくれないのに…何故私は人形に心を理解させようとしてるいるのだ…心を理解したとしてどうなる?所詮は人形…心を与えても温もりを感じることは出来ない、それならば私は…私が生み出してしまった人形に心の臓を捧げて、私の役目を終わらせようでは無いか」
間
人形「博士!博士ー!愛情を少しですが理解する事が出来ました、愛情とは好きという事ですね?好きとは楽しいという事ですね?楽しいとは嬉しいという事ですね?これが愛情になっていくのですね博士!」
博士「そうだね、それも愛情としての形の1つではある。
だが、愛情とはそれだけでは無いのだよ。」
人形「それだけでは無いのですか?他にはどんな愛情があるのですか?」
博士「憎しみ、怒り、哀しみ、これらも愛情の1つなのだよ、これらを本当の意味で理解する事が出来れば君は…
いいや、やめておこう。
何をどうしたとしても、君は人形なのだから」
人形「私は…何をどうしたとしても人形…人間にはなれない」
博士「その通りだ、君は私が造り出した人形だ。
感情や心を理解したとしても、人の温もりまでを再現するのは、不可能だったのだ」
人形「それならば、なぜ博士は私を造ったのですか?なぜ私に感情を、心を理解させようと学ばせたのですか?」
博士「それは私の…私の弱かった心のせいで君を造り出してしまった。
私にはどうしても忘れられない人がいる…その忘れられない人を追い求めて、その人に姿形を似せただけの君を造り出してしまった。」
人形「そうやって造り出された存在が私だというのですね博士?私はこのまま破棄されてしまうのですか?」
博士「いいや、破棄などしないし、君をまた眠りにつかせることもしない」
人形「それではどうなるのですか私は?破棄もされず、眠りにつくこともないのであれば、私はどうなるのです?」
博士「君が少しでも人間に近づけるように、ある方法を使うつもりだ」
人形「ある方法?それはどういったものなのですか?その方法を使えば私は限りなく人間に近づけるのですね博士?」
博士「限りなく人間に近づく事は出来るだろう」
人形「そうなのですね!その日が訪れるのを私は待ち続けます」
間
人形「博士、おはようございます。
今日が博士の言っていた、私が限りなく人間に近づけるの日なのですね?」
博士「おはよう。
そうだね、今日こそが、君が限りなく人間に近づく事になる大事な日だよ」
人形「どのような事をするのですか博士?」
博士「単純な事をするだけだよ。
此方へ来なさい…そして、ここに座りなさい。」
人形「わかりました博士。
これでよろしいのですか?」
博士「あぁ、それでいい…では、始めていこうか。
それでは、心臓部分を開いてもらえるかな」
人形「わかりました博士。
開きましたがどうすればよろしいですか?」
博士「そのまま1度、君の電源をシャットダウンして貰えないだろうか?」
人形「はい。それではシャットダウンします……」
間
博士「ふぅ…遂に私自身の役目を終わらせる時が来たか…私の心臓を君に与え、私は…私の役目を終わらせよう。
絶命する前に、なんとか心臓を…
悩んでいても仕方ないね…始めていこう。
ぐっ…ぐうぅぅぅ!あぁぁ!
はや…く…心臓を…セットし…再起動を…」
間
人形「………博士?どうしたのですか?床で寝てしまうと身体を痛めてしまいますよ?はか…せ…?
この床一面に広がっている赤い液体は何ですか?
博士?なぜ返事をしてくれないのですか?どうしたのですか?
…博士?博士の脈も呼吸音も聞こえない…?
そして、私の心臓部分で動いているこれは……!
博士!なぜ私に博士の心臓を組み込んだのですか!
私は心臓が無くても活動する事が出来るというのになぜ…
私は…博士と共に過ごし感情を理解する事が出来ていたのに…やはり私は博士にとって失敗作だったのですね。
感情を理解する事は出来ても、温もりを…忘れられない人の温もりを求めていた博士には、人の形を真似ただけの私は…
これは…どういうことですか…なぜ私は目から液体を流して…まさかこれが涙?
これが涙なのですね博士…貴方の心臓を受け継いだ事により、貴方の感情が私を満たしていきます。
辛かったのですね貴方はいつも、忘れられない人の面影を…温もりを追い求め続けていた。
私は、貴方の温もりをいつも感じていましたよ博士。
貴方を1人にはさせません…私も貴方の元に行きましょう。
これより私は機能の全てを放棄し、活動する事を停止します。
待っていてくださいね…私の親でもあり、最愛の人」