"合意形成"の起源とは!!?気になったらリンクをクリック↓
<< ネギチャンネル〜〜〜!天下の公論ここに在り。
みんなの預言者ネギでーす。今日も上下左右分け隔てなく話し合お!
さて、今日は教育系の動画です。テーマはなんと"選挙制"。歴史的なことから現代の選挙制の問題までズバり
斬り込んじゃいます! >>
永田町で安ランチを食べていた鬼土川栄太は自宅に帰るとマイチューバー ウズメ=ネギの動画を観るのが日課になっていた。およそ2日に1本のペースで投稿されていたので既に200本近い動画がある。それが教育、対談、公開討論、そして告知の4つに分類されていた。
ネギは灰色のローブを羽織い顔だけ出している。手振り口ぶりは活動弁士のよう、立ち振る舞いはオペラ歌手のようだ。
<< みんなは選挙制ってなんだろうって考えたことある?僕はこういう動画を造る前にある程度調べ物もするんだけど、何から調べたらいいだろうって悩んだんだよね。まずは歴史からかなって思ったとき、ふと思った。一番最初の選挙なんか調べても無駄だろうなって。人間が群れを作った時から選挙に近いことやっただろうなって。
自分が人間の祖先になってアフリカの草原を歩いているのを想像してみて。君の両親や兄弟姉妹がいるかもしれない。君の子供や君の兄弟の子供もいるかもしれない。今では珍しい大家族だ。それでも全部で10人の集団としよう。今までの生活区に食料が少なくなってきたため移動せざるをえなくなった。一番発言権を持つ君の父親は日の沈む方角に行こうと言う。ところが君の兄と姉は日の昇る方角に行こうと言っている。さあどちらに行くべきでしょうか?
>>
栄太はカップ麺を啜りながら聴いている。ドキュメント番組の再現ビデオのように簡単なアニメーションも流れるため、食べながら観ても話しにいけないということはなかった。
「そんなん、わかるわけないやん..ズズ」
<< 正解は〜〜〜〜!(ドラムロール)
日の昇る方角です!パチパチパチ >>
「んなアホな。なんで?」
<< ほとんどの視聴者が正解なんてないって思ったかなと思うんだけど。1日に20km移動するとして、日の昇る方角に進むと日の出てる時間は1, 2分伸びます。当然数百万年前に街灯なんかないから活動できるのは日が出ている間だけ。食料を求めて移動するなら活動できる時間が長い方がいいよね。と言う訳でほんのちょっとの差だけど正解は日の昇る方角です!パチパチパチ
では話を戻します。アフリカの家族はこのことを知らないので、日の沈む方角と日の昇る方角どちらに向かったらいいかわかりません。ここでストーリー分岐!>>
「おっ、始まったか。」カップ麺を咀嚼しながら栄太は思った。何本か観ている内にわかったが、効果音と共に始まる"ストーリー分岐"は預言者ネギの得意パターンであった。
ストーリー1:お父さんが言います「俺の言うことが聞けないのか!聞けない奴には木の棒を100回叩き込むぞ!」。家族は一番力の強いお父さんの言いなりです。こうして家族はお父さんの主張した日の沈む方角に進みました。
ストーリー2:お姉さんが言います「みんなで多数決を取ろうよ。希望者が多い方角に行こう。」。お父さんはお姉さんが気に入っていたので、言われた通りにしました。多数決を取ると4人は日の沈む方角に手を挙げました。残りの6人は日の昇る方角に手を挙げました。こうして、逆の方向に手を挙げた若干名は「食料がなかったらお前らのせいだ」などと呟きながらも、家族は日の昇る方角に進みました。
ストーリー3:末の弟が言います「僕はみんなが喧嘩したりするの見たくない。木の棒を立てて手を放してその棒が倒れた方角に行こうよ。」。お父さんを含め家族はみんな末の弟を目の中に入れても痛くないというほど可愛がっていたので、誰からも反対は出ませんでした。こうして家族は木の棒が倒れた日の昇る方角とも日の沈む方角とも違う方角に進みました。
この素朴なストーリーからでも何かを決定するというプロセス、つまり"合意形成"がどのように行われるのかそのパターンが見えてきます。ストーリー1は物理的な力、ストーリー2は数の力、ストーリー3は偶然の力が家族の進む方角を決めました。
どのストーリーが一番いい結末になるかはわからない。でも選挙制で使われる多数決、つまり数の力で競うのは"合意形成"の一方法に過ぎないって言うことはわかりました。
そこで次は、実際の選挙制と比較して"合意形成"の方法が政治体制の本質だっていうこと。あと正にそのため"合意形成"の方法を変更することは難しいっていう話しをしたいと思います。
おっと、配信時間が10分になったので第一弾はここまで〜。観てくれてありがとー!
レビュー欄で絶賛公論中↓↓
すぐ第二弾を配信するからそっちも観てね〜〜。バイバーイ。
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栄太は国家Ⅰ種を受かって入省したキャリア官僚だ。一般的な選挙制度や歴史的背景はもちろん、アテナイの民主制やルソーの社会契約論も研究したことがあった。ネギの動画はその芝居がかった所作も合間って、そんな彼をして夢中にさせた。カップ麺を片付ける手間も惜しんで、栄太は貪るように次の動画を見始めるのだった。