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3、ギルドへ行こう

「ふう、第一階層をクリアしたようだな」


 俺は汗を拭う。ダンジョンの中で動き回ったので、暑い。


 俺はゴーグルを通して、自分の掌を見た。


スキル:低レベルアイテムの使用許可、光魔法低級レベル

 レベル:3

 職業:勇敢な村人(なお、英雄王への素質あり)


 体力:123

 知力:100

 マジックポイント:98

 防御力:67


「へっへ。レベルが上がってるねぇ」

「気を付けてください。この第二階層から敵モンスターも強くなりますよ」


 美保が忠告してくるが、俺は高揚していた。俺は念願の冒険者になれたんだ。


「ギュウいいぃっ」


 ゴブリンの群れに突進していく。俺は銅の剣で薙ぎ払い、次のゴブリンを打ち倒す。『ゴブリンレベル2』ゴブリンたちの頭にゴブリンの種族が表示されている。どうも第一階層よりもパワーアップしているようだ。


 知能が発達しているようだ。集団で動くようになっている。美保とゴズが脇を固めるので、俺は安心して斬りかかることができる。


「おっとレベルアップか」


 集団で倒しているので、もらえる経験値が半端ない。すぐにレベル4になってしまった。


 すると美保が傍らに立った。


「もうすぐ第四階層ですよ。気合いを入れて行きましょう!」


「ああ、分かったよ」


 俺は大声を出した。まるで学生の頃に戻ったみたいだよ。こんなの。


 俺は嬉々として、ゴブリンに剣を振るった。













 ダンジョンから帰ると、午後九時を回っていた。美保はダンジョン内部探索を中止し、一旦休むことを提案したのだ。


 ダンジョン内部では少なくとも八時間は過ぎている。一日の平均労働時間だ。それでも、体は疲れていなかった。


「というよりもダンジョン潜入前と一緒か」


 俺は肩を回す。美保が何やらにやにやしている。


「ん? どうしたんだ、美保」


 俺は美保に向き直る。俺の背後では魔方陣が煌めいている。


「いえ、楽しそーだなーと思いまして。よっぽど用務員のお仕事に飽きていらっしゃったんですね」


 美保の言葉に俺は沈黙する。そうかもしれない、と俺は思った。俺はガキの頃から冒険者になりたかった。モンスターを倒したかったんだ。それでも、無能力者扱いされて、その力を発揮することはなかった。


「私もです。父と母から習い事を押し付けられて、令嬢としての教養を刷り込まれて、……正直、嫌でした。私も男の子と一緒にダンジョンの冒険をしたいと思ったものですよ。自衛隊のダンジョン探索課を志願したのは自分の意思です。子供の遊びと嗤われようと、私は今の仕事が天職であると思っています」


「俺も同感だよ、美保。共にダンジョンをクリアしていこう。子供の遊びじゃない。本気を見せてやろうぜ」


「ええ、神城さん。このまま、最難関のS級ダンジョンクリアを目指しましょう」


 美保がにっこりと笑う。さて、明日から忙しくなるぞ。














「ゴブリンマスターを倒し、初級ダンジョン『ゴブリンの森』を攻略された神城様の次なるクエストでございますか。我らマーベル教会からのお勧めは『小鬼の巣窟』です。ゴブリンと似ていますが、若干頭は回りますし、まあ有り体に言えば、悪賢い」


 早口でまくし立てるのは三枝(さえぐさ)というギルドの受付嬢だ。真面目そうな女性で好感が持てる。ここは東京のギルドの一つ。マーベル教会の運営するギルドだ。俺は美保の家から近所のこの高層ビルでギルド登録を済ませた。


「三枝さん、小鬼を倒してもらえるゴールドは多いのでしょうか」


「ええ、ゴブリンの二倍はお約束されていますよ。初級者としては常道のダンジョンです。それと溜まったゴールドでございますが、日本円と換金なさいますか」


「いえ、でもゴールドが日本円にするとどれくらいか分からない。教えていただけますか」


 俺は持っていたアイテム所持のアイコンを触る。受付嬢は目を細めた。


「五万ゴールドでございますか。日本円五万円と換金できます」


 レートは日本円と一緒らしい。俺は頷くと、目の前に表示されたアイコンを右手の人差し指でクリックしようとする。


 今、俺の(かたわ)らには美保もゴズもいない。美保は永田町に出かけている。ゴズはお留守番だ。奴を連れて行くと騒ぎになるからな。


 ゴブリン退治で儲けた金だ。有効活用させてもらおう。三枝さんが笑みを張り付けたまま、俺を見る。愛想の良い受付嬢だ。このギルドでも人気が高いんじゃないか。


「いえ、換金はしません。このギルド内の武器を購入したい。宜しいですか?」


「ええ、ご案内いたします。ギルドの二階になりますので」


 受付嬢は微笑むと、俺をエレベーターの方に誘導する。この二階に武器屋・防具屋が存在することは美保から聞いて知っていた。


 エレベーターに乗る。人はいない。忙しい時期ではないらしい。


「美保は元気ですか? 私、彼女の幼馴染なんです」


「ええ、元気ですよ。元気そのものです。元気の塊です」


「プッ、あの子らしいですね」


 俺の表現が面白かったのか、受付嬢が吹き出す。美保は予想以上にお転婆だからな。


「ようこそ、武器屋の石渡(いしわたり)だ。アンタが新規のお客かい?」


 エレベーターが二階に着くと、マッチョな男性が出迎えた。年齢は四十歳くらい。角刈りだが、目は笑っている。


「そうです。銅の剣より強い剣ってありますか?」


「あるぜ。じっくりと見て行ってくれ」


 低い声で言うと店主は俺を剣のコーナーに案内してくれた。


 剣のコーナーでは銅の剣や聖剣が置いてある。錆のあるオンボロ剣もあった。いずれも値段は安いな。千ゴールドもあれば、買えるくらいだ。


「……」


「気に入らねえって顔してるな。そんなアンタに耳寄りな情報だ。鍛冶屋って知ってるか? この近くに店を構えてるんだ。そこで融合してもらいな。市販じゃ手に入らねえ剣が手に入るぜ」


 俺の心の中がよく分かったな。見ると、受付嬢も微笑んでいる。どうもこのギルドが経営する鍛冶屋か。噂には聞いていた。腕のいい職人がいるといいな。銅の剣は二つ持っている。ゴブリンを倒した時にドロップしたアイテムだ。この二つを融合させて鍛冶屋で新しい剣を作ってもらうことにしよう。


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