6章-(5)斧使いとの戦闘
俺がこの世界に来た目的は……意味のある人生を送るため。
過ちを犯した彼女達。
だが……それでも愛する彼女達を救う。それは意味のあることだと感じ、生きがいすら感じる人生の最大の目的のように思えた。
「――やる気か、ケイシとやら?」
中腰で斧を構えるソウジ。獲物を見定めるように目を細めるこの男から、今までに感じた事のない強烈で凶悪な意思を感じ取った。
純粋に。“こいつを殺す”という混じりけのない強固な意志。いわば“殺気”とも表現できる剣呑な気配に、俺の背がゾッと冷える。
けれど……俺の胸の奥で、恐怖とは反比例に勇気と闘志が湧き出てくる。
相手は強大な敵。
だからこそ――今まで感じてこなかったやりがいを、生きがいを感じられる……!
俺は腰に下げた刀を抜き、奴の殺気に負けない勇気と闘志をぶつける!
「どんな理由だろうと、アリサとミリアには手出しさせない。来いよ……!」
「……了解した。死にたいなら殺してやる」
巨大な斧を構え、臨戦態勢を取るソウジ。
獲物からして、戦闘スタイルはパワー系。
ならば――力任せの攻撃を避けたとき、勝機が生まれるはず。スピードで攪乱してしてやれば――!?
瞬間。
奴が、一瞬で俺の目の前まで距離を詰めた!
なんてこった。
こいつ……スピードもある……!?
だが――攻撃自体は大振り。真上から斧を振り降ろす、隙の多い唐竹割りだ。
一瞬驚いたが、俺はすぐに冷静さを取り戻し、素早く後退して奴の攻撃を避ける。
ドン! という地面を響かせるほどの轟音を鳴らし、ソウジの一撃は地面をえぐるほどの威力を見せた。
周囲を土煙が満たし、一寸先も見えないほどの状態になる。
恐ろしい威力だ。だが当たらなければ意味は――!?
俺は、今唐突に奴の狙いに気が付いた。
斧の一撃はブラフ。
この土煙で視界を奪う。それが奴の狙いなら……!?
じゃり。という砂を噛むかすかな靴音。
音の源は――背後!!
刀を背後に振ると、ギイン! と金属同士が打ち合う高音が鳴り響いた!
「…………」
防がれても、なお力を込めてこちらを押し切ろうとするソウジ。
無言で渾身の殺意と力を込めるこの男に、俺は心の底からの寒気を覚える。
だが防いだ。視界を奪い背後から――なんて漫画やアニメでお決まりの戦法じゃバレバレだ。
殺気に惑わされるな。所詮見かけ倒し。パワー頼りの単細胞に変わりない……!
しかし。
その時、俺は重要な事に気が付いた。
刀で防いだソウジの斧。
その斧に――肝心の刃がついていない。
奴の斧の柄から伸びた鎖。
それは俺の頭上を超え――背後へ。
――まさか!?
素早く背後を見た。
地面に縫い付けられていた斧の刃。
それが金切り音を上げ――鎖を伝い、高速で回転しながらこちらへ迫る!!
……やられた!! 全て奴の狙い通りだった!
最初の地面をえぐる一撃。あれは単に背後へ回る自分の姿を隠す煙幕ではなかった。
分離できる斧の刃を隠すためだったのだ……!
背後への一撃と見せかけ、柄の部分で攻撃。
俺は防御のため刀で防ぐ。
そうすると両手は奴の柄の攻撃で防がれ。動きも封じられ。
防御すらままならず――背後から飛翔する斧の刃を受けるしかない!
……パワー頼りの単細胞だって?
とんでもない。
こいつは――こいつは――戦闘のエキスパートじゃないか……!!
ギイン!!
金属同士がぶつかる甲高い音。
ソウジは、わずかに驚くように目を見はった。
そう、これが俺の能力
あの女神から受け取った……唯一無二の力。
俺の全てを守り、俺と敵対する全てを滅ぼす――最強の盾だ。




