表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生者殺しの第九騎士〈ナイトオブナイン〉  作者: アガラちゃん
四章「伏魔会同」
58/237

4章-(14)マーリカの実力

 言うや否や、マーリカはすさまじい勢いでムチを放つ。

 蜃気楼による残像はない。にも関わらず、まるで10近いムチが一気に雪崩かかるが如く!


 だが――リントはこの猛攻すら笑みを浮かべて軽くいなす。


「児戯に等しい……ってのはこんな時にいうのかね? やれやれ」


 ありありと余裕を見せるリントが――わずかに大きく目をみはる。


「〈千本凍槍(せんぼんとうそう)土肉つちむら貫き“脚”を穿て!」


 突如――リントの足下から何十、何百というおびただしい量の氷の槍が、地面を貫き勢いよく突き上げる!


 この魔法は――港町シパイドで見せた、あの冒険者達をまとめて串刺しにしたあの術。

 だがあの時とは違い、リントは足下からの氷の槍をひらり、ひらりと身軽な足取りで難なく回避。


「つまんねえな。結局氷をぶつけるだけか? あんたも結局その辺の氷使いと同じ――!?」


 今度こそリントは驚愕に目を見開く。

 氷の槍を回避した先で、奴の足下が氷で固められ、地面へ強固に接着した。


 ……氷の槍は(ブラフ)。マーリカの狙いは奴の動きを封じること……!

 相手の息をつかせぬ内に、マーリカは再びムチによる怒濤(どとう)の連擊を繰り出す!


「おおっと! ってなんだよ……結局そのムチ頼りか? 残念だけどこの程度の速度じゃあ俺は捉えられないぞ?」


 だが――――


「〈極風(きょくふう)〉無の世界より漏れ出でし冥府の息吹!“魂”ごと凍て尽さん!」


 上空から、まるで竜巻のような風の渦がリントをめがけて吹き下ろされた!


 ――熱操作による突風と大気中に混ぜた水分。それらを-200度近い温度まで冷やし、敵へ一気に吹き付ける魔法だ。


 生身の人間が直撃すればものの数秒で氷の彫刻に成り果てる。その冷気を一吸いしただけで肺すら凍る。それほどの激烈な冷気。


 マーリカがその魔法を放ったタイミングは完璧。完全に奴を捉えたはず、だった。


 だが――リントはチート能力を持つ転生者の中でも最強に位置する者だ――


「ははは。やっぱすっげえな、あんたの冷気。直撃してたら俺でもダメージ受けてたかもだ」


 余裕の笑みを浮かべ、当然の如く無傷で現れた。


「……魔法は一度につき1発のみ。別々の魔法を同時に発生させることはできない」


 リントは得意げに、先ほどの魔法を回避できた種明かしを始める。


「俺の足を凍らせる魔法と、さっきの猛烈な冷気の魔法は同時に発動させられない。1度に放てる魔法は1種類のみ。これがこの世界の魔法詠唱の原則だ。

 つまり、あの冷気の魔法を放った時、同時に俺の足を封じた魔法は解けてしまうことになるわけだ。ほんと惜しかったぜ? 普通の冒険者なら今のでフツーに死んでただろうな……俺にとっちゃ、魔法が解けた一瞬でも十分な時間だったってわけだ」


「…………」

「魔法は一度に一発。唯一の例外は同じ魔法を連続して発動できる重複魔法ぐらいだな」

「……重複魔法がお望み?」

「なんだって?」

「アンタが笑っていられるように、お望みの魔法を使ってあげるよ……」


 冷酷な笑みを浮かべ、マーリカが魔法を唱える。


「〈光誘虫(こうゆうちゅう)〉光を食む氷の従者!光を求む“目”へ汝が祝福を与えよ!」

 マーリカが唱えると、30cm近い大きさの氷の虫が数十匹現れ、リントの周囲をぐるぐると周回しだす。

 蚊のような形状をした氷虫(ひょうちゅう)は、大きな腹部を使い太陽光を虫眼鏡のように収束。リントの“目”を狙って執拗(しつよう)に飛ぶ。


「目つぶしか。まっ、卑怯だとか冷めることは言わねえさ」


 余裕を見せるリントへ、ダメ押しとばかりにマーリカがムチによる激烈な攻撃を仕掛ける。


「なるほどなるほど。ビット攻撃とムチの組み合わせってことか? ははは、楽しませてくれるぜ!」


 まるで踊るような華麗な動きで、リントはムチを避けながら軽々と氷の虫を次々撃破。


「ビットは全部打ち落としたぞ? 次は? 次はどうやって俺を楽しませてくれるんだ?」


 戦闘狂のごとき笑みを浮かべるリント。

 対するマーリカは――『馬鹿め』と言わんばかりの凶悪な笑みを浮かべた。


「――〈蒸破(じょうは)〉! この場の全ての氷に告ぐ! 汝ら急々に大気と還らん!!」


 千本近い氷の槍。打ち落とされた大量の氷の虫。

 それらがマーリカの言葉に従い、一瞬で蒸発!


 衝撃! 視界を覆うほどの()()爆発が、大気を大地を震わす一撃と成る!!


 ……水蒸気爆発だ。氷の槍。極風。氷の虫。リントの周囲を氷で満たし、それらを熱操作で一気に気体へ変換。その結果――氷が固体から気体へ一瞬で変わった衝撃波が爆風となり、周囲に爆弾を破裂させたがごとき暴威が現れたのだ。


 ……城で修行をしていた時、ダンウォードから聞いた。マーリカの実力を。


 組織での立場だけでなく、単純な戦闘力でもナインズのナンバー2といえるシュルツさん。マーリカは、そのずば抜けた戦闘センスにより、1対1なら彼と引けを取らないほどの実力を持つといわれている。


 ナインズ1の戦闘巧者(せんとうこうじゃ)――それが彼女、マーリカの二つ名なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ