0章-(3)凶行の時
3人のすぐそばまで近づいた。
抵抗もせず、ただ嫌悪感のみで男達を見下ろす瑞希。
それでも男2人は、体重を掛けて全力で押さえつけている。
こちらには全く気づいていない。興奮した彼らは、獲物を貪る獣のごとく目で、瑞希の肢体のみに視線を向けていた。
下半身を露出した男の真後ろまで近づく。
俺の眼前の男は、自分のアレを右手で握りしめ、左手で瑞希のスカートに手を入れ、無理矢理下着をはぎ取ろうとしている。
俺は――ゆっくりと、音を立てず、両足を肩幅まで広げた。
頭上高く、木の柄がついたコンクリートを持ち上げる。
脅すだけ。
そう、脅かすだけだ……
だが。
その時。
瑞希と――目が合ってしまった。
「…………!」
すると――突然瑞希は、必死に抵抗しだした。
まるで……俺の行動をいさめようとしているように。
「お前っ! クッソふざけんなよ! 暴れんな!!」
「オイ! 殴って黙らせろ!」
「靴下! こいつの靴下口に詰めろ!! 叫ばれるって!!」
「うるっせえ! 殴れ!! 早く!! 押さえられねんだよ!!」
「……しゃーねえ」
ゴッ。
肉と肉。骨と骨がぶつかる音。
最初、なんの音かわからなかった。
だがそれは。
殴られた、音。
瑞希が、このクソのような男達に殴られた音。
下半身を露出した男が、彼女に覆い被さるような格好で、彼女を拳で殴った音。
どくり。
心臓の音。
どくり。どくり。どくり。
俺の意思とは別に、動くような、音。
そして。
俺は――想定外のものを見てしまった。
殴られ、顔をそらす瑞希。
彼女のそばには――彼女の美しい黒髪が、落ちていた。
ウィッグ。
彼女に――髪は生えていなかった。
「……ぷっ」
「ははは! ふぁははははははは!!」
「何だコイツ!? ヅラぁ!? あははははは――」
笑い声。
彼女が、侮辱された声。
俺の脳の奥で、何かが疼いた。
何かの歯車が、噛み合うような音を聞いた。
ガチリ。
俺は、機械のように。
そして何のためらいもなく。躊躇なく。逡巡なく。
当然のように。
ブロックを振り下ろした。
ゴヅリ。
音。
赤。
ねばついて、ぬるい液体。
ブロックを振り下ろした。
ゴギン。
音。赤。液体。
ブロックを振り下ろした。
ブロックを振り下ろした。
ブロックを振り下ろした。
振り下ろした。振り下ろした。振り下ろした。振り下ろした。振り下ろした。
何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度




