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おはよう、それから
この世には神さまがいる。
私の神様はいつも私に微笑みかける。仮面の裏の残酷さを隠して笑う。
とても素敵で、とても綺麗だった。
神さま、彼は容姿端麗で頭も良くて話が面白い。私は何時間だって彼の話を聞いていられる。
時折ふっと、私が聞いているか、退屈していないかなど心配するかのように言葉を止める。決まって私は、聞いていますよ、という風に言葉にせずコトンと首を傾げてみせる。すると彼は満足そうに目を細めるから私は嬉しくなる。
「さて。今日ももう夕暮れだ。また来るね」
「はい…お待ちしていますね」
少しの名残惜しさが滲んでしまわないか心配したが、大丈夫そうだった。彼は私の頭をそっと撫でてから、またね、と片手を振った。
彼が完全に姿を消すと、そこからはただひたすら夜の闇へと部屋は歩を進める。夜は怖くない。けれど、寂しい。
私にとって彼は朝で、昼だ。太陽で、神さま。私を救ってくれた、唯一の神さま。
彼はきっとその例えを好まないだろうから口に出したことは無いけれど、きっと死ぬまで彼だけを慕い続けるのだろう。
そう。きっと死ぬまで。ずっと。