『私と屍』
ただ一人が好きってわけじゃなかった。
一人の方が都合がいいことが多かったからっていうのもあるし…何より一人の方が、自分の世界に浸ることができるから。誰にも、邪魔をされることなく………。
『ねぇねぇ、今日一緒にどこか遊びに行こう!』
クラスメートの一人が私に話しかけてきた。
…………あぁ、もう終わったのか。
気づけば時刻は午後4時。放課後だ。
………帰るか。
先ほどからクラスメートの女子が何か話しかけてきているようだが、生憎私は自分の世界に入っているので忙しいのだ。無視をして通り過ぎる。
『ねぇ!あんた少しくらい話を聞きなさいよ。こっちは話しかけてやってるんだからさぁ!』
クラスの女子数人が私の周りに集まってくる。
『ねぇ、聞いてんの?』
あぁ、五月蝿いな。静かにしてよ。
『転校生だからって調子乗ってんじゃないわよ!!』
『………さいな』
『?何?』
私は睨みつけて聞こえるようにはっきりと言った。
『五月蝿いなぁ、集団でいじめることでしか方法を知らない奴にかまう時間なんてないんだよ!そんないじめる暇があるんだったら勉強やら何やら他に好きなことして遊んでなさいよ!鬱陶しいわね!!!』
呆然と佇む集団を押しのけて、私は下校した。
下校してから私の日常は始まる。ほんの数時間の、私にとって大切な憩いの時間だ。
「ふぅ……疲れた」
制服のまま私は自分の部屋のベットにダイブする。
………あー、このまま寝てしまおうかなぁ。
「…………っとだめだ。まだやることがあるんだった。寝るにしてもまずはそれをやらないと」
今日も母親と父親は仕事でいないし、私には兄弟も姉妹と呼べる人もいない。一人っ子はこういうとき楽だ。
「別にお腹は空いてないし、宿題は授業中やってたからないし…うん、今日は早く寝られるな」
寝る前にまずはシャワーを浴びないとな。体は清潔に保たないと。
「さて、やることは全てやったし……」
結局ご飯も食べて、テレビ見て…と色々やってたらもう11時になってしまった。
「まぁ、いつものことだけどさ」
私は部屋の隅っこにあるクローゼットをそーっと開ける。
「……やっぱり今日も綺麗だね。君は」
目の前にいるのは、バラバラになった人の体。
ご丁寧に全てホルマリン漬けにして厳重に保管してある。自分でも頑張った方だと思う。
「………でもそろそろ新しい子が欲しいな。君の前にいた子はちょっと失敗して腐敗しちゃったから、結局捨てるしかなかったけど…次の子はどうしようか。女の子がいいかなぁ?それともいっそのこと猫とか犬とかペット系がいい?」
綺麗に保管されたそれは黄色い液体の中で静かに眠っていた。誰にも邪魔されることなく。
羨ましい。私も君みたいになれたらなぁ。
「………まあまだ。死ぬつもりはないんだけどさ」
私はそれに優しく微笑む。
「それじゃあお休み。今日はもう眠いから寝るね。明日は今日あまり話せなかった分沢山話そう」
クローゼットをそっと閉めてから布団の中にもぐり込む。布団の中は少し冷たかった。
「もう、冬か」
そっと目を閉じる。この時だけが私の幸せな一時。
私の孤独は、まるで死のように…ゆっくりと過ぎて行く。
誰にも邪魔はさせない。私だけの時間。
皆さんこんにちは
ふと、思いついたものを書いてみました。短編集的なものなので気軽に読んで頂けたらいいなと思っています
感想お待ちしてます
屍(死体)関係とかが多いのですが、それをいかに美しく表現できるか…少し不安ですが頑張ります
それでは、ゆるーく次回更新をお待ち下さい