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「でもその目論見も、全て台無しね。ウチに来てしまったんだもの」
「そうだね。夫は神無月やお祖母さんの力を信じちゃいなかった。まさか本当の能力者だとは、つゆほど思っていないだろうね」
「…これからどうなるんだろうね? あの二人」
「さあね」
依琉は肩を竦め、息を吐いた。
「離婚問題はもめるとヒドイって聞いたことがある。あの二人は特に、夫は別れたい、けれど妻は別れたくないという思いがあるから、余計にこじれる。だから夫はあんな行動に出たわけだが…」
そこまで言うと、依琉の唇が上がった。
「ここで全てが台無しになった。これから妻の体調は良くなるばかり。どんなふうになるのか、見てみたいものではあるけどね」
「下手な修羅場に顔を突っ込むのはおよしなさいな。ヤケドだけじゃ済まない時だってあるのよ」
「分かっているよ。それに今は部活の方が楽しいしね」
手をブラブラ振りながら、楽しげに言う。




