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そうだ旅行に行こう! 温泉の方法

ローチェ王妃の旅行日程 2日目


9:00 宿屋を出発


11:00 ナンガパルパッド 参拝


12:00 ナンガパルパッド内の御利益ランチ


13:00 出発


15:00 温泉ホテル(グランピング)到着



………………………………………………



カイラス王

「う〜、飲みすぎた…。」


ウィルヘルム

「バカは変わっとらんのう。」


カイラスは馬車の中でウィルヘルムの膝に頭を乗っけている。


ウィルヘルムはカイラスのおでこに皮袋に入れた氷を当ててやる。




カイラス王

「うう〜〜ん…。」


ウィルヘルム

「こりゃ………、どこを触っておる。」


カイラス王

「気を紛らわしてるんだ。」


ウィルヘルム

「あ………、や、やめんか!」


がたんと馬車が止まった。


勢いよくドアが開いてシヴリンがカイラスの頭を両手で掴んだ。


目を閉じて深呼吸をしている。


カイラス王

「おお………、治った。」


シヴリン

「今度は父上が馬車を引く番ですよ。」


シヴリンは父親を追い出してウィルヘルムをぎゅっと抱きしめた。



………………………………………………


ナンガパルパッド神殿着


山の上に建てられた豪華な大理石の神殿、山さえも作られたと言う伝説が残っている。


巨大な神殿は柱も大きい。


ウィルヘルムはペタッと柱に触って喜んでいる。


ウィルヘルム

「こりゃ、すごいのう!」


シヴリン

「大きいですね!」


カイラス王

「俺もここは初めてだな。」


ウィルヘルム

「おお、奥の女神像も大きいぞ!」


神殿の奥に巨大な女神像がそびえ立っていた。


女神の間は観光客がひしめき合っている。


よく見ると男女が腕を組んでひざまづいて祈りを捧げていた。


ウィルヘルムは端っこにある案内板を読んだ。


ウィルヘルム

「ふむふむ、腕を組んで祈るとふたりは結ばれる…。」


ガシッとウィルヘルムの腕が左右から掴まれて宙に浮いた。


ウィルヘルム

「ふぉふぉ〜お前たち!ちょっと待たんか!」


カイラスとシヴリンが腕を組んでウィルヘルムをぶら下げた状態で女神像の前で進んだ。


ウィルヘルム

「これじゃ、わしが犯罪者みたいではないか!」


周りの観光客がクスクスと笑っている。


ふたりともひざまづくと、真剣な顔で祈り始めた。


ウィルヘルム

「シヴリンまで…わしと恋人になってどうするのじゃ。まったく…。」


シヴリン

「…………。」


シヴリンは真っ赤な顔で俯いた。


カイラスはそんなシヴリンを心配そうに見つめた。


カイラス

「そろそろランチに並ばないとヤバいんじゃないか?行列。」


ウィルヘルム

「そうじゃのう。」


カイラスとシヴリンは同時に立ち上がって、ウィルヘルムの腕を掴んだまま歩き出す。


ウィルヘルム

「もういいかげん、離さんかい!」


………………………………………………



シヴリン

「ああ〜、売り切れですね。」


ウィルヘルム

「残念じゃのう、御利益ランチ……。」


カイラス王

「高いだけで美味くないぜ、きっと。」


シヴリン

「僕、下にあった屋台で何か買ってきます。」


ウィルヘルム

「すまんのう。」


カイラス王

「たのんだぞ、若者 〜。」


シヴリンは軽快に階段を駆け下りていく。


カイラスとウィルヘルムは見晴らしのいいとこにあるベンチに二人で座った。


カイラス王

「この景色………あの丘に似てるな。」


ウィルヘルム

「俺も同じ事考えてた……。」


カイラス王

「俺…?若返ったか!心も。」


ウィルヘルム

「むむ…、お前と一緒だと昔を思い出す。」


晴れ渡った空、白い雲、小さく見える街並み、街の先には海が見える。


爽やかな風が頬を撫でていく。


二人はしばらく黙って思い出すように遠くを見つめていた。


カイラス王

「俺はお前に夢中だった。

お前も俺の事を愛してくれているんだと思っていた。

だがそれは…、完全に俺の独りよがりだったんだよな…。」


エルヴィアの小さな丘で二人はキスをした事を思い出す。


ウィルヘルム

「………、カイラス、それは違うよ。」


ウィルヘルムはカイラスの瞳を見つめた。


ウィルヘルム

「当時お前は…今はもう亡くなってしまったが…姫との婚約が決まっていて…。

俺は…嫉妬したんだ…。

もう…正常にバリアなんかはれる状態じゃなかった。

それを言うとお前はきっと出奔するだのなんだの言いだしただろう。

俺は………お前に王になって欲しかったんだ!」


カイラス王

「ウィル………。」


ウィルヘルム

「だから…あの頃から気持ちは変わっていない。

愛してるよ、カイラス。」


ウィルヘルムはニッコリ笑った。


カイラスはその言葉を聞くなり、耐えかねたようにキスをした。


ウィルヘルムも彼の背中に手を回してキスに答える。


ちょうど階段を登ってきたシヴリンは二人を見てとっさに隠れた。


買ってきたファーストフードの紙袋を握りしめてたえる。


心臓がきゅっと締め付けられて痛い。


二人が離れたのを見計らって笑顔で戻った。


ウィルヘルム

「フォフォ、おかえりシヴリン、すまんのう。」


カイラス王

「……………。」


カイラスはヒゲを触りながらシヴリンを胡散臭そうに見た。


少ししなしなとした御利益野菜サンドを食べた3人は少しお土産を見た後馬車に向かった。


シヴリンが元気がないのでウィルヘルムは心配そうに手を握ったがシヴリンはさっと振り払う。


カイラス王

「ウィル、次、お前が引いてくれ。これ、地図。」


ウィルヘルム

「おお、任せておけ。久しぶりじゃの。」


ウィルヘルムは馬、一頭一頭に触れて何か語りかけた。


カイラスの三角帽子をかぶると御者席に座って手綱をひく。


馬車の中で親子は二人きり。


シヴリンは気まずそうに窓の外を見ている。


カイラス

「シヴリン……。」


シヴリン

「はい…父上様。」


シヴリンはムスッとしている。


カイラス

「想いはちゃんと口に出さねば、伝わらぬぞ。失ってからでは遅い。」


シヴリン

「………………。」


カイラス

「ウィルヘルムにちゃんと告げたのか?想っていると。」


シヴリン

「………っ先生は…父上を愛していらっしゃるんですよ!

告げたところで先生を悩ますだけではありませんか…。」


カイラス王

「違うな、お前は怖いだけだ。」


シヴリン

「そ、そんな事…。」


カイラス王

「面と向かって愛していないと言われるのが怖いだけだ。」


シヴリン

「ち………違います!」


シヴリンは小窓をバタバタ叩いた。


シヴリン

「先生!僕が馬車を引きます!」


シヴリンはウィルヘルムと怒りながら交代した。


ウィルヘルム

「シヴリンのやつ珍しく機嫌が悪いのう。」


カイラス王

「まあまあ、気にしない気にしない、そのうち治るさ。」


そういうとカイラスはウィルヘルムにべったりくっついてスリスリした。


馬車が乱暴に走り出す。


………………………………………………


予定より少し早く温泉ホテルに到着した3人は早速温泉に入ることにした。


森の中の露天風呂は石造りでお湯はエメラルドグリーン、キラキラ輝いている。


ウィルヘルムは長い髪を束ねてまとめている。


白い肌とうなじが艶かしい。


シヴリンはもうまともに見ることができない。


カイラス王

「相変わらず色っぽいな!ウィルは!」


ウィルヘルム

「バカな事を言うでない!」


王はポコリと叩かれた。


ウィルヘルム

「シヴリンや、入る前にいつものように背中を流しておくれ。」


シヴリン

「え…………………。」


ウィルヘルムはシヴリンに背中を向いて小さな木の椅子に座った。


シヴリンの心臓が太鼓のように体全体を震わせる。


シヴリンは手に石鹸をつけるとウィルヘルムの白い肌に恐る恐る触れた。


肩は華奢ですごく細い。


シヴリンは真っ赤な顔で立ち上がると走って風呂場から出て行った。


ウィルヘルム

「どど、どうしたのじゃ?シヴリン!」


カイラス王

「ああ……、あいつウブすぎ……。俺の息子とは思えんな。」


ウィルヘルム

「なんじゃ具合でも悪いのかのう。」


………………………………………………


このホテルはグランピング方式で森の中に建てられたテントで寝泊まりする。


テントと言っても豪華なベッドが設置されている。


またもやキングサイズのベッドで落ち着いたブラウンのインテリアが美しい。


温泉も大浴場よりは小さいがちゃんとした露天風呂がテントのそばにそれぞれ設置してある。


テントのすぐ前には食事をするテーブルやらソファが置かれてゆっくり会話を楽しめるようになっている。


食事はバーベキューだった。


カイラス王は鹿肉をガッツリ食べまくった。


二人のヒーラーは野菜やキノコを焼いて食べる。


ウィルヘルム

「ほっぺが落ちそうじゃ!美味いのう、美味いのう!」


シヴリン

「よかった……。」


シヴリンが少し微笑んだ。


ウィルヘルム

「ふぉふぉ、その笑顔が久しいのう。1番のご馳走じゃよ。」


シヴリンは真っ赤になってトウモロコシにかぶりついた。


食事が終わるとまたテントの前の露天風呂に入って満点の星を見上げた。


今度はシヴリンもウィルヘルムを見ないようにして温泉に浸かった。


バスローブを着た3人はソファに座って星を見ながらジャスミンティーと森のフルーツを楽しんだ。


カイラスはワインを飲んでいるが…。


ウィルヘルム

「ああ、最高じゃのう…。ほんとうにこの旅は楽しい。

お前達と一緒だしのう。」


カイラス王

「俺も久しぶりだ、こんなにゆっくりできたのは…。」


シヴリン

「…………。」


ウィルヘルム

「シヴリンよ、今日は元気がないのう、お前のための慰安旅行なのに…。

何か悩みがあるのか?」


シヴリン

「な……悩み………。」


シヴリンはウィルヘルムを潤んだ瞳で見つめた。


そしてカイラスのワイングラスを奪い取ると一気飲みした。


ウィルヘルム

「シヴリン!」


シヴリン

「先生……………、僕……先生が好きなんです。」


ウィルヘルム

「わしも愛しておるよ、シヴリン。」


ウィルヘルムはシヴリンの頭を撫でた。


カイラスがガハハハと笑って、ウィルヘルムに叩かれた。


ウィルヘルム

「どうした?わしに何かできることはないか?」


シヴリン

「………、キスしたい。」


ウィルヘルム

「き、キス!?だ、誰とじゃ!?」


カイラスがまた手を叩いて爆笑している。


シヴリン

「先生とキスしたいです。」


ウィルヘルム

「はあ?」


ウィルヘルム

「…………………………………。」



ウィルヘルムはないヒゲを触る癖をした。


ウィルヘルム

「…………、おはようのキスもお休みのキスもずっとしておるが……。

もしかして…それじゃないのか?」


シヴリン

「はい……、先生を愛しています。」


ウィルヘルム

「ふおおおおおおおお!」


と喚いてウィルヘルムは頭を抱えた。


ウィルヘルム

「ななな………なんと言うことじゃ……。ああ………………。」


シヴリン

「先生……。先生が父上様を愛してらっしゃることは知っています。」


シヴリンは立ち上がった。


シヴリン

「僕………帰ります。」


ウィルヘルム

「ま………待たんかい!」


ウィルヘルムは大きなため息をついた。


ウィルヘルム

「言うたであろう、わしはお前を愛しておる。

お前が幸せならわしも幸せなのじゃよ。

お前のいない人生はもう考えられん。」


シヴリン

「では、今、選んでください!

僕か、父上様か!」


ウィルヘルム

「っう…………………。」


ウィルヘルムは苦しそうな顔で二人の顔を交互に見た。


ウィルヘルム

「わ…わしは…。」


カイラス王

「待て、シヴリン、選ばせるな。こいつはまた逃げる。」


ウィルヘルム

「…………………。」


カイラス王

「どちらか一人を傷つけるなんてこいつにはできやしない。そういうやつだ。」


ウィルヘルムはまたため息をついた。


ウィルヘルム

「カイラスの言う通りだ……、わしには選べんよ。

もはや…恋情なのか親愛の情なのかわしにはわからん…。

ただ……、カイラスという人間が…シヴリンという人間が…好きでたまらん…。

お前たちのためなら…いつでもこの命差し出すし…

お前たちが望むならただのジジイではなく…恋人にもなろう…。

ああ…………どう言えば……伝わるじゃろうか……

わしには…そもそも選ぶなどという選択肢そのものがないんじゃよ……。

お前たちは…わしの生きる理由なのじゃ。」


カイラスとシヴリンが雷に打たれたようにウィルヘルムを見た。


ウィルヘルム

「じゃから…ふたりとも愛するのではダメかのう。」


ウィルヘルムは困った顔をしながら笑った。


カイラスとシヴリンの心に温かな光が差し込んで全てを癒した。


カイラス

「ウィル………。」


シヴリン

「先生………。」


カイラス王

「俺はそれで十分だ。」


カイラス王はウィルヘルムを愛おしそうに横抱きにするとベッドに運んで投げ込む。


自らも横にダイブしてウィルヘルムのバスローブに手を入れた。


ウィルヘルムがうわあとかなんとか喚いた。


カイラス王

「シヴリン、お前はどうする?このままじゃ俺が独り占めだ。」


シヴリンは走ってベッドにダイブすると

ウィルヘルムの顔を自分の方に向けてキスをした。




つづく

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