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そうだ旅行に行こう! 花見の方法

ウィルヘルム

「んっ…………や、やめんか!カイラス!」


ウィルヘルムは顔を背けてありったけの力で王を押すがビクともしない。


カイラス王

「ああ………私の元に帰ってきてくれたのではないのか?ウィル…。」


ウィルヘルム

「ち、違うわい!お前のためではない!

離さんか!暑苦しい!」


カイラス王

「ああ…この姿、私が恋した時の姿そのままではないか。

神が私にもう一度チャンスをくださったのだ。

ウィルと添い遂げよと。」


王はもう一度ウィルヘルムに強引なキスをした。


シヴリン

「か、神ではありません!僕が先生を若返らせました!」


シヴリンが珍しく怖い顔で父親を睨んでいる。


王はウィルヘルムから唇を離してシヴリンを見た。


カイラス王

「シヴリン、お前が………。」


シヴリン

「………………はい。」


カイラス王

「おおーーーー息子よ!素晴らしい!

なんという贈り物だ!感謝するぞ!」


カイラス王は息子のシヴリンの肩をバンバン叩いた。


ローチェ王妃

「陛下、一体……どういうことですの?」


カイラス王

「ああ………すまん、ローチェ。

ちゃんと…説明させてくれ。

私が18歳の時だ。ウィルと港町で出会ったのは。

当時王の跡を継ぐことになって悩んでいた私を助けてくれたのだ。

私は、ウィルを城に呼び寄せて宮廷で世話係兼話し相手として召抱えた。

結局…ウィルは本ばかり読んでいたがな。

私はウィルを愛していた、心から。

しかし、その思いを打ち明けたとたん、ウィルは姿を消してしまったのだ。

私の前から…。

それから80年が経ち、私はもう諦めていたが…奇跡が起きた。

これは、もう運命だ、ローチェ。

お前を愛していないわけではない、老い先短い私の最期のわがままだ、

どうか、許してほしい。」


ウィルヘルム

「いやいや、わしなしで話を進めるでない!わ………わしは帰る。」


カイラス王

「ウィル!」


シヴリン

「先生!ぼ、僕は……明日から慰安旅行に行こうと思っています。

ぜひ…先生にも付き添っていただきたいです。

まだ、身体がダルいし、頭もクラクラしますし。

お……お願いします!先生!」


シヴリンがウィルヘルムの手を取った。


ウィルヘルム

「旅行か………ついていかねば不安だのう。

また倒れる可能性もあるしのう。」


ウィルヘルムは手を伸ばしてシヴリンの髪を撫でている。


カイラスの眉がクイっと上がった。


ウィルヘルム

「よし、わしも慰安旅行付いて行こう。」


カイラス

「なっ………………。」


シヴリン

「ありがとうございます!先生。」


シヴリンはウィルヘルムを抱きしめた。


カイラス

「………………。」


カイラス王は眉をひそめて唸っている。


ローチェ王妃

「陛下は残念ですが、可愛い息子のためですから。」


カイラス王

「むう…………。」


ウィルヘルム

「わ……悪いのう……カイラス。」


カイラス王

「それならば、仕方ないな。

私はまた辺境に戻るとしよう。」


肩を落としてカイラス王は階段を登っていった。


ローチェ王妃もコングール王子に目配せして広間を出て行った。


後にはポツンと抱き合ったままの二人が残された。


シヴリン

「先生……、先生は父上様の事を愛してらっしゃったのですか?」


ウィルヘルム

「ふむ……、愛しておるよ今でものう…。

じゃが……、わしは逃げたんじゃよ。

あやつの気持ちにバリアを張ることができんでな…。

あやつには…悪かったと思っておる。」


シヴリン

(今なら…バリアを張れるなら…先生は父上様と……。)


シヴリンはぎゅっとウィルヘルムを抱きしめた。



………………………………………………



翌朝、空が少し紫色になってきた頃シヴリンはウィルヘルムをおんぶして城門に向かった。


ウィルヘルムはまだ寝ぼけ眼で頭が揺れている。


ウィルヘルム

「…………スースー。」


城門には馬車が用意されていて、ローチェ王妃とコングール王子が待ち構えていた。


ローチェ王妃

「シヴリン、荷物は全部積んでありますからね。

これが私とコングールで考えた、慰安旅行のルートです。」


コングール王子

「少し離れたところからソモニに護衛させるから心配するなよ。

楽しんでこい。」


コングールはウインクした。


シヴリン

「母上様、兄上様、ありがとうございます。」


ローチェ王妃

「陛下の事は私に任せて、さあ、行きなさい。」


シヴリンは眠ったウィルヘルムを抱えたまま馬車に乗り込んだ。


馬車の中でルートを確認する。


………………………………………………



5:00 出発


馬車にて移動


11:00 ラベンダーの花畑見学


12:00 花見をしながらお弁当


13:00 出発


14:00 ダウラギリの街に到着


ダウラギリの宿屋 ラベンダードリームに宿泊



………………………………………………



ウィルヘルム

「ん…………、もう出発したのか?」


シヴリン

「はい、先生。最初はラベンダーの花畑を見に行きますよ。」


ウィルヘルム

「フォフォフォ……、わしの好きなハーブじゃ。楽しみじゃのう………………。」


というとウィルヘルムはシヴリンに寄りかかってまた眠ってしまった。


シヴリンは可愛いウィルヘルムの顔を愛おしそうに見つめた。


無意識でウィルヘルムのピンクのアヒル口に指で触れてだんだん顔を近づけていく。


その時、馬車の小窓がバンバン叩かれた。


御者

「次の目的地はどこだ?」


シヴリン

「ダウラギリのラベンダー畑ですよ。」


御者

「了解!」


小窓からニヤリと覗いた顔はカイラス王だった。


シヴリン

「ち……………父上様〜〜〜〜〜〜!?」


シヴリンは真っ青になって窓を開けた。


カイラス王

「よお、息子よ!」


シヴリン

「父上……様…。」


ウィルヘルム

「なんじゃああーーー!カイラス、何をやっとるんじゃ!」


ウィルヘルムが目を覚ました。


カイラス王

「ウィル〜、私も行くぞ。」


ウィルヘルム

「お前、国王じゃろう!?」


カイラス王

「たまにはお忍びで国の視察をするのもいいだろう?」


王は三角帽子をかぶっている。


ウィルヘルム

「お前なあ〜。」


カイラス王

「大丈夫だって。コングールがもうしっかりしてるし、任せておけば。」


カイラス王はイシシシと笑った。


ウィルヘルムは小窓のカーテンを勢いよく閉めた。


………………………………………………



ラベンダー畑には早めに到着した。


見渡す限り一面紫色の花畑だ。


ウィルヘルム

「なんという美しさじゃ!」


ウィルヘルムは感動して涙を流している。


ウィルヘルムの左手にシヴリンが手をつないで、

右手にはカイラス王がつないでいる。


シヴリン

「先生、涙が。」


カイラス王

「ウィル、泣くなよ。」


シヴリンはハンカチで左目をぬぐい、カイラス王は右目にキスをした。


ウィルヘルム

「こりゃ、うっとおしいぞい!ふたりとも少し離れんかい!」


シヴリン

「あ、ここいいですよ!ここでランチにしましょう。」


シヴリンは敷物を広げてバスケットを置いた。


ウィルヘルムを真ん中にして親子がべったり座る。


ふたり分のサンドイッチを三等分して3人で食べた。


爽やかな風が吹いて、ラベンダーの香りを運んでくる。


3人は寝転がって空を眺めているうちに眠ってしまった。


親子は左右からウィルヘルムの髪に顔を埋めて幸せそうな顔をしている。


手はしっかりとウィルヘルムを抱きしめてもう片方の手で二本の腕枕が出来上がっている。


1時間ほど経った頃ウィルヘルムは目を覚ました。


親子二人が上から見つめている。


ウィルヘルム

「起きとるなら、わしもおこさんかい。」


ウィルヘルムは二人の頭をくしゃくしゃした。


馬車で街についたのはもう夕暮れ時であったので、

そのまま宿屋に向かうことになった。


宿屋にはすでに予約が入っていて、大きめの部屋がとってあった。


宿屋の主人は3人を見るとニヤニヤして、ごゆっくりお楽しみくだされ、と言った。


3人はラベンダードリームと書いてある部屋に入って目を見開いた。


壁もベッドもカーテンもベッドカバーも全て紫色。


キングサイズのベッドがひとつ。


ラベンダーの花が花瓶に入られているのでいい香りが漂っている。


カイラス王

「ローチェの趣味だな。」


ウィルヘルム

「ベッドがひとつしかないのう。」


カイラス王

「来てよかったぜ。」


シヴリンは頰を赤らめて口に手を当てた。


3人は一階のパブで食事をとった。


ウィルヘルムはチーズとサラダと2種のスープセット。


シヴリンはハンバーグセット。


カイラス王はワインと血がしたたる特大ステーキ。


ウィルヘルム

「100歳近い人間が食べるもんじゃないのう。」


カイラス王

「ふふん、俺はエルフの血が流れてるから長生きなんだよ。」


店のバンドが音楽を奏で始めた。


皆歌って踊り始める。


カイラスもビールを注文して飲みながら踊り出した。


知らない店の女と手を組んでくるくる踊る。


シヴリンとウィルヘルムは手を叩く。


シヴリンは父親を見て微笑んでいる。


ウィルヘルム

「カイラスのああいう人を虜にしてしまう所、好きじゃなあ。

カリスマ……と言うのだろう。」


シヴリン

「先生………なんだか、初めて父上様がわかったような気がします。

僕も、父上様の事大好きでしたが、ますます好きになりました。」


ウィルヘルム

「フォフォフォ、そうじゃろう。」


酔っ払ったカイラスを連れて部屋に戻ると、

カイラスはウィルヘルムをベッドに押し倒してキスをした。


カイラス

「ウィル〜〜〜愛してる〜〜〜〜。」


ウィルヘルム

「うえっ酒臭い!やめんか〜〜。」


シヴリンがカイラスを引っ張ってベッドから落とした。


そのままカイラスはぐーぐー寝てしまった。


シヴリン

「先生、前言撤回。さあ、寝ましょう。」


灯りを消して、シヴリンはウィルヘルムの手を握る。


ウィルヘルム

「シヴリンよ、楽しかったのう。

わしはこんな楽しかったのはひさしぶりじゃ。

感謝しとるよ。」


シヴリン

「先生……。僕もです。」


シヴリンは大好きな賢者の手にキスをした。


ウィルヘルム

「ふああ……明日も楽しみじゃな……おやすみ……。」


ウィルヘルムはシヴリンの方を向いて無防備に眠ってしまった。


シヴリンは切なそうに見つめ続けた。


つづく

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