08 エリンとドキドキデート、隠された想いを見つけ出せ!
今、公園の前に居る。
何故なら、エリンを待っているからだ。
昨日の電話があってから、エリンを誘った。
『私は”お前”のことが嫌いだけど、遊園地連れていってくれるならいい』
そんなことを言われたけどな。
貰ったデートプランのファイルを開くと、エリンは”噓がつけない”と書かれていた。
ということは、エリンは本当に俺が嫌いなのだ。
理由が知りたいところだな。
「すみません。遅れました」
エリンはサラサラの長髪を揺らしながら、走ってきた。
「大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
「じゃあ、行こうか」
俺たちは遊園地に向かい、入った。
遊園地の中は、上の見えないジェットコースターや高速回転する観覧車などがある。
なんて、おっかない乗り物なんだ。
こんなものに乗ったら酔いそうだな。
「何に乗りたい?」
「ジェットコースター…」
まさか、あのジェットコースターか。
仕方ない、エリンが望むなら乗るしかない。
しかし、1時間待ちであった。
まあ、遊園地ならこれぐらいは当たり前か。
さて、何を話したらよいのか。
エリンは俺のことが嫌いだからな。
話さない方がいいだろうか。
それでは、相手も退屈してしまうな。
さらに嫌われるかもしれない。
「エリンはそ、そのどんな食べ物が好き?」
「パフェ」
「い、いいよねパフェ。アハハ」
し、知らないぞ。俺はパフェを食べたことがないからな。
まずい、次の話題を…。
「今度は水族館でも行こうか」
「…」
今度は無視か、これは本当に嫌われているな。
心の中では『死ね。恋愛未経験男」とか思われているのだろうか。
だが、恋愛未経験でも女子との会話はキモオタどもより遥かにできる。
そんな俺がこんなところで諦めると思うな。
「フーハッハ! 俺ってSUGEEE」
周囲からの冷たい目線。
やってしまった。つい、心の声が…。
「…」
エリンは気にしていないようだ。
1時間後。遂に順番がきた。
「乗る前にこちらの薬を飲んでください」
そう言われ、薬を渡された。
この薬は体への負担を減らし、恐怖の限度を制限するものらしい。
しかし、恐怖の限度も制限できるとは。すごい技術だな。
薬を口に放り込む。
「では、乗ってください」
指示されたとおりに席に乗る。
隣にはエリンが居る。
何故だろう、さっきから誰かに見られているような気がするのだ。
まあ、気のせいだといいのだが…。
ベルトをしっかりとつけて準備はできた。
「皆さん。良い絶叫を!」
その声を同時にジェットコースターが上に昇っていく。
ガタガタと揺れている。
周りを見渡すと、海や遠くの町が見えた。
このジェットコースターは3776mの高さから落下するらしい。
通称『富士山』だそうだ。
因みに絶叫系は苦手である。
俺はゆっくりした観覧車のほうがいい。
そろそろ落ちるだろう。
俺たちは一番上に居た。
そして、下へ向かって行く。
次の瞬間、急降下した。
角度はほぼ90度。
「ぎやぁぁぁぁぁぁ!」
カッコ悪い叫び声が止まらない。
エリンの方は無表情のようだ。
もしかして、慣れているのか?
それからも続く地獄。
何十回も回転し、上に行っては下に落ち。
おのれ、吐きそうだ。
「お、終わった」
恐怖でまっすぐ歩けない。
情けないが、どこかで休憩しよう。
「ごめん、どこかで座っていいかな?」
「うん」
近くにあったベンチに座った。
少し座れば治るだろう。
「司くん。大丈夫? これでも飲む?」
そう言い、俺に水筒を差し出した。
「の、飲んでもいいのか?」
「うん…」
水筒のお茶を飲んだ。
これって間接キスじゃね?
まさか、こんなところで間接キスができるとは。
体調も元に戻ったし、一石二鳥だな。
「ありがとう。もう大丈夫だよ」
「よかった…」
「よかったら何か食べないか? 僕が奢るよ」
こうして、近くにあった飲食コーナーに入った。
メニュー表を眺める。
「何が食べたい? 何でもいいよ」
「じゃあ、いちごパフェ」
そういえば、パフェが好きって言っていたな。
俺もパフェにしてみるか。
「俺はチョコパフェにしようかな」
ボタンを押し、注文した。
ここも全てロボットらしい。
この時代は何でもロボットだな。
もしかして、ロボットに乗っ取られたりしてな。
まあ、そんな未来は無いと願いたい。
「実は…」
「実は?」
なんだ? 俺に何か伝えたいのか?
「…この気配は」
ふと横を見てみると。
黒いスーツとサングラスを装着した男が機関銃を構えていた。
その機関銃の向きは…。
「エリン!伏せろ!」
男は弾を発射させた。
弾は窓ガラスを割り、中にまで入ってくる。
周りの客や店員は叫びながら逃げていく。
数百発の弾を発射し、銃声が止んだ。
どうやら、狙いは俺たちのようだな。
「エリン、俺に着いて来い」
エリンの手を引っ張り、連れていく。
男も追いかけてきたが、さすが異世界最強の男。
エリンを抱え、華麗に逃げ切った。
俺たちは管理室に居る。
ここなら、少しは隠れられるだろう。
「なあ、聞かせてくれ。あいつは何者だ?」
「一か月前、父の財産目的の強い力を持つ強盗団が来たの。」
「そんなことがあったのか」
「今の私たちは人質。強盗団のトップの機嫌を損ねたら、殺される状態だったの」
「何か事情があって、俺たちを攻撃したのか」
なんて、強盗団だ生かすと思うなよ。
「どうしよう、このままじゃ皆殺される。私も」
涙を流しながら、そう言った。
エリンを泣かせやがって、これは許さん。
「大丈夫さ。俺が全部守ってやる」
「本当に…?」
「勿論、そんな強盗団など俺が消してやる」
「司くん…」
エリンは抱きついてきた。
俺もそっと抱きしめる。
さて、どう消してやろうかな…。