表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/20

06 メイドさんに甘えてみよう

「ここに服、置いとくよ」


「ありがとうございます」


《ミッション。『メイドさんに甘えろ』。難易度☆》


服は置いた。あとは着るのを待つだけだ。


「あの~この服はどうやって着たらいいのですか?」


彼女の方を振り向くと、そこには絶景があった。


普通ならこういう場面は、


「うあ~服を着ろ~」とか。


「そんな姿で出てくるなよ!」などと。


 そんな馬鹿げたセリフがお決まりだが。

俺は違うのだ。


「ごめん、言ってなかったね」


まずはチラッと見て、説明書を取りに行く。


実はこれも計画通りだ。


「これを見たらいいよ」


「ありがとうございます」


そして、ガッツリと絶景を目に焼き付ける。


まあ、見れるものは見ておくものだ。


彼女は扉を閉めた。


 着替えるまでに時間が掛かりそうなので、テレビでも観ることにした。


「これはえっと…。うわ!間違えた」


 フフフ…。分かる、分かるぞ! 中で何があるのかがな!

今の俺に分かるものは無い。


彼女はドジで見話せない娘だろう。


俺はこういう娘ほど愛したくなるのだ。


彼女のメイド服を想像しながら楽しんでいると。


「お待たせしました。どうでしょうか?」


そこには絵に描いたようなメイドさんが居た。


天然猫耳とか最高だろ!


「いいね、いいね。ちょっと写真を撮ってもいいかな?」


「いいですよ」


ポケットから携帯を取り出す。


「それがケータイですか?」


「そうだけど。初めて見たのか?」


 そうか、この子は外の世界をあまり知らないんだ。

ということは、愛も知らないのか。


これは俺が教えてあげねば。


「じゃあ、撮るよ。笑顔でピースしてね」


「こ、こうですか…」


恥ずかしそうだが、言うとおりにやってくれた。


パシャッと写真を撮る。


 この時代のケータイには、即時に写真を印刷する機能がある。

その機能を使い、写真を印刷する。


これは記念写真にでもしよう。


「そういえば君の名前は?」


「私たちに名前はありません」


ふん、これは俺が決めるか。


「僕が決めてもいいかな? 名前が無いと色々、不便だからね」


「分かりました。ご主人様に任せます」


名前を付けるのは、あまり得意ではないからな。


さて、どうしようかな。


「アイナでいいかな?」


「いいですよ。素敵な名前ですね」


こうして、彼女を「アイナ」と名付けた。




 さあ、準備は整った。


開こう、天国への扉を。


癒そう、心の傷を。


もう、忘れてしまおう。こんな悲しみは。


これより、『メイドさんにデレデレ作戦』を実行する!


「”膝枕”してもらってもいいかな?」


 男ならやはり、膝枕を望むものだ。

しかも、メイドさんにしてもらえるのだ。


これ程、幸せなことはない。


見ているだけでも幸せだがな。


「それでご主人様が喜ぶなら…」


第一関門クリア。


アイナは正座した。


道は開かれた。あとはこの枕で寝るだけだ。


「ふあ~これは幸せだ」


 この膝は素晴らしい。

女の子の膝がこんなにもいいとは。


しかし、これだけでは終わらない。


ポケットから耳かきを取り出す。


「耳かきをしてくれないか?」


「分かりました」


 アイナは耳かきを手に取り。

俺の耳の中に入れた。


「こ、こうですか?」


「そうそう。そんな感じ」


これはたまりませんわ。


祝福の時間を過ごすこと、15分。


時間はあっという間に過ぎていった。


《ミッションクリア!》




「ありがとう。気持ち良かったよ」


「喜んでいただき、嬉しいです」


時計を見ると丁度、正午だった。


「お腹空いてない?」


「空きました。もうペコペコです」


「そうか。一緒に食べに行こうか」


携帯を取り出し、周辺の店を調べる。


だが、この辺りにはラーメン屋ばかりだ。


 あの時のように魂が抜けている場合なら食べられるが、今は無理だな。


「アイナは何が食べたい?」


「寿司という食べ物が食べたいです」


「寿司か…」


携帯で寿司屋を検索してみたが、この辺りにはなく。


さらに検索範囲を広げてみると、隣町に一軒だけ回転寿司があった。


 本当は普通の寿司を食べさせてあげたいが、調べてみると50㎞も先だったので諦めた。


「ところで、その耳と尻尾は隠せるかな?」


「尻尾は可能ですが、耳は…」


 俺は耳も尻尾も好きなのだが、この時代の人間は獣人を嫌っているからな。

隠さないといけないのだが。


 そういえば、メイド衣装とともに注文した黒のマリンキャップがあったな。


「ちょっと待ってて」


マリンキャップを取りに行った。




「これを被るといいよ」


アイナにマリンキャップを渡した。


「分かりました」


そう言い、マリンキャップを被った。


「うん、似合っているよ」


タクシーを呼び、寿司屋に向かう。




 タクシーの中でこんな会話をした。


「実は、僕の実家は寿司屋なんだよ」


「そうなんですか」


「まあ、寿司は握れないけどね」


「ご主人様の寿司が食べてみたかったです…」


「また、練習しておくよ」


 少しでも会話をして、いち早くアイナの緊張を解いてあげたいのだが。


ところで、何故こんなに寿司屋が少ないのだ?


もしかして、この時代では寿司はオワコンなのだろうか。




 そんなことを考えていると、寿司屋の前に着いていた。

 

料金を払い、タクシーを降りる。


寿司屋の中に入ると、ロボが居た。


この店も全てロボがやっているのか。


「何名様ですか?」


「2人だ」


「では、あちらの席で」


俺たちはロボに指定された席に向かった。


「ふぅ…。やっと、まともな物が食べれる」


そう思いながら、席に着いた。


アイナも席に着いた。


「さて、何があるかな…」


牛、豚、羊、ナス、卵…。


何故、魚介類が無いのだ?


メニュー表を確認してみると、鮪があった。


しかし、驚愕の価格。一皿5万円。


こんなときに限って6万円しか入っていない。


だが、アイナには魚を食わしてあげたい。


「よし、鮪を頼もう」


こうして、鮪がやってきた。


「アイナ。食べていいぞ」


「え?いいんですか?」


「他も好きなだけ食べな」


「では、いただきます…」


それからも色々食べていき、6万は消えた。


「すみません。ご主人様は何も…」


「いいさ。俺のことは気にするな」


ちくしょう。10万は持っていけばよかったな。


タクシー代も無いので、歩いて帰ることになった。




 ようやく、家の前に着いた。


「すまんな。俺が無能なせいで…」


「気にしないでください。お寿司は美味しかったですよ」


「喜んでくれてよかったよ」


扉を開け、リビングに向かった。


ポケットの携帯から振動が。


取り出してみると、電話がきていた。


相手はいつもの老人だ。


「もしもし、俺だが?」


「お前を異世界に連れ戻す!」


老人はイライラした口調でそう言った。


これは面倒なことになる予感…。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ