05 失恋、そうだ!メイドさんを雇おう!
今、俺は公園のベンチに座っている。
理由は…色々ある。
(おのれ、何処も彼処もリア充ばかりだ)
運悪くカップルの多い公園に来てしまった。
まだ、駅も分からないこの町では、そんなことを知るはずもない。
動くのもめんどくさいので座り込んでいる。
あと1時間はこうしているつもりだ。
頭を抱えて悩んでいると、色々な声が聞こえてきた。
「うあ…。何あいつ」
「知らね、あっち行こうぜ」
もうなんとでも言え。
この時代にもリア充たちは存在しているのか。
当たり前だがな。
もしかしたら、俺が昔よく見ていたリア充の子孫かもしれない。
よく考えてみると、こんな所に居るよりも家に居た方がいいのでは?
そう、思った。
1時間は居るつもりだったが、ここは居心地が悪いので、家に向かう。
15分後、家に着いた。
「ただいま~」
当然、返事はない。
そう考えると家族が居た頃の生活は本当に恵まれていたと思う。
こんな世界なら、タイムマシンでも使って過去に行こうかな。
行けたらの話だけど。
リビングの椅子に座り込んだ。
別にテレビを観る訳でも無い。
ただ、疲れただけなのだ。
「カップラーメンでも食うか…」
カップラーメンを開け、お湯を注いだ。
因みに30秒でできるとのことだ。
早速、付いてきた割り箸を使い、食べてみた。
割り箸は今でも変わっていない。
「うぐっ…。濃すぎる…」
一口で分かった、これは醤油ではない何かだ。
喉を刺激するこの濃さ、食えたものじゃない。
こんなものばかり食べている奴らは大丈夫なのだろうか。
そう、疑問に思う。
それからも死にかけながら、完食した。
悲しみは若干消えたが、吐き気と頭痛がするので寝ることにした。
「うっ…。まだ口に残ってやがる」
翌朝になってもカープラーメンの味は残り続けた。
だが、心の傷は未だに癒えない。
この傷に癒すには、何か支えが必要だ。
支えか…。
この時、あることを思いついた。
ということで外へ出た。
今回は"アレ"を買うのだ。
そのために俺はある店に来た。
「いらっしゃい。『今日はどんな奴隷を?』」
ここは街の真ん中にある。『奴隷商店』である。
中は様々な写真が貼られている部屋だ。
ここでは様々な獣人が売られている。
使用用途は主に奴隷だ。
「1番高いやつを頼む。なるべく忠誠心の強いやつを」
「あんた、学生だろ?金はあるのか?」
白い髭を生やした店主はそう言った。
「金ならある」
「分かった。ここの2匹がオススメですぜ」
店主は2つの写真を俺に渡した。
「この犬型の獣人はオスで、猫型の獣人はメスです」
まず、犬型の獣人は凛々しいイケメン系の顔だ。
こういうタイプの獣人は女性に人気らしい。
もう一つの獣人は清純っぽい美少女系の顔だ。
「こっちの猫型を頼む」
「800万ですぜ」
一般的な獣人は20万から150万近くだが、美少女や美少年な獣人は高価格だ。まあ、妥当だな。
店主にカードを差し出した。
因みにあの老人からは毎月200万貰っている。
それとは別に5000万の貯金もある。
何故、ここまで与えるのかは知らないが、貰えるものは持っておいて損は無い。
「毎度あり。少し待ってくださいな」
店主は奥の部屋に入った。
俺は奴隷商店に来たが、奴隷を買いに来たわけではない。
メイドさんを雇いに来たのだ。
だから、可愛い女の子を指定したのだ。
この子なら心の傷を癒してもらえると思うのだが…。
「お待たせいたしました。こいつです」
店主は大きな布の被った子を連れてきた。
「まあ、家に着いてから布取ってくださいな。街の中だと色々厄介ですぜ」
「分かった。ありがとうな」
「行きな。お前の主人だ」
「はい」
か細い声で返事をし、こちらにやって来た。
「よかったら、また来な」
「あぁ…。分かった」
こうして、獣人を買うことに成功した。
しかし、俺も成長したな。
あの頃は無口で誰とも会話ができなかったが。
今は一人で買い物ができるようになった。
俺にとって異世界での生活は大きな成長だったのかもしれない。
獣人を連れて店を出た。
寄り道などをせずに家に向かうこと18分。
ようやく家の前に着いた。
「ここが僕の家だよ」
「なんか…豆腐という食べ物みたいですね」
「ハハハ、そうかもね」
「すみません。余計なことを…」
「いいよ。気にしないでくれ。さあ、中に入ろうか」
確かに四角形で全面が白いから、豆腐かもな。
そんなことを思っていたら、豆腐が食べたくなってきた。
扉を開け、家の中に入る。
「靴はそこに置いててね」
「分かりました」
流石、最高クラスの子だ。
あれだけの金を払った価値もある。
リビングの中に入った。
「布を取ってもらってもいいかな?」
「はい。ご主人様」
そう言い。彼女は被っていた布を脱いだ。
猫耳に、揺らしている尻尾。
まるで猫の擬人化だな。
ボロボロの服で髪もぼさぼさだが。白い長髪に大きな目、それなりの胸。
身長は145cmぐらいだ。
写真で見たよりも遥かに可愛い。
「可愛いじゃないか~」
そう言いながら、髪を撫でる。
「そ、そんなこと…」
顔を赤らめている。
益々、愛したくなった。
「そこにお風呂があるから、入ってきなよ」
「え?いいのですか?」
「当たり前だよ」
「私は所詮、奴隷なのですよ…」
「僕は君を奴隷として雇ったのではない」
こんな可愛い娘を奴隷として扱うわけがない。
「君は今日から僕のメイドさ」
「メ、メイドですか?」
「駄目かな?」
「いいですよ!私、やってみたかったんです!」
《『メイドさん』を手に入れた!》
良かった。ここで断られたらどうしようかと…。
「じゃあ服を用意しておくね」
「はい!」
彼女は風呂場に向かって行った。
さて、我が秘密兵器を出すとしようか。
玄関にあった箱を開ける。
「これこそが! 完璧なる衣装! メイド服!」
中にはメイド衣装があった。
昨日の深夜に頼み、早朝に受け取ったのだ。
エリンにでも着せようと計画していたものだが、丁度良かった。
さあ、早く風呂から上がるがよい。