04 僕の幻想が砕けた時、何かが死んだ
いや、今の状況に満足している場合ではない。
このままでは、せっかくできた数少ない友人が取られてしまう。
ということはお昼はぼっち飯だ。
それだけは回避したい。
そうでなくては俺は悲しい思いをしながら過ごさなければならない。
二時間目は学校の校則や主な授業内容の説明だった。
あとは各委員会決めがあった。
委員会は男子と女子が一人ずつらしい。
俺は男子が誰も立候補しなかった図書委員に入った。
2300年代の本に興味があったということもあったが、本当は…。
「やったー! 図書委員だ」
エリンが居るからだ。
二人きりでの仕事。
そして、恋人関係へと発展していき…。
何だそれは! 考えてはいけない。
そういうのは単なる空想だ。
変な妄想をしている間に二時間目は終了していた。
「司さん。あなたはエリンに恋している」
「うわ! 何だよお前!」
背後にダークアラン3世(笑)が居たのだ。
「あなたの声はよーく聞こえましたよ」
「当たり前だろ、あんな美少女に惚れない男は居ないさ」
「意外と正直ですね」
「まあな」
「想像してくださいエリンとのキスを…」
エリンとのキスか…。
唇と唇が重なって、幸せな気持ちになり…。
「ほほ~たまらないな!」
「やっぱり童貞ですね」
そうだ、良いことを思いついた。
三時間目が始まった。
三時間目は銃で200m先の的を射抜くという授業だ。
異世界に居た頃に「百発百中のツカサ」と言われていた俺には容易いことさ。(言われてない)
まずはダークアラン3世(見せしめ)の出番だ。
ここでこいつが犠牲となり、次で俺が成功すれば…。
まあ、めでたくエリンは俺にメロメロという訳だ!(予定)
さて、早く犠牲となるがよい。
ダークアラン(ryは置かれている銃を取った。
銃はショットガンのようだが、この時代の弾は光で出来ているらしい。
銃を的に向けて、引き金を引いた。
音はなく、弾は大幅にズレていた。
(計画通り)
「次、岡野だ」
俺の出番が来たようだ。
この授業は今後の評価も変わるということなので本気やろう。
勿論、本当はエリンの気持ちを惹くためだ。
それ以外に考えることは無い。
銃に関しては得意分野だ。
異世界時代はトップでは無かったが、それなりの順位ではあった。
銃を手に取り、標準を合わせる。
銃は予想以上に軽く、慣れない感覚だった。
さらに微調整を行い、的の真ん中に合わせる。
(ここだ)
そう思った途端、素早く引き金を引いた。
「おお~」
他の生徒達の声が聞こえた。
弾は的のど真ん中を貫いている。
(これで…エリンは)
「うわ~このアリ大きい」
「本当ですね」
「どれどれ」
肝心のエリンは見ていなかった。
3時間目が終わり、教室に戻っていた。
「岡野君だっけ? 君すごいね!」
さっきの授業のおかげで少しは存在感ができたが、エリンの気持ちが惹けていない。
これでは俺の努力は無意味だ。
「まあ、次の授業で頑張りましょうよ」
「あぁ…。お前か」
いつ間にか隣にダークアラン3世が居た。
「次は国語だ。これでは何も出来ない」
魔法科の高校とはいえ、国語や数学などの基礎的な教科はある。
地理や理科などの教科は存在しない。
「それでは食事誘ってみてはどうですか?」
「ふむ、それがいいかな」
そういえば食堂があったな。
初学食は女の子と一緒か、悪くないスタートだ。
特に何も無く、4時間目が終了した。
さて、エリンに話しかけるとするか。
異世界時代は女子と話す機会が多かったので、一般童貞特特有の女子と話せない、等ということはない。
「おい、エリン」
「ん、な~に?」
「いや、良かったら一緒に食事でもしないか?」
「ん~いいよ」
まずは第1関門突破。
見たか。この雑魚どもが。
俺が見た先には、壁に隠れていた男たちが居た。
ふん、女子にもまともに話せないキモオタどもめ。
お前らごときが岡野司に勝てると思うな。
「じゃあ、食堂に行こうか」
難なく食堂に着いた。
この食堂は食券を購入し、指定の席に座るとロボが食べ物を持ってきてくれるらしい。
初めは口に合う物は無いと思っていたが、300年経った今でも主なメニューに違いはなかった。
「僕はラーメンにするけど。エリンは何がいい?」
「じゃあ、パスタで」
「分かった。勿論、僕が奢るよ」
「ありがとう♡でも…」
「ん?何だ?遠慮はするなよ」
流石俺だ、普通の童貞では到底辿り着けない次元に居るのだからな。
「私は"君のことが好きじゃないから"」
この時、俺の中で何かが砕けた。
それからの事は特に覚えていない。
多分、無言でラーメンを食べていたと思う。
下校の時間と同時に走り出た。
作戦が成功していたら、今頃手を繋いでいただろうか。
そんな事を考えていた。
途中にあった売店でカップラーメンを買って帰った。
この時代にもカップラーメンはあるのだな。
ちくしょう!俺はこんなはずじゃ無かったのに!
こうして、最悪の高校生活1日目を終えた。
勿論、俺はこんな所では諦めない。
今度こそは成功させてみせる。
そして、こんな世界でもリア充になるのだ。
今に見ていろ。300年前のリア充ども!