18 学校遠足inロシア 1
「ご主人様!朝ですよ!」
「ん~いま何時だ?」
寝ぼけた声でアイナに話しかける。
「7時ですよ!早く起きてください」
「いや~まだ間に合うからいいよ」
「はぁ…仕方ないですね」
いや~ベッドもいいもんだな。
布団とはまた違う気持ちよさだ。
今俺は快楽に包まれているむにゃむにゃ…。
「ん~くさやのいい匂いがするぞ~」
あれ?くさや?
気が付いたら時には部屋は猛烈な匂いに満たされていた。
「まずい、近くでくさやを焼いているのか」
ひとまずベッド中に隠れる。
俺を起こすためにここまでやるとは…。
だが、甘いな。
獣人は人より嗅覚が優れている。
この匂いに耐えられるはずがない。
「残念ですねご主人様」
恐る恐るアイナの方を見ると。
「な、なんですとーーーー!?」
ガスマスクや訳の分からない装置をつけ、くさやを焼いているアイナが居た。
あんなものどこに売ってるんだよ。
「う、うげぇ臭い」
「ご主人様も長くは持ちませんね!」
このままでは死んでしまう。
だがしかし、ここで使えるのがこれよ。
「はい、バリア」
寝ぼけた脳では本格的なものは使えないが、匂いぐらいは防げるのさ。
「そう!この瞬間を待っていたのです!」
アイナは近づき、俺が被っていた布を取った。
こんなバリアでは匂い程度しか防げないのは分かっていたが…。
「そ、それは…」
アイナの手には2つのわさび。
そして、彼女から溢れる殺意のオーラ。
その瞬間、背中がゾワゾワしてきた。
「うぎゃああああああア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!」
鼻を指す強烈な匂いが脳を刺激する。
鼻の中には2本のわさび。
既に寝ぼけたいたのは脳は覚醒していた。
そんなこともあったが、何とか学校に着いた。
くさやの匂いはシャワーで流したが、まだ鼻の奥にはくさやとわさびの匂いが染み付いている。
「なんだアレは?」
校庭の方を見ると6機の飛行機が止まっていた。
「おい!司!早く来いよ」
たかしが俺を呼んでいる。
既に何人かの生徒が揃っているようだ。
「なんなんだこれは?」
「ロシアに行くための飛行機だな」
ん?これ遠足だよな?
普通バスとかじゃないの?
「はぁ~俺も火星に行きたかったな」
「か、火星!?」
何!?この時代宇宙旅行が当たり前なの!?
「こんな”近場”Gクラスだけだぜ」
(近場とは一体…)
「お待たせ~」
そう言い、笑顔でエリンがやってきた。
「なあ、ロシアまでどれぐらい掛かるんだ?」
ロシアだと数時間は確実にかかると思うのだが…。
「まあ、モスクワだし1時間ちょっとだろ」
「へぇ?速くね?」
「司くんこのくらい普通だよ」
流石は300年後の世界。技術が違うな。
先生が「はーい。各クラスの飛行機に乗ってください。」と言った。
遠足で飛行機とは…。
流石は私立だな、桁が違う。
「ふ~ん飛行機の中は普通だな」
飛行機に乗り込んでみたが、中は案外普通だ。
300年経っても変わらないもんなのか?
「じゃあ、司くんは地味子さんの隣ね」
そうか、席は2つだったな…て。
「は!?暗黒神ジミコドラゴンの隣だと!?」
「残念だったな司。俺は広場で友達と話すから」
「私は他の子の席に行くから」
なんてこったい。あんな影と一緒にいたらこっちまで暗くなりそうだ。
「じゃあ、俺も広場に行くわ」
実はこの飛行機は貸切で、中には広い広場もある。
「これ完全に入ってんのか?」ってぐらいのな。
「ダメよ。司くんが地味子を相手しないと…」
「しないと?」
「司くんのこと…”嫌いになっちゃう”」
「はい!喜んで地味子を対処するので、それは辞めてください!」
「じゃあ、よろしくねー」
これでいいんだ。
エリンに嫌われるぐらいなら引き受けるさ。
もし嫌われたら死ぬか…。
いや、それだとアイナが悲しむよな?
そんなことを考えていると放送が流れた。
「これより出発しますので暴れないようにしてください」
というか、ベルトとか付けなくても大丈夫か?
「……………おい」
背後から今にも死にそうな声がした。
「……………聞いてください」
「はい?」
後ろを振り抜くとそこには闇があった。
そう彼女が影下地味子。
「HAHAHA君が地味子かな?」
ボサボサで手入れのされていない髪。
その髪が長すぎて顔は見えない貞子状態(?)。
まさしく幽霊だな。夜に会ったらお漏らしそうだ。
「じゃあ座ろっか」
「……わ、私……………」
いきなり黙り込んだ。
な、長い…。こいつ大丈夫か?
30秒ぐらい待ち、遂に口を開けた。
「………………奥で」
「お、おう」
何こいつ?腹にナイスでも刺さってんの?
死にかけじゃん。
こうして、彼女が窓側。俺が廊下側に座った。
(なんか映画とかないかな~)
前にモニターがあったので色々操作すると。
映画、ゲーム、テレビ………仮想現実!?
なんか色々機能があったが俺は映画を選んだ。
でも、仮想現実も気になるな…。
多分VRとかが出てくるんだろうな。
しかし、この時代の映画はどのようなものなのか。
色々検索してみたが、知っている作品はまず無かった。
「これより飛行機が出発します!皆さん良い旅を!」
ここで俺はあることに気付く。
(ここ滑走路無いよな?)
まず、飛行機を止めるだけでギリギリの校庭なのだ。
走れば学校や近くの森林をめちゃくちゃするだろう。
しかし、そのような心配は必要無かった。
「では、上昇します」
飛行機はエレベーターのように真っ直ぐ飛んだ。
「?」
窓から確認すると既に雲が下にある。
「ただいま上空5000mです」
ほえ~もう富士山より高いのか…。
「それではスピードを出します」
放送からそう聞こえた瞬間。
「!?」
耳を圧迫するような圧力。
外の景色が高速で動いている。
(は、速すぎる!?)
「もうマッハ数キロとかのレベルだろこれ」と思うほど速い。
「あと1時間ほどで到着地に着きます~」
楽しい学校遠足が始まろうとしている…。
「あばばばばばばばばうっうぇぇぇぇ…は、はきぃぃそう」
あまりの速さに司は酔っていた。