15 地獄で無双してやろう! その1
「おい、岡野司!」
「は、はい?」
はぁ…遂に着いてしまった。
目の前には大きな建物がある。
ここに閻魔が居るとか居ないとか。
「お前が一番初めだ」
「I can not understand Japanese(私は日本語を理解できない)」
「何言ってんだ。早く来い」
腕を引っ張られながら連れて行かれる。
「嫌だ!行きたくない!」
「フフフ。いいことを教えてやる」
どうせ、『嘘だよん~』とか言うんだろ。
「閻魔様は美女だ」
「ありがとう!」
建物に向かって全力疾走。
「最期くらいは美女を見るぜ!」
大きな扉を勢いよく開ける。
「あ、あれ?」
目の前には美女ではなく。
酒くさそうなおっさんが居た。
「お前は地獄行きだな」
「あ…あの、もう少し考え…」
床が消えた。
「じゃあな。精々頑張れよ」
「ふん、おっさん。俺を甘く見るなよ」
精一杯の力を体に込めた。
「ハッ!」
体が空中に静止している。
これが『空中浮遊』。
これで脱出してやるぜ。
「早く落ちろよ」
そう言ったと同時に上から水が滝のように降りてきた。
「うごごごご…」
空中浮遊では水の勢いには耐えれず。
そのまま暗闇の中へ落ちていく。
(ちくしょう。こんなところで終わるのか)
「おい!早く起きやがれ!」
何だよ…。うるさいな。
「このポンコツが!」
「イテッ!」
何か硬いもので叩き起こされた。
仕方なく、目を開けてみると。
「はぁ…。やっぱり地獄じゃん」
無数の針の山や血の池、大きな釜。
他にも様々な恐怖がある。
これは地獄絵図だな。
まあ、本物の地獄だけど。
「貴様にはこれから5つの試練を突破してもらう!」
全身赤色で、いかにも鬼という感じの男がそう言った。
「突破したら?」
「お前を生き返らせてやる」
そうか、それならまだ希望はあるな。
「まあ、成功者は今までに3人しかいないがな」
そう言い、鬼はどこかへ行った。
面白い。可能性が0ではないのなら。
この俺が5つの試練を突破してやる!
「まずは血の池地獄か」
目の前には赤い池が広がっている。
ルールによると。
ここを泳ぎきればいいらしい。
だが、そう簡単にはいかない。
鉄臭い血の匂いは挑戦者の体調を崩させる。
しかも、この池には凶暴な人食い魚がいるらしい。
今、泳いでる人を見る限り。
開発魔法”は”使えないらしい。
「さて、泳ぐか!」
勢いよく池に飛び込み、それと同時に壁を蹴る。
蹴った勢いで一気に300mも進んだ。
これは身体能力上昇『水泳』という能力。
この能力を使えば簡単にこの池を泳ぎきれる。
(あと…1kmほどか)
血を飲み込まないように顔を上げながら、平泳ぎをする。
勿論、ただの平泳ぎではない。
勢いよく池を進んでいく。
ゴールまであと30mというところで。
ゴンッ!と何かにぶつかる音がした。
地上に上がり、確認してみると。
大きな魚が浮いていた。
いつの間にか人食い魚を倒していたようだな。
因みにこの間は僅か30秒だ。
人間離れした速さだったので、監視していた鬼は口を開けながらこちらを見ていた。
「さて、次の試練は…」
数歩歩くと、目の前に針山があった。
今度は針山地獄のようだ。
これは針に刺されながら山を登り、下るという試練らしい。
一応、死者なので死ぬことはないが、痛みは感じる。
だから、ここでリタイアする者も少なくはない。
まあ、ここからが第一関門だ。
「身体能力上昇!『防御』を使用!」
この能力はその名の通り防御力を一時的に急上昇させる。
ただ、この山は自らを刺しながら登っていくものである。
防御力を上げてしまっては針が刺さらない。
なので、一気に頂上を目指す。
「さあ!二回戦!」
宣言どおり、山を一気に登っていく。
周りの物は呆然とこちらを見ていた。
因みに能力の使用は禁止ではない。
何故ならルールにそんなことは書いていなかったからだ。
8秒ほどで100mの山を登りきった。
ここからは下りだ。
本当はここから飛びたいが、それはルール違反らしいので辞めておく。
「うおおおおおおおお!」
大声で叫びながら地上へ走る。
やばい、これ結構楽しい。
13秒で2つ目の試練を突破した。
これには監視も驚いている。
「さて、次は何かな~」
流石にこんなに簡単では、余裕しかない。
まあ、次もすぐ終わるかな。
「はぁ…。ここから30分か…」
仕方なく徒歩で次の試練に向かうことにした。
それから30分。次の試練場に着いた。
目の前にはゲームセンターのような建物がある。
その建物に迷いなく入ると。
「さあ!次のチャレンジャーはこちら!」
中はやたら騒がしく、暗い。
あとはゲーム台が何十台とある。
やはり、ゲームのようだ。
「さて、岡野さんゲーム台へお進みください」
司会に指示された通りに指定されたゲーム台に進んだ。
そこには2つのゲーム台があった。
俺は空いている方の台の前に着いた。
「フフフ。プロゲーマーの僕には勝てませんよ」
対戦相手はメガネをかけたチビだ。
喧嘩ならデコピン一発で倒せそうだな。
「ところで、これは何のゲームだ?」
「ヒヒヒ。格ゲーですよ」
格ゲーなら小学生の頃よくやっていたな。
面白い、ボコボコにして泣かせてやる。
「では、電源を入れます!」
司会者の声と同時にゲームの電源がついた。
「よし!あいつをボコボコにするぞ!」
第3の試練『格ゲー地獄』が始まった。