14 やべぇ!死んじまった!
「お…起きて!」
誰だ。どこかで聞いたことがある声だな。
金髪で可愛い娘だったかな。
「ねえ!起きてよ」
な…何だよ俺はまだ寝ていたいんだ。
はぁ…明日は学校だったな。
「起きなさいよ!」
仕方ない。起きてみるか。
目を覚ますと、そこにはぼんやりとした景色が。
「おはよう!司くん」
「ど…どうなっているんだ!?」
なんと俺の上にエリンが居たのだ。
しかも、服なし!
「じゃあ、いくよ」
そう言い、唇をこちらに近づけてきた。
夢だとは分かっている。
ありがとう!夢の神様!
唇は目の前に来ていた。
幸せな気分になっていく。
「大好きだー!エリン!」
あ、あれ?エリンが居ないぞー?
しまった。夢が覚めた!
今、俺はベッドで寝ていたようだ。
誰かがここまで運んでくれたのだろう。
窓から外を見てみると、暗闇に包まれていた。
「さて、アイナの元に行くか」
背後から妙な気配が。
振り向いてみると、そこには黒ヘルメットが居た。
「ん?なんで居るの?」
相手は返事をせず、マントから日本刀を出した。
「フフフ…この岡野司に戦いを挑むというのか」
無言でこちらに向かってきた。
それを素早く避ける。
「あ、危ねぇ!」
なんて奴だ、いきなり襲ってくるとは。
俺にも何か武器があれば。
そんな時、ベッドに下に何かがあった。
この際、何でもいい。
相手はまたこちらに向かってきた。
ベッドの下にあった物を取り出す。
「ほう、これか」
ベッドの下にあったのは竹刀。
何故、こんなところにあるのかは謎だが。
竹刀で相手の攻撃を防ぐ。
小学生の時、習っていた剣道がこんな時に役立つとは。
当時の俺には予想出来なかっただろうな。
相手は一旦後ろに下がり、距離を取った。
さて、こいつは味方か敵か。
少し、見極めてやるか。
竹刀を構え、相手の様子を見る。
(来ないのなら!)
こちらから相手に向かった。
俺は胴体を狙ったが、相手はそれを防いだ。
相手は躊躇せず首に日本刀を振った。
それをしゃがんで避ける。
そこから40秒ほどの激しい攻防戦が始まった。
一旦後ろに下がり、距離を取る。
(次はどう来るか…)
相手は高く飛び、こちらに刀を振ってきた。
(何…!?)
何とか防いだが、凄まじい力だ。
竹刀がペキペキと鳴っている。
このままでは竹刀が壊れてしまう。
そうなると俺に刀が命中する。
ありったけの力を込めて。
相手を押し返した。
しかし、力込めすぎて竹刀が壊れてしまった。
(チッ…)
心の中で舌打ちした。
竹刀は上の方が壊れ、少し残っているだけだ。
やろうと思えば、攻撃できるかもしれない。
「うおおおおぉ!くたばれッーーーー!」
叫びながら相手の方へと向かう。
こうなったらこの竹刀で適当に当ててやる!
(あと、もう少し…)
グサリと肉に何かが刺さる音がした。
あれ?こんな竹刀じゃ刺さらないはずだぞ?
まあ、いいか。多少刺さっても死ぬわけないか。
メンゴメンゴ、可哀想な相手さん。
だが、相手を見てみると傷は一切無かった。
ということは、刺さっているのは…。
「俺じゃねぇか!」
やばいやばい!左胸に深く刺さってるよ。
相手は刀を抜いた。
体の力が抜けて倒れる。
痺れて体が思うように動かない。
これ死んじゃうやつじゃん。
左胸からケチャップソースが吹き出している。
ちょっと待てい!やっぱりダメじゃん。
(あ…なんか気持ちよくなってきた)
体の力はどんどん抜けていき。
瞼も閉じていく。
(やばい…俺まだ童貞じゃね)
こうして、童貞のまま生涯を終えてしまった。
「ん…んん。はぁ!」
目を覚ますと、見覚えのない景色が広がっていた。
「あれ…どこだよここ」
地面は紫、目の前には川がある。
その川には死者を乗せた舟が流れていた。
ん?死者だと?
死者って死んだ人だろ。
それが居るということは…。
「やべぇ!死んじまった!」
この瞬間、気づいてしまった。
やばいやばい。どうしよう。
これは夢なのか現実なのか。
それが大切だ。
とりあえず、今の俺を確認だ。
服は白いな。これが死装束ってやつか?
何か頭にも違和感があるな。
川で自分の顔を確認してみると。
頭の上に輪っかがあった。
「やっぱり死んでるじゃん!」
やっぱり、これは現実だよ。
嫌だ!復活したいしたいしたい!
どこかに死者蘇生のカードでも落ちてないか。
うん、無いよな!
あっても蘇生できないしな!
「はぁ…しかも、地獄だよな俺」
この感じは明らかに地獄行きだ。
生前何かしちゃったかな。
生前したこと。
『女の子の裸を自ら直視した』
『男の娘に欲情した』
やばい、ここ数日だけでもこんなにある。
もうダメだ。俺、地獄行きだ。
「おい、そこのお前早く来い」
「お、俺?」
そこには1人のおっさんが居た。
「これから閻魔様の所に行くぞ」
は?閻魔だと?
俺は閻魔という存在が怖そうなので。
無言でダッシュした。
「に、逃げるんだー!」
よし、この速さなら追いつけまい。
「ほら、行くぞ」
しかし、走る前に掴まれていた。
「離せ!俺は死んでいない!」
「ほいよ」
思いっきり投げられ、舟に乗せられた。
「嫌だ!俺は死んでないんだ!」
周りの死者たちは黙っている中。
俺だけが喚いていた。
「じゃあ、行くから落ちるなよ」
「嫌だー!助けてくれ神様ー!」
しかし、願いは叶わず。
舟は閻魔の元へと進んでいく。
こうして、地獄の死後生活が始まった。