13 新たなメイドさんを雇おう
「しかし、広すぎるな」
広がる空間に、感動した。
「そうですね。私たちには勿体ないくらいですね」
「アイナは中を見ていてくれ。俺は庭を見に行く」
「了解しました」
庭へ向かう。
「ここが庭か」
屋敷のすぐ側には庭がある。
あまり手入れはされていないようだ。
あちらこちらに雑草が生い茂っている。
「ここは後で手入れしよう」
そんなことを考えていると。
背後から重みがした。
「動くな!」
地面に押さえつけられ。
背後には幼い女の子が乗っていた。
「へへへ。お嬢ちゃん武器も無しに敵に乗るのは危険だぜ」
「ふん、これでも喰らえ」
そう言い、俺の耳を捻った。
「いてて…」
背後に乗っているとはいえ。
相手は幼女だ。簡単に立ち上がれる。
まあ、ちょっと遊んでるだけどね。
「どうだ!僕の縄張り入った罰だ!」
「ぼ…僕?」
「さっきから女扱いしやがって!僕は"男"だぞ!」
ほう、これが男の娘というやつか。
「フフフ…面白い」
「へっ?」
いきなり立ち上がり、相手を振り落とす。
「おい、乱暴だぞ!」
「今度はこっちからだ!」
相手の体を触る。
「こ、こら!触るな!」
「ほれほれ~」
「死ね!変態!通報するぞ!」
「いや、お前は男だから問題ない」
多分、そうだよな?
しかし、この女の子のような体を触れるとは。
男の娘は最高だな!
「ご主人様。部屋からこんなものが…」
振り向くと。
そこには、アイナが立ち尽くしていた。
まるで魂が抜けたように。
「これはあれだ!危険物の検査だ!」
「嘘つけ!触りたいだけだろ!」
「そ、そうでしたか」
そう言い、アイナは苦笑いで去っていた。
「もう許さんぞ」
相手を抱え、屋敷に向かう。
「話は中で聞こう」
「ちくしょう!離しやがれ!」
こうして、屋敷の中で質問をすることになった。
今はとある部屋に二人っきりで居る。
「お前は何者だ」
まずは相手が何者なのかを確認する。
「僕はエレン。ここに居候してた」
エレンとはヨーロッパやトルコの一般的な名前のひとつだ。
多分、この子もヨーロッパ辺りの出身なのだろう。
「君はヨーロッパから来たの?」
「うん。家の事情で1人だけでね」
まあ、訳ありということか。
「もしかして、お金が無いのかい?」
エレンは頷いた。
「そうか…」
「僕をここから追い出さないでください!」
「安心して。そんなことはしないよ」
この時、あることを思いついた。
「良かったら、ここで働かないか?」
「どんな内容?賃金は?」
「メイドをやってくれ。月に20万ほど払おう」
「う~ん。分かった」
「了解。衣食住は僕は何とかするよ」
「僕の部屋は変えないでね」
こうして、エレンは僕のメイドとなった。
可愛いければ男でも関係ないさ。
「では、紹介しよう!我がメイド長!アイナだ!」
「よろしくねエレンちゃん」
「あっはい…よろしく」
「ご主人様。可愛いですねこの子」
確かにエレンは可愛い。
大きな目にもちもちした肌。
綺麗な水色の髪。
「でも、男だ」
「はい?」
「その通りです。僕は男です」
「へ~そうなんだ」
「でも、女の子と思って接してください」
この子、俺の時は女扱いするなと言ったのに。
アイナの前では態度が違う。
いくら可愛いとはいえ男だ。
これは要注意だな。
「司さん!全ての荷物を運び終えました」
「ありがとうございます」
どうやら、全ての荷物が運ばれたようだ。
さて、新居開拓の始まりだな。
「アイナとエレンは部屋を掃除してくれ。荷物は俺が持ってくる」
「力仕事なら僕得意だよ?」
「フフフ、俺に任せろ」
「お、重い」
荷物は想像以上に重かった。
一体、何が入っているのだ。
「ハアハア、やっと置けた」
しかし、あと4つほど箱がある。
まだ、少ないのが唯一の救いだな。
「さあ、行くぞ!」
それからもやたら重い箱を運び続けた。
一方アイナ達は。
部屋の掃除をしていた。
「エレンちゃん雑巾はちゃんと絞らないと」
「絞るって何?」
「私がやるから。見ててね」
そう言い、アイナは雑巾を絞った。
「こうやってやるのよ」
「やってみる」
エレンも雑巾を絞り始めた。
「う、う~ん」
「そうそう。上手上手」
「えへへー。そうかな」
(可愛いわねこの子)
雑巾を頑張って絞るエレンを見て、アイナはそう思った。
(いけない!この子は男よ)
「ラ…ラストォ!」
司は最後の箱を運んでいる。
(ちくしょう。あの人たちに屋敷まで持ってきてもらうべきだったな)
司はあまり迷惑をかけないように、屋敷までは自分で運ぶと言ったのだ。
しかし、後悔しても無駄なのである。
「大丈夫ですか?ご主人様」
汗だくで疲れている俺を見て、そう言った。
「ハアハア…大丈夫だ」
本当は死にそうだがな。
せめて、この子たちには強がっていたいのさ。
「ちょっと屋根の上で青空でも見てくる」
「僕たちは?」
「疲れただろう。休憩してていいよ」
「ふぅ…落ち着くな」
無限に広がる青空を寝転びながら眺めている。
この場所は以前、エリンの父親から聞いたのだ。
決して届かないが、雲に手を向ける。
(アレは綿菓子みたいだな)
そんなことを思いながらゆっくりしていると。
瞼が下がっていった。
いい夢を見れるといいな。